10話 ~最初の授業~
青空がどこまでも澄んでいるような青をしている。「ゴアジャ国立特別養育学校」の校庭には体操服に着替えた20人ほどの生徒が集まっている。
「うぅ………」
ルーナがもじもじしているのは体操服がブルマだから。何がどうしてこうなっているのか分からないが、一つ考えられるのは転生者の仕業。
しかし一体だれが何の目的でブルマなんてものを広めたんだろう。その趣向は理解できなくも無いが、俺だったら恥ずかしくて堂々と広めることなんか出来ない。
「あー頭痛てぇ………」
腰を曲げながら心底だるそうに言ったのは新しい担任のボルビック。
「とりあえずはグラウンド10周だな。この学校に入るってことは最低限それくらいの体力はあるだろ?」
生徒たちからブーイングにも似た声が静かに巻き起こる。やはりどの世界でも走るという運動は好かれないようだ。
「けどただ走っても面白くないな。俺も徒競走は大嫌いだったからお前らの気持ちはわかるよ。けどそれだってやり方しだいってもんだ、なにか盛り上がるような面白いアイディアは………」
ぼさぼさの頭を掻きながらブツブツと何かを言っているのを見て、生徒たちは聞き耳を立てている。もしかしたら何か面白いことを始めるつもりなのかもしれない、そんな期待感が感じられた。
「よし、これでいこう!今から走って上位10人に入ったやつに関しては、特典をやる」
特典という普段の授業では聞きなれない言葉に生徒たちは興味を惹かれ、ボルビックの言葉に注目している。
「少しくらいの遅刻をしても1回だけ見逃してやる、これならどうよ?俺も今日はすこしばっかり遅れてきたからな、これで相こだな」
自分のアイディアに満足そうに頷いた。
「おー!」
湧き上がった歓声。
ちょっと前まで不満たらたらだった生徒たちの表情が変わった。けれど全員ではない。ルーナのように全くテンションが上がっていないも結構いる。
ルーナ、お前の気持ちはわかるぞ。
というのもルーナは極端に運動音痴。王子としての鍛錬を半泣きになったり、大泣きしたりしながらかなり頑張ってはいたのだが、いかんせん才能が無さ過ぎなのだ。
「先生、さいっこう!」
ざわめきの中でエイトの声が響いた。彼女は誰にでも話しかけてくる明るさを持っているが、そういう人特有の良く響く声を持っているので何か言う度に良く目立つのだ。
「そうだろう?俺は良い教師なんだよな」
ずっと姿勢が悪かったボルビックの腰が少し伸びて、満足そうにニマリと笑った。
この男、二日酔いで初日から遅刻してきたわけだから人間性としてはかなり怪しいものがあるが、何故だか人に好かれるという特性は持っていそうだった。
俺もこういう感じの奴は嫌いではない。というか少なくとも前の極悪教師よりは断然いい、それは全生徒が思っていそうだった。
「どうせなら1位にはもっといいご褒美も?」
「なるほど、そうだな。確かに1位の奴には特別に何かあった方が盛り上がるか………そうだな、それじゃあ1日サボり券だ!」
「何それすんごく良さそう!」
生徒たちはさらにざわめく。
「1位の奴は1日だけ学校をサボってもちゃんと来てるってことにしてやるよ。担任の俺が書類をちょっと書けばそれくらいは楽勝なんだからな、どうだ?おもしろいだろ?!」
この声に運動場は大いに盛り上がり、少し前までのダルそうな表情をしていた生徒たちが一気にやる気に包まれている。
「よしそれじゃあ、サボり遅刻争奪徒競走を始めるぞ!」
変な授業が始まって全員が教室から運動場へと移動を始める。
結果から言うと、ルーナは頑張った。
最下位だった。
途中で転んでしまったのが痛かった。
けどがんばった。
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