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15話

 


「失礼します」


 王城の図書室に広がる静寂を打ち破ったのはメイド服を着た黒髪の美しい少女だった。


 カツカツ………と音を立てながら姿勢よく歩いて行き、ルーナの目の前に来て足を止めた。


「ルーナ王子、お部屋にてポワソン様がお待ちです」


「ポワシーが来たという事は、あれの準備が整ったということ?」


「はい」


「うぅ、緊張するよぉ………」


 隣で座っている黄色いスライムを撫でながら言った。


「ルーナ、何かあったのか?」


「うん。私ちょっと席を外さないといけない。すごく大事な用事が出来たから」


「え!ってことはもうここを出ていかないといけないってことか?ようやく面白くなって来た所なんだけどなぁ」


「大事な用事が出来たっていうんだから、しょうがないじゃないか」


 美術の本を広げているエイトに向かってシューキが言う。


 彼は本にめり込むんじゃないかという位に熱中して呼んでいたので、残念そうな表情はエイトと同じくらいかそれ以上だ。


「しかたないよね。また機会があったらお呼ばれさせてもらおうよ」


 体の大きなフォードが料理の本を閉じながら言う。彼の手元にあるノートには料理のレシピがびっしりと書き込まれている。


「それには及びません」


 メイド服を着た少女ポワシーがはっきりと言った。


「ポワソン様からの御指示で、本に熱中している子供たちの邪魔をするのは悪いから、私がルーナ王子の代わりとしてこの部屋にいることを条件に、貴方方は図書室を利用し続けても良いという事になっています」


「いいの!?」


「はい」


 3人はハイタッチして喜んでいる。その中でも一番喜んでいるのはシューキだ。彼は学校の休み時間にも本を読んでいるくらいの本好きなので、ずっと一緒にいるエイトとフォードでもなかなか見たことが無いくらいの喜びようだ。


「さすがお母さま」


「ポワソン様は隅々にまで心が行き届くのです」


 まるで自分が褒められたかのようにポワシーが胸を張る。


「それじゃあ行こうか、セト」


 そう言ってスライムを抱え上げ、ルーナは席を立った。扉を開け歩きなれた長い廊下に出た。


 窓の外には噴水が太陽の光に照らされて光る水しぶきをあげているのが見える。


「いよいよ来たね………」


 腕の中のスライムに小さな声で言う。


「私たちの計画通りに行くと良いんだけどね………」


 ルーナは再び歩き出した。


 これから母であるポワソンと共に父であるミッシェル王に会いに行く。王であるミッシェルとは娘のルーナでさえめったに会うことは出来ない。


 けれど今ルーナが感じている緊張はその時に、王とある約束を取り付けなければいけないという緊張だ。





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