41話
ーーー リヒテン商会王都本店
「店長ー、トレニー店長ー」
アルバイトのギンカが重い扉を開けると、そこには大きな壺を退治層に磨いているトレニー店長の姿があった。
「なにかあったの?」
「また壺磨きですか?」
「これは統括部長のお気に入りの壺だからね。戻ってこられた時に少しでも埃が付いてようものなら、またどやされる」
「私この壺嫌いです。なんか泣いているみたいな顔で気持ち悪いじゃないですか」
「そう思う?」
「思います。一回夢に出てきた時、私跳び上がって起きちゃったんですから」
「実は私もあんまり好きじゃないんだよね。だからいつもあんまり見ないように気を付けながら頑張って磨いているんだ」
「それが店長の仕事ですか?」
「いやいやギンカ君、考えてもごらんよ。もし他の誰かが磨いている時に割ってしまったら大変なことになるよ。統括部長の話では金貨500枚もしたそうだからね」
「この気持ち悪い壺がそんなに?!」
「そうだよ。だからみんなの代わりに僕がやってるんだよ、わかる?」
「すごーい、トレニー店長優しいんですね」
「ふっふっふっ、僕は気遣いだけで店長にまでなった男だからね。他には何の才能も無いのさ、偉い人に胡麻を擦って擦って擦りまくって謝って謝って謝りまくって生きるのが、僕っていう人間なのさ」
「すごーい、小物の中の小物ってかんじ」
「いやーそれほどでもないよ」
トレニーは照れくさそうに頭をかいた。
「ところでギンカ君、私になにか用があったんじゃないの?」
「あ、忘れてました。じつは子供が店に来て魔武器を売りたいって言ってるんです」
「魔武器?子供が?」
「はい。やんちゃそうな顔をした小柄な女の子です。お店の中早歩きで見て回ってたので、最初は遊んでるんだと思ったんですけど、全部見終わったくらいでいきなり私に声を掛けてきたんです」
「いたずらかな?」
「私もそう思いました。だけどもしかしたらお金持ちの子供かもしれないって思って」
「なるほどねぇ………まあそういうこともあるかもね」
「どうします?」
「会って話を聞いてみるよ」
拭いていた布を放り上げ、身なりを整え、トレニーは歩き出した。ビシッとしたその姿はまさに大商会、リヒテン商会王都本店の店長の姿。
だがしかし、その背中を大きな壺が不吉な顔で笑っていることには気が付かなかった。
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