46話 ~手紙~
「あー参ったねこりゃあ………」
ぼさぼさの長い髪をぼりぼりと掻きながら廊下を歩いているのはボルビック。ついこの間この学校へ赴任が決まったばかりのルーナたちの担任。
彼が突然この学校に呼ばれたのは前任の教師が生徒に暴行を受けて病院送りになったせい。
名前も知らないその教師は元冒険者でCランクだかBランクだったというから、相当やんちゃな生徒がいるもんだと思ったが、なんとそいつは王子だという。いや、よくよく話を聞いてみれば王子が連れているスライムだという。
どうりで俺に話が回ってきたわけだ、と思って用心していたが実際に話してみれば想像していた極悪さは微塵も無かった。たしかにあのスライムには用心が必要だろうが、今の所は何の騒ぎも起こしていないから逆に肩透かしだ。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
「家庭科室に来て下さい、か………」
ポケットに忍ばせた手紙。職員室に戻ってきたら机の上に置かれていたピンク色の手紙。
ついに来たか。
噂には聞いていたが、やはりこういう物が来てしまったか。仕方ないといえば仕方ないのだが教師というのは女子生徒にモテてしまうようだ。まあ分かる。少女にとって大人の男っていうのは確かに魅力的に映るだろう。
しかも最近の俺ってば自分でも驚く位に大人の色気が出てきているようだ。風呂上りに何気なく鏡を見ると、なんだ結構なイケメンがいるじゃないかと思ったりするもんだ。
別に何か特別美容にこだわって何かしているわけじゃなく普通に生きているだけなんだが、出てきてしまうものはしょうがない。きっと俺の働く姿を見てときめいてしまったりしたのだろう。
だが断る。
生徒と付き合ったり結婚したりする教師がいるという話は聞いていたが、そういう奴らは昔から大っ嫌い、軽蔑すべき対象だ。だから俺自身がそんな奴らの仲間入りをするつもりは毛頭無い。そういう硬派なところがさらにモテてしまう原因かもしれないな。
しかし誰なのか?それは非常に気になるところだ。生徒をそんな目で見たことは一度も無いが、子供と言えど女は女だな、と思う事はある。
女を泣かせるのは嫌だ。けれどこれは生徒のためを思えばこそで、俺は心を鬼にしてはっきりと断る。変に気を持たせるようなことを言ってはかわいそうだ。
さあ家庭科室だ。
断固たる決意のもとで開いた扉から何とも言えない独特のにおいがした。
大きな窓から強く差し込むオレンジ色の夕日。
「お、おまえ………」
教壇の上にいたのは一匹のスライムだった。
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