6話 ~事件の後~
巨大な外壁に囲まれた「ゴアジャ国立特別養育学校」。
下級貴族や裕福な商人の子供が集まる賑やかな学校に特大のゴシップが投げ込まれた。
新入生の第14王子ルーナが元冒険者ゴーダと大喧嘩して勝利したという。しかもゴーダは即入院で全治数か月だという。
王族は特別な魔法使いである。
それがこの世界の常識であるから強いのは当たり前。勝っても不思議ではないが、疑問。
第14王子ルーナは無能。魔法を一切使うことのできない無能だという事は誰もが知っていることだ。
嘘?
魔法使いであり冒険者でもあるゴーダに勝つには一般人では難しい。それならば無能などと言う噂は嘘でルーナは魔法使いだったのか?
誰が何のためにそんな嘘を?
それとも使用人がやったのか?いや、それはおかしい。学校の中に使用人を連れて行くことは出来ないというルールのはず。そうしなければ学校の中が使用人だらけになってしまう。
そもそも無能の第14王子などという見返りのなさそうな王子に従う強い使用人などいたか?
噂は学校の外にまでも掛け巡り、様々な憶測を呼んでいた。
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俺が成敗した極悪教師だが、初等部からこの学校にいる生徒にとってはお馴染みの超嫌われ教師だった。
生徒が100パーセントの確率で嫌っているので、そいつを倒した俺はクラスメイトから感謝されたり褒められたりして、生徒たちの人気者になってしまったのだ。
一緒にいるルーナに対してももちろん好意的だ。ルーナは王子だから生徒たちはもともと興味津々で、きっかけさえあればみんな聞きたいことは山ほどある。
一番多い質問は俺の関しての事。スライムはこの世界で最弱の魔物だと言われているのに、あのゴーダを倒してしまったのにとにかくみんな驚いていて「どうやったらそんなに強くなるの」とか「どこで見つけたの?私も欲しい」なんてことを聞かれている。
ルーナは頑張っている。
誰に対しても笑顔で丁寧に対応していて、見ていると少しだけ涙が出そうになる。
ずっと一緒にいる俺にはわかる。知らない人が自分の周りにたくさん集まっているので緊張はしている。だけど嫌がっては無い。
王族とか王子というと偉そう、というイメージを持つ人もいるだろうが、周囲から無能と言われ続け虐められ、辛い思いをしてきたせいか、ルーナはちゃんと人の気持ちが分かる子なのだ。
こんな感じで俺とルーナの学校生活は始まった。
これからどうなるのかは分からない。また嫌なことがあるのかもしれない。だけどそういうのは俺が全て排除する。
俺はルーナの兄だから。
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