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35話

 


 降り注ぐ太陽が雨上がりの朝を光で輝かせている。


「らんららららんらんらん………」


 教科書が入ったカバンを背負ってご機嫌に歌いながら学校への道を飛び跳ねながら進んでいるのは第14王子ルーナ。


「魔法使いだよ、私は今日から魔法使いとして学校に行くんだ。みんな驚くかな?」


 その跳躍はバレリーナよりも高く軽やか。


「体が軽いよ、自分の体なのかなって思うくらいに軽い。魔法使いの人たちってみんなこんな感じだったんだね」


「良かったな」


「ありがとう!」


 笑顔だ。


 魔法が使えないことで失望され、見下され、馬鹿にされてきた少女がついに魔法使いになることが出来た。きっと想像もつかないくらいに苦しい思いがあったに違いない。


 それでも彼女はいい暮らしをしているじゃないかと言ってくるやつもいるだろうが、立場が高い人間にも苦しみは必ずある。


 ルーナの父は王であるから滅多に会うことは出来ず、会話も敬語。俺から見れば親子としての絆が濃いとは思えないし、母親についても父親ほどでは無いが仕事が忙しく毎日一緒にいるわけでは無いのだ。


 だからルーナは王城という強固な場所の中にいながら、両親という最大の守護者がいない状態で日々を過ごしていた。これは悪意を持った人間にとっては一番狙いやすい獲物。だから無能無能と虐められていた。


 そんな少女が魔法使いになることが出来た。今までにどれだけ願ったのだろう、それを思うと心が痛くなるし、この笑顔を見ていると本当に本当に嬉しい気持ちになる。


 自分の事以外でこれほど嬉しい気持ちになったのは、前世の時にも記憶が無い。恥ずかしいから我慢しているが、もしいまひとりだったら涙を流していたかもしれない。


「見てよ!こんなに高く飛べるんだよ」


 そう言って地面を踏みしめて高くジャンプした。太陽の中に入ってシルエットしか見えなくなるくらいの高さにまで跳んだ。


「すごいな、屋根よりも高く飛べているぞ」


「こんなことが出来る日が来るなんて思わなかった」


 体に魔力を通すことで筋力よりも強い力を出すことが出来る、それが身体強化。スピードもパワーもスタミナも、全てにおいて別次元と言って良い位の力を発揮することが出来るんだ。


「ねえセト!」


「急に大声を出したりしてどうしたんだ?」


「私すごいことに気付いちゃった。もしかして「少年怪盗ルンバ」みたいに出来るんじゃない!?」


 ルーナが目をキラキラさせながら言った。





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