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2話 ~入学~

 


 燦燦と降り注ぐ太陽の光の中、小鳥達がじゃれあいながら校舎の上空を飛んでいった。


 校門の門札には「ゴアジャ国立特別養育学校」と記されている。ここは下級貴族や裕福な一般人のための学校だ。


 少し前まで子供たちの明るい声で溢れていたこの場所だが、始業チャイムが鳴る時間が近づくにつれて、生徒の数は確実に少なくなっている。


 校門の前に石像?違う、少女だ。


「ううううう………どうしよう」


 直立不動で今にも泣きだしそうな声を出しているのは、モコモコの黄色い髪の毛をした少女。


「私の足はもう一歩も踏み出してくれないよぉ………」


 他の生徒たちと同じように学校の制服を着てはいるが、そこ姿にはどことなく気品が感じられる。もっともその表情のせいでかなり台無しにはなってはいるが。


「ねぇ、セト………」


 助けを求めるようにして抱きしめた腕の中には、髪の毛と同じ色をしたスライムがいる。その表情は非常に堂々としているように見える。


「このままじゃ遅刻しちゃうよぉ………初日から遅刻なんてしたら、もう一生学校になんか行けないよぉ………」


 この少女は先ほどからずっとここに居て、同じような泣き言を繰り返している。


 少女の名前はルーナ。


 このゴアジャ国の第14王子であり、この学校に今日から通う事になっているピカピカの一年生だ。


 性格はよく言えば控えめ、悪いく言えば人見知りで臆病なので、誰も知り合いがいない学校に通うなんて事は、素手でツキノワグマに挑むようなものだ。


 視線。


 校舎の窓からは、いつまでもウジウジしているルーナを面白そうに見ている目が何百もある。


 第14王子という身分の高い子がこの学校に来ることは前から話題になっていたし、その特徴的な髪色はとても目立つ。


「うう………」


 人の視線というのは見なくてもなぜか感じるもの。だから今、ルーナは顔をあげることも出来ない。


「ううう………」


 微かなうめき声が通り抜けていく青空。そこを横断する雲の速度はかなり速い。きっと上空では強い風が吹いているのだろう。


「もう………帰ろうか、セト………」


 力なく首を横に振り小さな声で言った。その顔にはもう困難に立ち向かう気力は欠片も無いように思えた。


 涙がにじみ始めた。


 その時、腕の中のスライムがピョンッ、と飛び跳ねた。


「わわっ!」


 予想外のスライムの動きに体が引っ張られ、ルーナは2歩だけ歩かされた。


「中に入っちゃった………」


 そんなつもりは無かったのに気付けば校門を越えていた。


 焦る。


 またスライムが跳ねた。


「わわわ!」


 ルーナはまた数歩だけ学校の中に入った。


「ちょっとセト、大人しくして」


 跳ねた。


「わわわわわ!」


 入った。


 跳ねた。


「わあああああ!」


 入った。


 跳ねた、跳ねた、跳ねた。


「あわわわわわあーーー!」


 つんのめるようにして学校の中を横断していく。こうしてなんとかルーナは学校の中に入ることに成功した。


 大きくて白い雲に向かって跳ぶ黄色いスライムの表情は実に満足げであった。





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