66話
誰も居ない路地裏に声が響いた。
「クソクソクソクソ、最悪だ!」
それはネズミ。普通のネズミのように見えるがその真っ赤な瞳には人の目を引き付けて離さない輝きがある。
いつもならこの肉屋の裏に群がっているはずの普通のネズミたちは陰からこっそり様子を伺いながら困った顔をしている。
強力な魔力を纏うスライムと子供を見つけた俺はツイてると思った。
こいつらを利用して上手いこと罠に嵌めて苦労せずに莫大な魂力をゲットだぜ、と思って話しかけた。そしたら作戦が思い切り見破られていた。しかもそれを逆に利用されて、訳の分からない特殊魔法で縛られてちまった。
殺されなかっただけ良かったっていう考え方もあるだろうが、俺はプライドが高い悪魔なんだ、簡単にハイそうですかと納得できるはずがない。
けどいつまでも恨み言を言っているだけじゃ先に進まない。俺はクレバーな悪魔なんだ、とっとと100億ゴールド稼いで自由になってやる。
どうやって金を稼ぐかと言われれば、方法はひとつしかない。特殊魔法「サクセス」を使う。
これは対象の成長曲線を見ることが出来るんだ。これを使って安くて将来性のある奴隷を買って育てて金儲けする。大丈夫、俺ならできる。なにせ頭が切れて人間の言葉も喋れる天才悪魔だからな。
しかしここで問題発生。
奴隷を買うには金が要るわけだが、俺が人間の世界の金なんか持っているはずが無いってことだ。だからしょうがなくあのムカつくスライム野郎に金をよこせと言ったら、奴は渋った。
何でも俺の態度が金を借りるやつの態度じゃないとか言いだしたんだ。誰が自分を罠に嵌めたやつに頭なんか下げるんだと言ってやりたかったが、グッとこらえた。
俺はクレバーな悪魔だ。困難で意地を張っていたら先に進まない。とっとと自由の身になりたいんだから、ここは譲るしかない。頭を下げて頼んだら一千万ゴールド貸してくれることになった。
もっと金が必要だと言ってみたが、スライム野郎は実績が無いから今はこれだけしか貸せないとか言ってきやがった。けど俺の働きぶりを見て大丈夫そうだと思ったらもっと貸してくれるんだとさ、本当に腹の立つ野郎だ。
そしてここでまた問題発生。
奴隷を買う事が出来るのは人間だけだってことだ。ネズミはもちろんの事、スライムでも無理。ということで俺が選んだ奴隷をルーナとかいうガキンチョに代わりに買ってもらうしか方法が無い。
そうしたらこのガキンチョが「優しい奴隷じゃないと怖い」とか言いだしたから俺は頭が痛くなった。
ネズミの俺が人間の奴隷をうまく使いながら100億ゴールドを稼ぐってだけでもかなりの高難度ミッションだっていうのに、さらに条件を出すっていうのかよ。
正直言ってかなり絶望的な気分になったが、ガキンチョは考えを変える気は無さそうだったし、スライムも「わかるわかる」みたいな感じだったから、ここは俺が折れるしかないと思った。
というわけで、俺はこれからこの国にある奴隷商を全部回ってみて、将来性があって尚且つ怖くなくて、尚且つ安い奴隷を探し回らないといけなくなった。
100億ゴールドって金がどれだけのもんなのかはいまいちピンと来てないが、なんとなくすぐにはできそうもない気がする。
全く最悪だぜ、馬鹿なスライムを騙して目指せ最強悪魔への道、って思ってたのにこんな目にあっちまうなんてな。
けど俺ならできるはずだ、さっさと自由になりたいもんだぜ。
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