ep.8 影武者の存在・次なる国へ
コンコン
「入れ。」
「おはようございます。陛下。」
入ってきたのはダズ・w・アリジオ、この国の宰相だ。
「ノエル様もご帰還なさっていたんですか。おかえりなさいませ。」
(ダズ…コイツ苦手、というより嫌いなんだよな。腹のうちが分からない。)
「そういえばノエル様はウェスタードのアリアン王と直々に会談したらしいじゃないですか。どうでしたか?」
(何でコイツがそんなところまで知っているんだ。)
「国交樹立の話と教育・福祉の分野について話してきただけだ。会談と言うまでもないさ。」
「左様ですか。」
「あ、そういえばダズ。前々から言っていた影武者の件だが、」
「影武者?そんなこと聞いてないですよ?」
「あぁ、ノエルには言ってなかったな。俺が生身で外に出るのは危険だから影武者を立てようと言う話になっていてな。ノエルがウェスタードに行っている間に話をまとめていたのだ。」
「影武者、ねぇ。誰を影武者にするか決めているんですか?王妃様や殿下達の影武者。他の王族の影武者も用意するのですか?」
「あぁ。全ての王族に影武者をあてがう。王たる者、王族は守らねばならぬからな。」
エアリオスにいる王族は王含め15名。アリアンの妹家族や姉家族が15名にあたる。
「王族の影武者なのでそれなりに作法ができてないといけません。貴族で影武者をつくるのが妥当かと。」
「それは問題ない。既に影武者にするものは決めてあるからな。」
「僕がいない間に一体何があったんだよ...」
「影武者の集落自体はエアリオス建国当初からありますよ。」
「はぁ?つまりはダズが影武者の集落を既に作っていた、と?」
「えぇ。今はだいぶ国が落ち着いてきたので話を持ちかけたんです。」
(勝手にアレコレと、僕がティアの神使と知っているだろうに。)
「そうですか。とりあえず影武者の件は了承しました。国交の話もできましたし、僕は家に戻ります。」
ソファーから立って扉の前に行った。
「また何かあればご連絡を。」
「そういえば陛下。私細やかながら贈り物がございます。」
ノエルの家はエアリオス南東部。一軒の木造の家である。周りには花が咲き、小鳥や犬などの動物がいる。
「疲れた...」
ベットに横たわった。
(アリジオの近くにいるとどうも気が狂う。頭が痛くなる。でも有能だから追い出せない。最悪だ。フラガラッハは人を信じやすいから変に言われてないと良いが、)
「まぁフラガラッハを信じるか。」
少し仮眠を取ることにしたノエルだった。
〜夢の世界〜
「ノエル、ノエル。起きなさい。」
ノエルは目を覚ました。
「んぁ、お呼び?」
「無様に寝ないでください。寝首をかかれますよ。」
「かけるもんならかけてみろって言いたいです。」
「自信家もほどほどに。」
「実力があるのは事実ですよー。」
「まったく。」
(我儘に育ってしまいましたね。)
「ウェスタードとの国交の話は纏ったし、一件落着です。少しくらい休ませてください。」
ティアはノエルの扱いに少し困っていた。
「そういえば北の地にある、リーシェリウスでしたっけ?フラガラッハの幼馴染がいる帝国って。」
「それがどうかしたんですか?」
「国交樹立をしたらどうですか?」
「僕じゃなくて、フラガラッハに言ってくださいよー。面倒でーす。」
ソファーの上に寝転がっていたノエルはティアの魔法にによって床に落とされた。
「痛!」
「随分と生意気になりましたねぇ、ノエル。」
「ング、分かりましたよ。リーシェリウスに行けば良いんですね?」
「よろしい。」
床から立ったノエルはソファーに再び座った。
「そういや以前に変な夢を見たんですよ。どこかの集落が焼き討ちになって子供の泣き声が聞こえて、何か知りませんか?」
「...いえ、何も。気のせいでは?」
「その反応、何か知ってますね。」
「それより早く戻ってはどうです?」
不貞腐れたノエルは再びソファーに横になって眠りについた。
(今はまだ、今はまだその時ではありません。あなたには悪いですが、少し騙されてください。)
「ノエル。リーシェリウスに行ってくれ。」
「急に呼んだかと思えば何ですか。」
ノエルはフラガラッハに急用で呼ばれていた。
「リーシェリウスの王であるフォニアが俺の旧友でな。国交の樹立をしたいから挨拶に行ってこい。」
(ティアが言った通りになったな。って、また無茶振りかよ。自分で行けクソ餓鬼。って言いたいところだけど無理か。リーシェリウスは女帝が統べるとかいう大国。後ろ盾としては申し分ないだろう。)
「承知いたしました。では行ってまいります。」
「ダズ!ダズはいるか?」
「はい陛下。ここに。」
玉座に座りながらダズを呼んだフラガラッハ。
「俺がリーシェリウスを手に入れれば、本当に国は豊かになるのか?」
「はい。陛下。あの帝国を手に入れればこの大陸の全ての国を支配したもの同じです。貴方様のお考えはとても素晴らしい。世界に広めるべきでございます。」
「そうかそうか。」
(徐々に浸透しているようだな。愚王陛下。実際に世界を牛耳るのは私です。陛下には踏み台になっていただきますよ。)