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21話

 


 仕事があるというポワソンと別れ、宝物庫のある地下室へ向けて長い廊下を歩いて行くルーナ。そしてその腕に抱えられている黄色いスライム。


 目の前から圧力を放つ一行が現れた。


 すぐにルーナは廊下の端に移動して立ち止まり視線を下げる。一行の戦闘を歩くのは第一王子ハルカン。廊下では立場の下の物が上のものに対して道を譲らなければいけないというルールがある。


 厳めしい顔と人一倍立派な体格。王子という華やかなイメージとは違って身に付けているものから何から、まるで軍人の様な雰囲気を感じる。


 大きい。同級生の女子の中でもやや小柄であるルーナとは違って、ハルカン一般成人男性に比べて頭一つ分ほど背が高い。


 国防の責任者でもあるハルカンであるから何かあった時に即時動けるようにという心がけの表れだろうか。性格は合理的でリアリスト。兄ではあるものの今までに優しい言葉をかけてもらった記憶などルーナには無い。


「おいルーナ」


 名前を呼ばれ、心臓が高鳴った。立ち止まり真っすぐにこちらを見ている。


「はい」


「お前はまだそんなものを連れているのか?」


 見下す視線の先にはルーナが抱く黄色いスライム。


 決して声を荒げているわけでは無い。しかしその言葉は間違いなくルーナを非難している。


「スライムを城内に連れ込むことに関しては、以前にお父様の許可は頂いています」


 声に混じる明らかな震え。しかしルーナは自分の意見をしっかりと言い切った。


「………そういうことを言っているのではない。不愉快であると言っているのだ」


 ハルカンに付き従う男達の視線には侮蔑が多分に含まれている。魔王を使えないことに対する侮蔑か、下位の王子であることに対する侮蔑か………。


 当然のごとく全員が魔法使いであり、そして一流の軍人である彼らの忠誠心は高く、ハルカンこそが次の王にふさわしいと思い込んでいるようだ。


「申し訳ありません」


「私の使命は人間に害をなす魔物をこの世界からすべて排除すること。その私の目の前でスライムなどと言う魔物の中でも極めて低俗な魔物を見せるな」


「申し訳ありません」


 頭を下げるルーナを見て何を思ったのか、鼻をはらした後で去っていくハルカン一行。


 彼らが通ると一斉に廊下の窓が震える音がする。その身を包む魔力は濃密で意識せずとも影響を及ぼすのだ。


 その後ろ姿を見るスライムの視線は鋭い。


 気付いているのかいないのか、ハルカン一行は一度も振り返ること無く長い廊下を進んで行った。





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