18話 ~お誕生日プレゼントをください~
広い大理石の室内に静寂と緊張感がうっすらと満ちてき始めた。
「ルーナからのお願いなんて初めてだな。一体なんだろう?」
薄紫色のカールした髪型のナバラ15世が高い所にある豪華な椅子から、離れた所にいるルーナの顔を覗き込むようにして見る。
「お誕生日に頂くプレゼントの事です」
「うん。宝物庫に行ってどれでも好きなのをひとつ持って行っていいよ」
「ひとつでは足りません」
「なんだそういうことか。けどねルーナ、12歳の誕生日にひとつ宝物庫から好きなものを持って行くというのは代々伝わる習わしなんだよ。沢山ほしいのは分かるけどルーナだけというのは平等じゃないと思うよ」
子供を諭すように王が言う。
前回あった時には緊張してまともに話すことも出来なかったルーナが人が変わったかのように発言してきたので戸惑ったが、子供がワガママを言っているだけだと思って安心した。
「平等を言うのであれば、全ての王子が同じ時に貰うべきでは無いですか?今のルールでは上位の王子から好きなものを持って行くので、一番下の王子である私には残り物しかありません」
「残りものっていうのは言い方が悪いよ。あの中にあるのは国中から集めた宝ばかりだし、第一王子の時にはなかったものが今の宝物庫には増えているんだよ?」
王は笑いながら言った。
「そうでしょうか?私はそうは思いません」
「どうしてだい?」
「一月ほど前の魔物討伐の恩賞として貴族に対して宝物庫の品を放出したと聞きました。それに最近は魔物の動きが活発だとも聞きました。ということはその度に宝物庫から恩賞を渡しているのではないですか?」
「うん、まあ………頑張ってくれた貴族にはその分の見返りを渡さないといけないからね」
王は苦いものを食べたような顔をして言った。
「それは私もそう思います。けれどそういう状況であれば、宝物に収められている物品は増えるよりも減る方が多くなります。第一王子の時にはなかったものが増えているかもしれませんが、それ以上に第一王子の時にあったものが大幅に無くなっているのではないですか?それでも平等と言えるでしょうか?」
「………だけど習わしだからね」
「代々伝わる習わしというのは確かに大切であるとは思いますが、それは価値のある習わしであればです。無価値で不平等な習わしは消してしまう方が良いと思います。つまり改善です」
「改善、なるほどねぇ………確かに悪いことは治して行かないといけないねぇ………」
おちゃらけた様子で笑いながら言っているが、娘に対し討論の分が悪いという自嘲が隠せていない。
「今から第一王子の時と同じ程度に宝物庫の物品を増やすことは難しいと思います。ですのでその分を頂く数を増やすことで補って頂きたいのです」
ナバラ15世は娘であるルーナを見る。
別人?
そう思ってしまうほど娘は変貌している。最初は子供のワガママだと思っていたが違う。まるで腕のいい弁護士のようにこちらの筋道を読み切って、全てに反論を用意してきている。
「数で補うか………いくつ欲しいんだい?二つ?それとも三つ?」
首を垂れながら相手の反応を待つその姿は、まるで赦しを乞うているようだった。
「私がこの手で一度に運べる分だけ、ではどうですか?」
思ってもいなかった答えが返ってきて王は目を剥いた。
さらに驚いたのはルーナがうっすらと笑っていたことだ。この笑顔どこかで見たことがある………そうだ、彼女の母親であるポワソンだ。
平民の出でありながら知性と判断力に優れ、今や王である自分の仕事を手伝い、政治に対しても影響力を持つ才女。
王はいま12歳の我が娘に対してわずかの恐ろしささえ感じていた。
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