42話
ーーー リヒテン商会王都本店
「君が魔武器を売りに来た人?」
店長のトレニーの目の前にいるのは普通の子供。小柄で少し生意気そうな顔をしたボーイッシュな女の子だ。
「エイトっていうの、よろしくね」
「こちらこそよろしくね」
トレニーは考える。
これは普通に考えればいたずらだ。魔武器と言えば悪魔の魂が宿った武器であって、質の悪い物でも大体100万ゴールドくらいはするものだ。
アルバイト店員のギンカはお金持ちの子供かもしれないと言っていたが、その服装は清潔そうではあるものの、高級品には見えない。
「それじゃあエイトさん、その魔武器を見せてもらってもいいかい?」
「いいよ!」
元気よく返事をした少女が鞄から取り出したのは3枚の紙だった。
「絵図面か………」
その紙には魔道具が複数の方向から書かれた絵、寸法、重さ、効果、魂測定量などが記されていた。
「どうですか?」
覗き込むようにして見てくるガラス玉のような目。この時点でただのいたずらという事はあり得ない。
魔武器は危険な物であるから、売り買いをするときにはまずこのような絵図面を持って交渉に臨むのが商人のやり方。
魔武器の名称などいくつかの項目については不明と書かれているものの、それ自体は別に珍しいことでは無い。
「これは君が書いたのかい?」
「そうだよ」
胸を張る少女。確かにそれだけの価値はある、自分がこの子と同じ年の頃にこれを書くことが出来たかと言われれば間違いなくNOだ。
「この魔武器は君の物?」
「クラスメイトの子から頼まれたやつだよ」
「?」
「第14王子ルーナっていうの、知ってる?」
その瞬間に心臓に杭を打たれたかと思うくらいの衝撃が来て頭の中が真っ白になった。
王族。
取引相手は王族だった。
「もちろん知ってるよ………っていうことは君は」
「特養学校に通ってるの」
「な、なるほど………」
ゴアジャ国立特別養育学校、それは下級貴族や裕福な一般市民しか通うことが出来ない選ばれし者たち専用の学校。名前が長すぎるこので、生徒や卒業生は「特養」などと呼んでいる。
本物だ、この子は間違いなく第14王子ルーナのクラスメイトであり、理由は分からないがなぜか魔武器の売却を頼まれたのだと思った。
トレニーは頭が真っ白になりながらなんとか商談を続ける。この絵図面はよくできているけど、やはり本物を見なければ価格は付けられない事。しばらくの間店に鑑定士を常駐させておくので、気が向いた時に店に持ってきてもらえれば早いうちに換金することが出来ることなどを説明した。
他にも、しばらくたわいのない学校の話などを聞いているうちにやはりこの子は本当にルーナ王子の友達に違いないと確信した。
エイトはお茶請けのお菓子を全部食べ、ジュースをがぶ飲みした後で、満足そうに帰っていった。
「これから大勝負が始まるぞ………」
大商会であるリヒテン商会とはいえ、王族との取引というのはとても重要。この取引が上手くいけば昇給は間違いないし、出世だって行けるかもしれない、いや、いけるはずだ。
「トレニー店長、目がギラギラで気持ち悪いですよ」
アルバイト店員ギンカの声は彼の耳には入らなかった。
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