ep.7 暗雲...?
食事が終わり各々が戻っていった。
ノエルは長い廊下を歩いて迎賓館の自室へ向かっていた。
(長い廊下だな。)
「ノエル殿。」
背後から誰かに話しかけられたのでノエルは振り返った。
「エドワルド、さん!」
「さん付けは不要です。王には会えましたか?」
「はい、なんとか。」
「それは良かった。4人の殿下達はどうでしたか?」
「王族に相応しい風貌、という感じでしたね。」
「そうでしょうね。殿下達は幼少期から王族として持つべき知識、品格を教えられてきたとアリアン王が仰ってましたからね。」
「自信に満ち溢れても驕ることなく堅実に歩むタイプの方々ですね。多分ですけど。」
「堅実にコツコツやるのが一番ですよ。あの4人の中で1人でも欠けたら国が傾きますから。」
「貿易・金融・国内産業・軍事は一つでも欠けたら国家滅亡になりかねないですからね。」
曲がり角についた。
「では、俺はこっちなので。」
「はい。お疲れ様です。」
一瞥したエドワルドは自身が使う部屋へ戻っていった。
ノエルも程なくして自室に着き、ベランダへ行った。
(フラガラッハ、大丈夫だと良いな。お目付け役がいないからって好き放題やってないと良いんだけど...他の奴らは犬みたいに従順で反対意見というか、付け足し意見を言わないからな。真っ向から否定する必要はないけど、何だろう。一つの意見で全てが決まるワケじゃないんだしもうちょっとやっても良いと思うんだけどな。)
少し憂鬱になったノエルだった。
(このまま順調に発展して欲しいよ。エアリオスには。)
ベランダから離れベットで眠りについた。
「主様。御報告があります。」
「何だ?」
???は大きいソファーに大きく座り跪いている諜報員の話を聞いていた。
「ノエル・アザリンスが隣国の王と王妃、子供達と食事をしたと連絡が入りました。隣国の微量の魔力を含む食物で回復薬を作るなど言っていたらしいです。」
「ノエルめ。勝手なことを。」
「いかがいたしましょう。」
「今は動かないのが吉だ。何もするな。計画が頓挫するのは腑が煮え繰り返る。」
「御意。」
「ノエルの監視を続けろ。ただし、寝首をかくことはするな。面倒だから。」
「承知いたしました。」
諜報員はその場から去った。
(ただ女神に選ばれたというだけで陛下のお目付け役だなんて、巫山戯たヤツだ。まったく。邪魔になるだろうからすぐに消したいんだが、そうなると女神が火を吹くからな。それは避けたい。)
深く息を吐いた???。
「まったく、面倒なことよ。」
ノエルは夢の中で目が覚めた。
「ティア、いるなら出てきて、って、」
自分が立っているのはいつもの夢の世界ではなかった。
「どこだ、ここ。」
唯一分かるのは何かの集落であること。人が“住んでいた”ということ。
「焼け、野原?」
人が住んでいた痕跡を残して家屋が倒壊していた。
「なんだ、こ、れ、」
頭が割れるくらい酷い頭痛がノエルを襲った。
「あ"あ"!」
その場に膝をついた。
「何だ、この、頭痛は。」
経験したことのない、頭痛。額に汗が落ちた。
「ティア!いるなら出てきてくだ、さい!」
返答がない。
「これは、何なんだ。」
あまりの痛さに頭を抑えたノエル。だが手に少し違和感をおぼえた。
「手に何かついてる、ってこれ血か?」
その瞬間悪寒が走った。
「僕が、誰かを殺した?いや、そんなはず、僕は何も殺さない。殺せない。手は汚れないはずだ。じゃあ何なんだ?」
(もしかして、未来で何か起こるっていうのか?)
子供の泣き声が聞こえた。
「泣き、声、」
キィーンと耳鳴りが頭に響いた。
現実世界で起きたノエルは飛び起きた。額には先程の夢の世界より多くの汗が浮かんでいた。
「悪い夢だな。勘弁してくれ。」
朝の準備を始めた。とはいっても魔法で一瞬で終わる。
(二日酔いでもないのにこれか。はぁ。)
昨日の夜に引き続き憂鬱である。
(未来で大事が起こることは何となく分かった。対策も早いうちに練っておかなきゃ。って言ってもどうすれば良いんだ。)
やることが山積みなノエルだった。
(早いうちにここを出よう。うん。面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだからな。)
手紙を書いて残し、ベランダから飛び降りて迎賓館から出た。
(何も言わずに去るのを許してください。)
スメラギが扉を叩いた。
「ノエル様。開けますよ。って、いない?」
部屋はもぬけの殻だった。
「これ、手紙?」
ノエルが書いた手紙が目に入った。
「『急用ができたのでお暇します。何も言わずに去るのをお許しください。また機会があれば会いましょう。』、か。そうか、帰られたのか。」
スメラギは王に手紙を届けに行った。
「何?ノエル様が帰った?」
「はい。先程部屋に手紙が置いてありました。」
スメラギは懐から手紙を出した。
「一言言ってくだされば良かったのに。」
「仕方がない。こちらが頼んだのだから、去るのは向こうの勝手だ。」
「また、会えると良いですね。」
「そのうち会えるさ。世界は狭いのだから。」
ノエルはウェスタードを出てエアリオスへ向かっていた。
(フラガラッハへ報告しないとな。)
エアリオス王城
「フラガラッハ王!ノエル、帰還しました!」
長い廊下の奥から誰かが走ってきた。
「ノエル〜!」
「走らないでください。ウェスタードからの国交の件は聞きましたよね?」
「あぁ。聞いたさ。こちらとしても後ろ盾ができるのは素晴らしいことだからな。新興国だし。」
「向こうにも連絡しておきます。」
フラガラッハとノエルは執務室へ向かった。
「それにしても2日で帰ってくるとは思わなかったぞ。」
「そうですかね?僕は面倒ごとは極力避けたいので早く帰ってきただけですよ。」
「俺に使えるのは面倒なのか?」
「んなこと言ってね、ないですよ。」
「ノエル、お前ちょくちょく言葉が崩れるからどちらかにしてくれないか?」
「...すみませんでしたね。」
〜執務室〜
フラガラッハは引き出しから紙を出した。
「国交の話はここにまとめてある。その、アリアン王?に伝えてくれ。」
フラガラッハはノエルに紙を渡した。
(こんな紙一枚で国交を結ぶことが決められるなんて、便利だなぁ。)
紙を魔法で鳥に変化させてウェスタードへ送った。ノエルとフラガラッハは向かい合ってソファーに座った。
「流石だな。で、ウェスタードはどうだった?」
「噂通り農耕が盛んでしたよ。畑が多くて作物がよく育っていました。直系の王族が国内の細事におけるまで把握していましたね。下の者に任せず自分達でやっていました。」
「ほう。」
「教育・福祉の分野について聞いてきましたよ。なんでもウェスタードは4歳から幼稚部、7歳から初等部、13歳から中等部、16歳から高等部、19歳から希望の者は大等部(大学)に進学することができます。なお、これら全ての費用は無償らしいです。」
「そこまで金があるのか。恐らく財源は税金だろう。我々より国としての歴史が長いから金があって当然だな。」
「今のエアリオスの財政状況だと、中等部まで無償化が限界です。軍事と金融に関しては安定してきたので今は国内産業と貿易をどうにかするべきですね。」
「よし、宰相に言っておくか。」
「自分で理解しようとはしないのですか?」
「丸投げではない。これは“相談”だ。」
「今までは丸投げしていた自覚はあったんですね。」