34話
「んんんんん………」
朝のにおいを感じてルーナは少しづつ目を覚ましていく。
布団の上にあるはずのいつもの感触を探して腕を動かす。少しひんやりして丸くてぷにぷにしたものに指が触れた。
「おはよう…セト」
「おはよう…ルーナ」
「ふぇ!?」
驚いて体を起こすと猛烈な体の痛みを感じた。
「誰?!」
うすぼんやりした視界の中にいたのは黄色いスライム、そして椅子に座って鼻ちょうちんを膨らませているロウイシ。ロウイシはこの王城の専属医師のひとりで、ルーナも小さい頃からお世話になっているおばあさん。
どうしてロウイシさんが私の部屋にいるんだろう。いや、気になるけど今はそんなことはいい。さっき聞こえた声は彼女の声なんかじゃない、男の人の声だった。
「体調はどうだ?」
「セト………」
その声はいつも一緒に寝ているベッドの上のスライムからだった。
「あなたいつから喋れるようになったの?!」
「昨日だな、昨日の夜らへん」
「どうして急に………」
「ふあ、あ、ああ………あ………」
大きく伸びをしたロウイシが声をあげた。
「ルーナ王子、体調はどうだい?」
「体調ですか、えーと………体中が筋肉痛です」
質問されたルーナは素直に答える。
「うんうんうん………どうやら相当暴れたらしいからね。今まで使ったことのない筋肉を使ったせいだろう」
「誰が暴れたんですか?」
「あんたに決まってるじゃないか」
「ええ!?私暴れたりなんかしませんよ?」
「それじゃあ昨日はどうやってこのベッドまで来たのか覚えているかい?」
「え!それは………」
「昨日友達と一緒に図書室にいたことは覚えているかい?」
「それは覚えています!」
「王と面会したことは?」
「それも覚えています。その後は………」
「短期の記憶障害はあるが、別段問題は無さそうだ。私はこれで帰らせてもらうよ。経過観察しなきゃいけないせいで一睡もしていないんだから」
その割には鼻ちょうちんを膨らませていた気がするが………。
「その前に魔臓の説明を………」
「ああそうだったね、すっかり忘れていたよ」
「魔臓?」
「おめでとうルーナ」
「?」
ルーナはぽかんとした表情をしている。きっとこれは私の誕生日はまだ先ですけど、とでも思っているのだろう。
「魔臓波検査の結果、あんたの下腹部から魔臓の反応を感知した。それも通常よりもかなり強い波動だ。状況から考えて事故によって魔武器に触れたあんたの体内で何らかの反応が起きて、後天的に魔臓が作り出される、いわゆる後覚醒の一種と考えられる反応が起きた。つまりあんたは魔法使いになったってわけだ、おめでとう」
「ふぇ?!え………?」
「良かったなルーナ、魔法使いだぞ?」
「まほう………マホウ………」
「これでもう虐めれることなんか無い。いや、虐めてきた奴らを自分の力で成敗できるんだぞ」
「セトがしゃべってるし、わたしはまほうつかいで、あ、あ、あ、あ、あ、あ………」
「おいルーナ、大丈夫か!?」
ルーナの頭は弧を描きながら回り始めた。
「うーむ、体調が万全でないところにショッキングな情報を大量に送り込んだせいで脳がパニック状態になっているようだね………」
ロウイシは医師らしく冷静に分析しているが今はそれどころじゃないだろう。目玉もグルングルンしているぞ。
「あわわわあわわ………」
ルーナは泡を吹いてそのままベッドに倒れた。
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