45話
「ふわわわわーおはよー」
大欠伸をしながら朝の教室に入って来たのはエイト。
「おはよー、なんか眠そうだね」
席に座っているルーナが声を掛けた。
「ふわーめちゃくちゃ眠いよ」
「もしかして私が頼んだ魔武器の件?」
「正解!実は昨日リヒテン商会から手紙が来てさ、読んでみたらとんでもないことが書かれてたんだよ」
「とんでもないこと?」
「そうそう、その手紙持ってきてるから一緒に見ようぜ」
鞄を下ろして、その中から一目で高級品だと分かる便箋に入った手紙を開く。
「えーと………」
「最初の方は全部言い訳だから読まなくても良いやつだよ」
「言い訳?」
「王族に対する敬意が足りないという誤解があったと思うけど、それは事実無根で………みたいな」
「あぁ、そうだったね」
「大事なことは最後の方に書いてあるんだよ。ほら見てみ、リヒテン商会はあの魔道具を3つまとめて1億ゴールドで買い取りたいって書いてるぞ」
「え、それってすごくない?」
「おかしいくらいに凄い値段設定だよ」
「たしか、ひとつ八百万ゴールド、とか言ってたよな」
「そう。買取金額は大体八百万、そして店頭価格が千二百万くらいだろうと予想してた」
「全然違うね」
「多少の値動きはあるとは思ってたよ。もしかしたら六百万くらいまで買いたたかれるかなって。測定器使って調べたらルーナが持って来た魔武器は間違いなく本物だけど、魔女の塔からならそこそこ出て来るくらいのランクのものだから、予想はそうそうずれないだろうって思ってた」
「うんうん………」
「それなのに3つで1億、これは絶対変だ。問題なのは理由が分からないってことなんだよ。まさかリヒテン商会クラスの大商会が鑑定をミスるわけない。だとすれば考えられるのはこっちの鑑定が間違ってるってことだけど………いろんな人に話聞きまくってみたけど絶対普通じゃないんだよな」
「そうなんだ。エイトの焦らせ作戦が効いたんじゃない?」
「いやいや、これはそんなのじゃ納得できないくらいの金額だよ。しかもさらにおかしいことが書いてあるんだよ」
「これね」
手紙を指さして言う。
「そう。ピュートランド孤児院に5年総額1億ゴールドの支援をするって書いてるんだよ」
「それ、私が最近よく行ってる孤児院だ」
「なにそれ?!」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてねぇよ」
とある事故が原因で、孤児院の子供達と仲良くなってお菓子とか食べ物を差し入れに行っている話をルーナがする。
「ってことはやっぱりリヒテン商会はルーナの機嫌を取りたいんだよ。それだったらこの滅茶苦茶な条件も納得できる」
「けどどうして私がその孤児院に通っていることを知ってるんだろう?」
「リヒテン商会が本気になればそれくらいの事はすぐに調べられるさ」
「そうなんだ………」
「何でかは分からないけど、リヒテン商会はルーナのことを異常に恐れていることは間違いない」
「そんなことあるかな?だって私は魔法が使えないし、王族としてのランクだって低いんだよ?」
「けどそれ以外に考えられないんだよな………さすがに詐欺ってことは無いと思うし」
「正直言って私は金額にはそこまでこだわってないけど、孤児院にお金が入ってくることはうれしい。経営が大変なんだろうな、と思っていたから」
「この条件、私個人の意見としては呑んだ方が良いと思う。あとはルーナが決めてくれ」
エイトはじっと目を見る。
「うん、決めたよ。魔武器はリヒテン商会に売ることにする」
「よかったー!」
エイトは大きく息を吐きだした。
「これでようやく終わるんだ。いやーもうとにかく頭が疲れた、いろんなこと調べたり人に聞きまくったりしてさ」
「頑張ってくれてありがとうね。あとエイトに対する報酬の話だけど………」
「いいよいいよ、今回の取引はすんごい勉強になったからさ」
「それは駄目だよ。仕事をしてもらったんだから、ちゃんと報酬を支払わないと」
「わかったわかった、それはまたあとにしようぜ。もうすぐ始業時間だ」
「先生来ちゃうもんね」
「いやーこれで今日からゆっくり眠れるよ。リヒテン商会との駆け引きなんかマジで疲れるからね。本気出した大人の顔ってやっぱ怖かったよ、まあ面白かったけどね」
笑いながら席に戻ろうとするエイトの背中に声が掛かる。
「あと、次の仕事を頼みたいからその話もしようね」
「次の仕事?」
「うん」
「お前って実はけっこう人使い荒いタイプだったんだな。こんな奴の部下にはなりたくないぜ………」
始業を知らせるベルが鳴り響いた。
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