47話
「ドッキリ?」
新任教師ボルビックは家庭科室を見渡したが、ここに居るのは黄色いスライム一匹だけだ。
「仕事の依頼だ」
「………」
「聞こえてないのか?」
「お前、喋れないはずじゃなかったのか?」
「最近喋れるようになった」
「ああそう………俺は驚かないよ。なんでだか分かるか?」
「高度に進化した魔物が人間の言葉を喋ることは今まで何件も確認されてるからだろ?」
「人並みの知性も持ってるな………」
「そんなことはどうでもいい。今日はお前に仕事の話をしたくて来てもらったんだ」
「それでこの手紙か?」
「そうだが何か?」
「………べつに。仕事の話って言ったよな?俺は教師という素晴らしい仕事に付いていることは分かっているか?」
「それは知っているが副業は禁止されていないだろう?」
「ふーん、まあそのとおりだ」
「Aランク探索者ボルビック、かなり名を馳せたみたいだからな。魔女の塔探索のパートナーとして雇いたいと思っている」
「お前は知らないかもしれないけど俺はもう探索者じゃない」
「協会と喧嘩別れしたんだろ?」
「なんだ、知ってんのかよ………それならこれは知ってるか?探索者じゃない奴が魔女の塔から命懸けで宝を持ち帰ってきても、国からどえらい税金をかけらるんだぞ?」
「お前は探索者だ」
「は?」
「自分では探索者を辞めたと思っているようだが、協会は届け出を受理していないようだぞ」
「マジ!?」
「後で自分で確認して見るといい。多分だが協会はAランクにまで上り詰めた探索者をみすみす逃すのが惜しいと思ったんじゃないか?」
「ふーん、まあありそうなことだな。それにしてもなんでお前は底まで知ってるんだ?」
「命を預ける相手の事だ、これくらいの下調べくらいするさ。最近聞いたぞ、常勝には入念な下準備が重要だってな」
「俺が授業で言ったことだな………けど悪いな、俺は今の仕事に結構満足しているんだ」
「俺も準備はしてきたぞ」
「?」
「お前にはウサギという名前の妹がいるな」
「まさかとは思うが俺を脅すつもりじゃないよな?」
ボルビックの周囲から靄のようなものが立ち上がる。強力な魔力を持つものにだけ起こる現象。気弱な一般人であれば失神してもおかしくは無い。
「この学校に入学させたくないか?」
「は?!」
「ここはなかなかいい学校だと思うぞ。教師のレベルが高いし、生徒たちもなかなか賢いやつが多い」
「そりゃあそうだが、一般人が入れる中では一番いい学校だからな。けどそれには推薦者が必要だとかいろいろと条件があって………」
「推薦者ならルーナの母親に一筆書かかせるつもりだ」
「………」
「ルーナの母親の事は知ってるだろう?」
「政治嫌いの王に代わって政治に口を出していると聞いた。かなりの賢女らしいな」
「推薦者としては十分だと思わないか?」
「この学校は国立だからな。国を動かしている人間からの推薦ならこれ以上はないな」
「妹の将来を考えるのならこの学校はなかなかお勧めだ」
「断ったら?」
「何もしない」
「ふーん」
「魔女の塔の探索はしばらく遅れるだろうが、また別のやつを探すさ。この王都にはAランク探索者にしろAランク冒険者にしろ結構いるようだからな」
「そうか………」
「俺としては悪くない条件だと思うがな。この学校を卒業したとなれば良い会社に入りやすくなるし、社会的地位を持った友達が出来るかもしれない。可愛い妹の将来を考えるなら大事なことだ」
「やる」
授業中には見せたことのない鋭い目。
「決断が早いな」
「ふ………」
少し笑った。
「もしかしたらこういう日が来るのを待ってたのかもしれないな。確かに教師も悪くないが、俺の心はまだ落ち着くには若すぎるようだ」
「魔女の塔に挑むのは夜中だ」
「教師を辞めなくて済むようにと、俺に気を使ってるのか?」
「それもあるんだが………実は魔女の塔に入ることはルーナには内緒なんだ」
スライムは少し口ごもりながら言った。
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