17話 ~父との邂逅~
「おー愛しきルーナ久しぶりだね、元気だったかい?」
薄紫色のカールした髪型のイケメンが大きく両手を広げながら娘の到着を歓迎したのはゴアジャ国の王、ナバラ15世だ。
さまざまな色の大理石で作られた部屋は広くて雄大だがその分だけ温度を感じさせない。王の態度はざっくばらんなだけに、双方の温度差が感じられ落ち着かない空間となっている。
「はい元気です。お父様はいかがですか?」
「私は元気だよ。ルーナだけに特別に教えてあげると、元気でいられるコツはなるべく仕事をしないようにすることさ。どうだい、面白いだろう?」
王は大きく笑ったが、近くにいる側近たちの表情は全く笑っていない、むしろ引きつっている。恐らくその言葉の通りに仕事をあまりしていないのだろう。
「堂々としていて素晴らしいです。王というのはこうでなくてはなりません」
ルーナの母のポワソンが見惚れたような表情で言った。彼女の声と仕草には非常に品があり、見た目も美しいことからまるで女優のように見える。
「ありがとうポワソン。分かってくれるのは君だけだよ」
「いえいえ、全国民がそう思っています」
「ほんとうかな?」
周りを見渡すが側近たちはどちらとも言えない表情を浮かべているだけだ。
「人間は近くにいるものに対しては非常に厳しく見てしまうものなのです。しかし振り返ってみれば不満に思っていたのは実は高望みしすぎていたと気が付く日が来ます。普通であれば一国で最も大きな力を持つ王であるという事自体が普通の人間であれば耐え難い重圧なのですから」
王の目を見ながらすらすらと透き通る声で言った。
「うん、そうだよね、そうだよ。俺はよく頑張ってると思うよ。やっぱりポワソンは良く分かってくれているよ。仕事も手伝ってくれるしさ、一緒にいれて嬉しいよ」
「わたしもです。あの時王から声を掛けて頂いた日から毎日がキラキラと色づいて見えるんです。きっとこれを幸せと呼ぶのだと私は思います。すべては偉大なる王のおかげです」
「ポワソン………」
「ミシェル………」
「ポワソン………」
「ミシェル………」
ふたりは見つめ合い、甘ったるい空気が大理石を生暖かくした気がした。
「いけません、今日の主役は先日お誕生日を迎えたルーナでしたね」
「ああそうだったそうだった………悪いことをしたねルーナ」
「私は大丈夫です」
少しぎこちない笑いを浮かべながらルーナが言った。
「それにしてもルーナ、君はお母さんに似て美しくなっていっているね。前に見た時はほんの子供だと思ったけど、今日見たら素敵なレディーになっているじゃないか」
「ありがとうございます」
「うんうん、これからも頑張るんだよ」
「はい」
「それじゃあ恒例のプレゼントを贈ることにしようか。他の王子たちと同じように宝物庫に行って、好きなものを選んでひとつだけ持って行くといい。宝物庫にあるのはどれも素晴らしい物ばかりだからきっとルーナの役に立ってくれると思うよ」
「それについてなのですがお父様、ひとつお願いがあります」
椅子から立ち上がろうとしていた王は意外そうな表情をしたまま座り直してルーナを見た。まさか引き留められるとは思っていなかったのだ。
「お願いってなんだろう?」
「それは………」
ルーナは少し緊張した様子で話し始めた。その傍らには黄色いスライムがいて、ポワソンが言う所の悪い顔をしているように見えた。
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