32話
危ない!
「わわあ!」
大地震によって倒れて来た大きな棚がルーナに当たりそうになったところで、それに体当たりした。その結果、棚はまるでドミノ倒しのようにパタパタと向こう側に倒れていった。
「ありがとう………」
尻もちをついているルーナがびっくりした表情で言った。
棚の中身は全て頂いているので思ったよりも軽かったが、魔力を持たないルーナだと怪我をしていたかもしれない。
「ど、どうしよう。急いでここから出た方が良いよね?」
いや、ここで待機していよう。棚から離れたところで座っていればそのうち収まるだろう。
窓が近くにある場合には離れた方が良いらしいが、ここは地下だから窓自体が無いから棚だけに気を付けていればいい。
「なんかセトは、ずいぶん落ち着いてるね」
この世界では一度も体験したことが無かったが、日本では地震がよくあったから慣れているのかもしれない。
「そうなんだ………セトがいた国は怖いんだね」
そんな事は無いと思うが………。
「申し訳ありません。本来であれば我々がお守りしなくてはいけないところ。肉体が無いばかりに………」
町辻が深く頭をあげているのだけど、風船のような見た目の幽霊がやってもあまり真剣な思いが伝わってこない。どっちかというとコミカルですらある。
これくらいは何ともないんだから気にしなくていい。肉体はそのうち用意してーーー。
「ルーナ王子が!」
緊迫した町辻の声を聞いて何かあったに違いないと、即座にルーナに目をやった。
そこにはゆっくりと立ち上がるルーナの姿があった。………というかその手に持っているナイフはなんだ!?
まるで三日月を小さくしたような形をした独特のナイフ。そしてそこからゆっくりと立ち昇る霧のような赤い煙。
「魔武器でしょうか!?」
いや、そんなはずはない。棚に置かれていた魔武器は全て俺が呑み込んだから残っているはずが無いんだ。
俯いているその姿勢から表情を完全に伺うことは出来ないが、雰囲気が違う。ルーナではないような何か異様な雰囲気を感じる。
今すぐにそれを置くんだ!
ルーナに対して思念を送ったらその途端に投げ捨てられた。一体どうしたんだ、今までこんなに乱暴の俺の事を扱ったことなどない。
いや、今はそんなことはどうでもいい。魔武器は悪魔の魂を有する武器。だからこそ魔力を流すことで悪魔の力で通常ではあり合えない効力を発揮することが出来る。
魔力を持たないルーナには危険すぎる。
手を離すんだ!
奪い取ろうと距離を詰めたその時ーーー。
上げた顔の目は真っ赤だった。
「死に晒せ………」
閃光のような勢いでルーナがナイフを振るった。
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