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29話

 


 宝物庫の棚の上にはカエルの顔の置物の様なものがある。


 陶器で出来ているように見え、口が大きく開いていることから玄関に置けば鍵などを置くオブジェとして使えそうだ。


「この魔道具は………名前はネーティス」


 幽霊の町辻が羊皮紙に目を走らせながら言う。


「口の中に手を入れて魔力を通せば、爪が綺麗になるでしょう」


 は?


「はい、それだけの魔道具ですね」


「えーすごく良いですね!最近爪にささくれが出来ちゃって困ってたんですよ。これを使えばそれも綺麗になるんですよね?」


 ルーナが目をキラキラさせながら言う。


「試してみるしかないでしょうね」


 町辻が困ったように笑った。うーん………とりあえずこれは外れだな。他のやつはどうなんだろう。


「この魔道具の名前はジュウザ。これで髪を梳くと髪の毛が艶々になるようです………」


 うーん………。


「この魔道具の名前はワカ。ここから出る液体を塗ると唇がぷるぷるになるようです………」 


 うーん………。


「この魔道具の名前はカルハ。ここから出る蒸気を浴びると肌がつやつやになるようです………」


 ちょっと待ってくれ。


 魔道具というのは全部美容グッズなのか?国の宝物庫に収められている物だからさぞかし凄い力を持っていて、もしかしたら世界を変えてしまうほどの物があるかと期待していたのに………。


 そういうのは資生堂とかに任せておけばいいと思う。


「この魔道具の名前はプッチン。ここから出る錠剤を呑むと、すぐに安眠できて良い夢を見ることができるようです」


 舌を出した可愛らしい黄色い犬の置物のような魔道具の説明を終えたところで、少しの異変に気が付いた。


「これも良い魔道具だね。私はたまに寝つきが悪い時があるからこういうのが欲しいと思ってたんだ」


 今日はこのくらいで止めておこうか。


「どうしたの?」


 ひとりだけ目を輝かせているルーナが聞いて来る。


「私なら問題ありません」


 いや、そうはいかない。さっきから少しずつだが町辻の声のトーンが落ちている気がする。


 考えられるのは魔法の使い過ぎ。


 魔法はとても便利なものだが、使いすぎると代償が生じる。個人的には今まで一度もなったことは無いが、体調不良から始まり、昏睡状態、悪い時には死んでしまうこともあるそうだ。


「たしかになんか町辻が付かれているような気がする。さすがはセトだね、よく気付いてくれたよ。調子に乗って私も次々聞いちゃうところだった」


「本当に問題はありません」


 いやいや、何もあせることは無い。町辻も俺たちの計画を知っているんだから分かるだろ?今すぐに知らないといけない理由は無いんだ。


「そうでしたな………私としたことが調子に乗ってしまいました」


 落ち込むことは無いぞ。町辻が考えた通りに「知る」という魔法がとても役に立つ力だという事は十分に分かった。国ですら知らないことを知れたんだから、これから他のやつもじっくり解明していこうじゃないか。


「お気遣いありがとうございます………」


 まだ少し申し訳なさそうに町辻が頭を下げた。幽霊からこんなことされる日が来るなんて思わなかったな………。


 それじゃあ計画通りにやっていくとするか。少し緊張。果たしてうまくいくだろうか………。


「無理しないでね?」


 ルーナの不安そうな表情が見える。


 黄色いスライムはルーナの腕の中から飛び降りて宝物へ近づいていく。


 分かっているよ。


 笑顔を見せた後で触手を伸ばし、掴んだ魔道具を呑み込んだ。





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