38話
黄金の輝きを放つ大きめの貨幣である大金貨はこの世界で最も価値の高い貨幣であり、一枚で100万ゴールドの価値を持つ。
俺の感覚でこの国の貨幣価値は1ゴールドが1円くらいなので、これ一枚で帯つきの札束と同じという事だ。一般庶民にとっては滅多にお目にかからないんじゃないかと思う。
「わーすごーい、きれー!」
覗き込んでいる子供達が目を輝かせるのも分かる。俺もこの金ぴかで立派な貨幣は大好きで、暇なときには偶に眺めたりもする。
けれど王女であるルーナにとってはお小遣いとして親からもらえるくらいの金額。いつ必要になるかもわからないので、ルーナから預かって俺が保管している。
屋根を修理するのに一体いくら位かかるのかは分からないので、とりあえず10枚ほど出しておいた。1000万ゴールド、さすがにこれで足りないという事は無いはずだ。
「そうだセト、スープも出してよ。沢山持ってるでしょ?」
俺は触手を口の中に入れて大きな寸胴鍋を取り出した。
「えー!すごいすごいすごい!」
「お口の中からおなべがでてきたー!」
子供達が大騒ぎしている中で、ルーナが寸胴鍋の蓋をパッと開ける。その途端にスープのいい香りと湯気が部屋中に広がった。
「わーおいしそー!」
「おなかすいたー、ごはんたべたいよー」
「食べていいよ、オマチさんが作ってくれたやつは私が台無しにしちゃったから。このスープすっごく美味しいんだよ。なんたってセトのお墨付きだから」
「ほんとう?いいの?」
「やったー!たべていいんだって!」
このスープは「ノースオブファミリー」という人気料理店の具沢山コンソメスープ。野菜が甘くてほろほろで優しいし、大きめベーコンが入っているので、スープなのになかなかの満足感を感じさせてくれる一品。
最初に食べた時一口目からその美味しさに感激したので、お店に寸胴鍋で作ってもらうように頼んだものだ。この鍋ひとつで20人前は楽にあるはずだ。
「魔法、なの?」
ずっと固まっていたオマチさんが声を出した。
「そうです。セトの魔法はすごいですよね、私も最初に見た時にはすごく驚きました。あの小さな体の中に入るわけない位の大きさの物がいくつも入っちゃうんですよ」
「本当にすごい………」
わざわざ訂正するつもりは無いが、正確に言えばこれは俺の魔法というよりもスライムの魔法だ。
書物によれば一部のスライムは体内に亜空間?別の次元の空間?を持っているので、やたらと強いスライムを倒したと思ったら突然金銀財宝が目の前に現れたなんて話が過去にはいくつもあったらしい。
金銀財宝を入れて置くのもいいが、俺は食料も入れている。もし万が一何か危機的状況に陥った時に食料と水があれば安心だからだ。
そしてせっかくなら美味しいものを、ということで今回のスープのように気に入った店を見つけるたびに、料理を作ってもらっているのだ。
「大丈夫なんだよね?」
「もちろんです!わたしも今まで何度もセトに出してもらった料理を食べたことがありますけど、不思議なことにいつでも作り立ての時のままなんです」
「本当にすごい………」
オマチさんの視線を感じる。
「本当にこんな良いものを食べちゃっていいんだね?」
「どうぞどうぞ召し上がってください」
「やったー!」
「おいしそー!」
大喜びしている子供達と一緒になぜかルーナも一緒に朝食を食べた。いつものセトと一緒の静かな食事じゃなくて美味しい美味しいの声を笑顔のなかにいるルーナはとても楽しそうに見えた。
けれど残念なことにルーナはすっかり忘れてしまっているのだが、いまは登校の途中。
つまりいまこの時にはもうすでに完全なまでに遅刻してしまっていて、後で先生にしっかりと叱られたのであった。
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