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16話 ~母との邂逅~

 


 美しい物だけで作られた広い部屋の中に、エメラルドグリーンのドレスを着た美しい女性がいる。


「久しぶりねルーナ、元気にしてた?」


 微笑みながら声を掛けたのは、ナバラ15世の公妾でありルーナの母でもあるジャンヌ・ポワソンだ。


「はいお母さま、元気です。最近は今までよりもとても元気です」


「それは良かった。最近は忙しくてあまり会うことが出来なかったけど心配していたのよ。あの学校がルーナに合うかどうかは賭けみたいなものだったから」


「クラスのみんなはすごく良くしてくれています」


「もうもめ事なんか起こさないわよね?」


 それはセトが極悪教師を成敗したことを言っている。本来ならば退学確定の所を、王族の権限で無かったことにしてくれたのだ。


「もちろんです。新しく来た先生はとても生徒思いでみんなから好かれています」


「お友達とも仲良くやっているみたいね。今日も一緒に図書室に来てお勉強だなんて感心だわ。ルーナには私と同じように本が好きになってくれたら嬉しいって思っていたから」


「本を読むのは好きですし、友達と一緒だともっと嬉しいです」


「その気持ちすごく分かるわ」


 親子は互いに微笑む。


「セト、あなたは元気?」


 絨毯の上で大人しくしている黄色いスライムに向かって明るい調子で聞く。スライムは頷くことで質問に答えた。


「セトもとても元気です。元気すぎるくらい元気です」


「ますます良かったわ」


 満足そうに言って美しい彫刻が施された椅子から立ち上がった。


「もしルーナの心の準備が出来たのなら、ルーナが誕生日を迎えてまた一つ成長したことの御挨拶に行こうと思うのだけど大丈夫?」


「はい………」


「そんなに緊張しなくても大丈夫、親子ですもの」


「セトも一緒に行きたいんと思っています。一緒だったら緊張せずに色々とお話しできると思うので」


「そうね………」


 しばらく考えた後、笑顔で言った。


「その方が良いかもしれないわね。去年のあなたはカチコチでお父様を困らせてしまったから」


「それは言わないでください!」


「あら、ごめんなさい」


 ルーナは顔を真っ赤にして声を張り上げ、ポワソンは声をあげて笑った。


「今年はきっともっとうまくやれるわ。私から見てもルーナは見違えるほど成長しているもの」


「ありがとうございます」


 ポワソンは微笑みで返した後でセトの事をじっと見る。


「なんだか前よりも悪い顔になっている気がするわ」


「そうですか?」


 ルーナもセトの顔をじっと見る。


「毎日一緒にいるから分かりません」


「そうね、そういうものよね………」


 少し寂しそうに答える。


「セトが来てくれたので私は寂しくないですよ」


「母としては複雑だけれど、ルーナが笑顔でいれることが一番だもんね」


 その表情にはほんの少しの葛藤と重い諦めが見える。


「それじゃあ行きましょうか。また何か急にお仕事が入ったりしたらいつ会えるか分からないもの」


「はい」


 ポワソンは自分に香水を振って、そしてルーナにも香水を振ってから手を繋いで部屋を出た。


 ルーナが母と話をするのは一週間ぶりのことだった。





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