53話
降り注ぐ光に照らされているのは王城からほど近い所にある武道場。
黒い木材によって造られた室内は経年変化の色合いを感じさせるものの塵ひとつなく清潔。今まで様々な武道家たちの汗を吸い込んできたせいだろか、威圧感すら感じるほどに静謐。
「待っていたぞボルビック!」
黄色いスライムが高らかに叫ぶ。
「待っていたぞボルビック!」
袴を来た少女が高らかに叫ぶ。
「………君ら何してんの?」
入り口にたたずむボルビックがぽかんとした顔で言った。
「せっかく先生が武術の稽古をしてくださるという事で、格好いい感じにしたかったんですけど駄目でした?」
「別に駄目ってことはないけど………なんかルーナは学校の時と雰囲気が違うな」
「ここはホームだからな」
「?」
「ルーナは典型的な内弁慶なのだ。自分の家とか仲のいい知り合いの前では元気なんだけど、そこから一歩でも外に出るともう駄目、シナシナ野菜」
「ねぇ、どうしてそういうこと言うの?」
「事実だし」
「ねえ知ってる?事実が一番言っちゃ駄目なんだよ」
言い争う二人を頷きながら見るボルビック。
「ところでなんで俺は今日呼ばれたの?」
「ルーナの格闘訓練を頼みたかったんだけど、伝わってなかったか?」
「いや、それは分かるんだがどうしてわざわざ俺に頼むんだ?こんな立派な道場があるくらいなんだから、戦いを教えられる奴なんかいくらでもいるだろう?」
「いるよ」
「だったら………」
「敵だけどな」
セトの言葉にボルビックが黙る。
「知ってるとは思うけど、今の王が退任すれば次の王になるのはただ一人。それは殺されるか、そうじゃなくても駒として扱われる可能性がある」
「敵に情報は渡したくないってことか………」
「そういうこと」
ボルビックはため息をついた。
「世知辛いねぇ………」
「弱肉強食という摂理からは誰も逃げられないものなのだ」
「せっかくの休みだっていうのに暗い気持ちになったよ」
「勝てばいいのだ」
目を見開いてスライムを見る。
「ルーナが勝ちさえすれば何も問題は無い。俺が勝たせる。だから暗い気分になる必要なんかないんだよ」
「自信家だねぇ………」
ボルビックは笑った。
「事情は分かったよ」
「遠慮はいらないぞ。試験に合格したら、その時にはルーナを魔女の塔に連れて行くっていう約束だからな」
「責任重大だな」
「あの、優しくお願いします」
うるうるした目のルーナが言った。
「駄目駄目駄目駄目、そんなのは駄目だ」
「だって………」
「魔女の塔は手加減なんかしてくれないんだ。自分は魔法使いになったんだから戦える、だから一緒に付いて行くって言ってたのはルーナじゃいか」
「そうだけど………でも先生強そうだし………」
「駄目駄目駄目駄目、言い訳は無しだよ」
「ううう………」
いつまでも続きそうな二人のやりとりを無視して、一礼。ボルビックは道場の中に入っていった。
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