65話
「セトの兄貴の魔法を教えてくれるんですか?」
「そうだ、聞きたいだろ?」
「そりゃまあ聞かせてくれるなら聞きたいですけど………」
静かな高級喫茶店のテーブルの上でネズミが首をひねる。
「え、ちょっとセト?」
心配そうなルーナに笑顔を見せた後でスライムが語る。
「特殊魔法「調伏」っていうんだ」
「ちょうぶく?」
「そう、これには「呪い殺す」っていう意味がある言葉なんだ」
「なんかめちゃくちゃ怖いじゃないですか」
ネズミの黒目が忙しく動き始める。
「そしてもうひとつは「悪魔や敵を負かすこと」って言う意味もある」
「へ?!」
「どうだダグラス、驚いたか?」
「どうして俺の名前を!?」
「さっき名乗ったマイケルっていうのは偽名でお前の本当の名前はダグラスだ、悪魔のダグラス」
「お前一体………」
「特殊魔法「調伏」は俺に敵意を向けた相手、尚且つ俺よりも力の劣る相手を強制的に支配する力を持つ。そしてこれに必要なのが相手の名前なんだ」
「待ってくれ、俺は別にお前、セトの兄貴に対して敵意なんかーーー」
「さっきお前が提案した「5日ごとに倍の魂力を奪う代わりに魔法を使わせる」って条件、これは完全に俺を嵌めるための罠だ」
「そんなことないですよ。契約するかどうかはそっち次第なんだから嫌ならやめればいいだけだ」
「うまい事口車に乗せられてたら俺は100日後には死んでいたはずだ。これは契約という名の攻撃だ」
「くそっ!」
セトの体から靄のように立ち上がる魔力を見て、これはまずいとテーブルから飛び降りようとしたネズミ。しかしその体は一歩たりとも動くことが出来なかった。
「なんだこれ!?おい!」
影。
穏やかな室内灯が注ぐ光は全ての物に対して淡い影を作る。その影がいつの間にか実体のある鎖へといつの間にか音も無く変化して、主人の体をやさしく捕縛していた。
「ぐのぉおおおおおお!」
どれだけ力を入れようとも細い鎖はビクともしない。
「ダグラス聞け」
ネズミの動きがピタリと止まる、自分の力ではこの鎖はどうにもならないと悟ったのかもしれない。
「ここからお前に選択肢を与えてやる」
「選択肢?」
「3つのうちのどれを選んでも、とりあえず自由に行動できるようにはなるぞ」
「嵌めやがったくせに偉そうに!」
スライムが笑った。
「1つ目、これは一番お勧めで俺を倒すこと。その鎖につながれたままだとかなり不利だとは思うが、お前の心情的にはこれがぴったりだろう、これを選ぶか?」
「く………とりあえずは全部聞いてやるよ」
「2つ目は俺に従う事、期間は百年間だ。3つ目は俺が出す条件をクリアすること、条件とは100億ゴールドを俺に献上すること。さあどれでも好きなのを選んでくれ、3分間待ってやる」
美しいティーカップを傾けて優雅に紅茶を飲みながら言った。
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