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第0話 プロローグより第0話って書く方がそれっぽいですよね

新歴173年、聖国・魔道国・帝兵国の三大国家が支配するコーヴァル大陸に、三体の魔王が顕現した。

彼らの使役する魔物達によって三大国家は瞬く間に陥落寸前まで追い込まれ、民たちは迫り来る邪悪に怯える日々を強いられる。

そんな現状を打破すべく、各国の王は、賭けにも似た作戦を取った。

それは、それぞれの国から最も優れた者を集め、少数精鋭で魔王の討伐を図るというものである。

剣聖の剣技は獣王の爪をも切り裂き、聖女の光は魔神の影をかき消し、賢者の魔法は龍王の鱗すら焼き尽くした。

そして、誰もが諦めかけたかつての平穏は、3人の英雄の手によって取り戻されたのであった。

これは、そんな英雄譚が御伽噺として語られ始めた頃のことである。





「師匠、お身体の具合はどうですか」


絹のような白髪を束ねた少女、アステルは薬を調合しながら老人に話しかける。

もはや生きているのかすら疑わしい程手足が細くシワの多いこの老人こそ、かつて世界を救った大英雄にして、全属性の魔法を操る大賢者サピエンティアである。


「毎日愛弟子の薬を飲んでいるからの。元気ピンピンじゃわい!」


「それなら良かったです。師匠に居なくなられたら、私、、、」


「ふふ、何を言うとるか。お主は既に1人前の魔法使いじゃろうに。お主に匹敵する同年代など片手にも満たぬじゃろう」


これは世辞でもなんでも無く、歴とした事実だ。

特別な属性である光、そして闇魔法を2種とも自由に操れる魔法使いなど、大陸全体で見ても果たして他にいるかどうか怪しいものである。

しかし、賢者の賛美を遮り、アステルは再び口を開く。


「私、人と会話できなくなってしまいますから」


「あー、うん。まずそういう所直すべきだと思うな。儂」


(本当に立派に育ってくれたものだ。こんな老人の手でスクスクと育ってくれた事が嬉しくてしょうがない。

だが、だが!あまりに他人との会話に難がありすぎる。

こんなに強くも美しく育ってくれたのに、玉に瑕所では無い。

裂け目が、裂け目が入っておる、、、!)


「お主をこんな辺鄙な森の中で育ててしまった儂も悪いとは思うが、もう少し何とかならんのかのう」


「ううん、無理です師匠。師匠も見たでしょう、私が1人でお使いに出てどうなったのか」


「ああ、パンを買いに行かせてパン屋に入れないまま3刻が過ぎる人間が居るとは思わなかったのう」


「ふふ、照れます」


「褒めとらんわ!!!別にあのパン屋と初対面でも無かろうに、どうしてこう緊張してしまうのかの」


「だって魔法と違って起こることに予想が付かないんですよ。事前に用意しておいた対応がいきなり取れなくなってしまうんです、焦ってしまうのもしょうがないでしょう」


「まず会話をしとらんでは無いかお主は、、、」


どこか自慢げに見えるのはきっと自分の勘違いだろう、そう自身に言い聞かせながら、サピエンティアは興奮から起こした体を再びベットに沈め、気を取り直して語り始めた。


「おほん、そんなことよりも、お主に大事な使いを頼まねばならん」


「まだ私をいじめ足りないんですか?先日もお肉を買いに行って2日帰ってこなかったばかりでしょう、私」


「ああ、まさか肉を買いに行かせて魔物を背負ってくるとは思わなかったのう、、、」


「と、そうでは無くてだな!!大切な話じゃ、よく聞きなさい」


「近頃魔物達の動きが活発になっておることは知っておるな?普段であれば魔力の濃度から近づくことのないこの黒曜の森にまで侵入してきてる物すらおる」


サピエンティアは顔を顰めながら続ける。


「魔族の生き残りが何か企んでおるやもしれん。民の生活が脅かされる可能性がある以上、野放しにはしておけぬ」


「じゃが儂にはそやつらに対処する時間も力も残っておらぬ。それゆえアステルよ、お主がこの世界を救うのだ」


薬草を調合するアステルの手が止まる。


「師匠のような英雄ならともかく、人と話すことすらままならないというのに、世界を救うなどと大それた事私には出来ません」


「何を言うとるか、胸を張れアステル。お主はこの大賢者、サピエンティアの1番弟子じゃぞ。英雄の素質などお主の短所を補って余りあるわい」


優しく語りかけるサピエンティアからアステルは目を逸らす。


「仮に私に英雄の素質があったとして、私程度の実力で、魔族に適うとは思えません。未だに2属性の魔法しか満足に操れないのに、、、」


「そんなものの解決法は簡単じゃ。信頼出来る仲間を作れば良い」


「ッ!!それが私にとってどれほど難しいか、師匠は知っているでしょう!」


サピエンティアは声を荒らげて立ち上がるアステルの目をじっと見つめる。


アステルはかつてこの森の中心部をさまよっていた所を拾われ、16歳の今になるまで育てられてきた。赤ん坊であったのならいざ知らず、4歳の子供が両親の手によって危険な獣の彷徨く場所に置いていかれたのだ。嫌でも自身が捨てられたということは理解しているだろう。そして、そんな子供が他人に対してどんな感情を抱くかなど、考えるまでも無いことである。


(じゃがしかし、この子が街で迷子の子供を放っておけず、子供を差し置いて大泣きしそうになりながら両親を探してやった事も、街で火災が起きた際に苦手な水魔法を必死に唱え、皆を助けたことも知っておる。この子は、誰よりも辛い目に合いながらそれでも他人を思いやれる、優しい子じゃ)


「ああ、心優しいお主であれば、信頼のおける仲間を作ることなど容易いと知っておる。お主が幼い頃からずっと一緒に居るのだからな」


アステルの手をそっと包みながら、サピエンティアは続ける。


「ああ、そういえば剣聖と聖女の2人も弟子を持ったと聞いたことがあるの。英雄の弟子じゃ、事情を話せば協力してくれるであろう」


「そやつらとともにこの世界を守ってくれ。儂らが1度救い、そして愛したこの世界を」


微笑みながら手を離し、サピエンティアは目を瞑る。


「ッ!!!!!」


立ち上がったまま、爪が食い込むほど拳を握りしめ、震えながらアステルは声を張り上げる。


「さっきからおかしいですよ師匠!こんなに改まってどうしたんですか!」


「まるで、まるで、、、!」


「最後のおわかれ、みたいじゃないですか、、、」



賢者の肉体はベットに横たわったまま動かない。


まるでそれを嘆くかのように、森の木々は揺れ、夜空の星々は輝きを放っている。


かつて世界を救った大英雄の死から、この英雄譚は書き綴られるのである。


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