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4話 ~極悪教師2~

 

 始業開始を知らせるチャイムが鳴り響く中、やけにオデコが広くて鷲鼻をした人相の悪い男が教壇で怒鳴った。


 この男の名前はゴーダ。元冒険者としてなかなかの実績があり、この学校で主に戦闘指導を担当している。


 口と態度が悪くプライドが高い嫌われ者だが、腕っぷしが強く不良生徒にも堂々と立ち向かうことができるので少々の問題行動は見逃されている、学校中が恐れる教師だ。


「遅い!」


 黄色いスライムを腕で包むルーナの体がビクッとした。


「お前、王族だからって調子に乗ってるんじゃないか?!ここは王城じゃない、学校だ。いくらお前が偉くても学校の中に身分を持ち込むことは出来ない。この教室の主人は俺だ!俺より遅く教室に入るとはどういうつもりだ!」


 驚いた。


 ルーナはこのゴアジャ国の第14王子である。名前を言ったという事はこの男も当然それを知っているはずだ。


 学校のたかが一教員でしかない男が、ここまで強く非難するとは………。それは魔法使いであるという自信ゆえか?


 体を包み込む靄を見ればこの教師が力を持った魔法使いであることは分かる。顔についた傷や日焼けした肌を見れば、かなり戦い慣れているのかもしれない、それにしても………。


「おい!なんとか言ったらどうだ!」


 男はさらに声を荒げ、クラス中の視線が集まっているのを感じる。


 俺を包むルーナの腕にはより一層力が入った。悪気はない。ルーナは臆病なので人に怒られたりしたら体が縮こまって声が出せなくなるのだ。


「セト………」


 微かな声で俺の名を呼ぶルーナ。大丈夫だ、俺が付いているぞと腕の中で体を震わせる。


「頭を丸めろ!」


 は!?


「反省の証として頭を丸めるんだよ!それが嫌だったら退学だ!お前のように甘ったれたガキには世の中の厳しさってもんを思い知らせてやるのが教師の務めだ。ほれ、坊主か退学か、どっちでも好きなほうを選べ!」


 教室の中にざわめきが走る。


 ちょっと待て。何が反省の証だ、始業のベルが鳴る前に俺たちはちゃんと教室の中に入っていたんだ。


 よく見てみれば教室の中には坊主にしている生徒が座っている。あいつは本気だ。こうやって何かした生徒に対して坊主にさせる教師なんだ。


 退学は困る。学校に通う事は王族の務めであって、嫌なことをされたからと言って行きたくないなんて通用しない。


 王族というのは確かに一般人より恵まれているのだろうが、その反面務めというものを絶対に果たさなければいけない義務を持っているのだ。


 だからといって坊主?


 ルーナのこの黄色いふわふわしたウェーブのかかった綺麗な髪を丸坊主にする?


「返事はどうした!返事をしろ返事を、偉い王子様は目下の物には返事をすることすらせんのか!」


 破裂音。


「返事をしろと言っているんだ!」


 見れば細い木の鞭のようなもので教壇を叩く男の姿があった。


「わかったわかった、それじゃあもうひとつ条件を追加してやろう。坊主も退学も嫌なら、この教鞭で百叩きだな。これは一発くらっただけで皮膚が蚯蚓腫れになって生意気な生徒でも泣き叫ぶいいお仕置き道具なんだよな、さあ尻を出せ。みんなが見ている前でその尻をぶっ叩いてやる!」


 ぽたぽたと温かいものを頭に感じた。


 ルーナが泣いている。


 あの日困っていた俺に、勇気を出してサンドウィッチを差し出してくれた我が愛しき妹ルーナ………。


 腕の中を抜け出し、生徒の机を踏み台にして俺は跳ぶ。


 許すまじ、許すまじ、許すまじ。


 Go to hell。






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