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月の宮は空を駆ける  作者: 紗倉透
ウェスタード編
3/20

ep.3 女神と朝焼け

ノエルは夕食を食べて眠りについた。


「ノエル。ノエル。」

夢の世界で目覚めたノエル。

「何d、何ですか?ティア。」

「私があなたに差し上げたブローチのことですけど、」

「げ、」

(バレてたか…)

「バレるに決まっているでしょう?それも他国の人間なんて。」

「僕が他人にあげたことが不服なんですか?」

「不服というか、あのブローチは私が作ったモノですよ。女神が直接作ってなお刻印が刻まれているとなると周りから奪われる可能性があります。それを加味して渡したんですよね?」

「あのブローチは僕が上書きして女神の刻印は見えないようにしたので大丈夫ですよ。」

「まったく…あれは月の紋章が彫られているのを覚えていますよね?月の紋章はあなたが“月の宮”であることを表します。“月の宮”とバレて不利益を被るのはあなたなんですから身の振り方は気をつけるようにしてください。」

月の宮 それはノエルがティアから授かった神使の名(エンジェルネーム)。簡単に言えば神から任を授かった人間の二つ名である。神使(エンジェル)であるとバレたら崇拝対象になりかねないためティアは心配していたのだ。

「ワカッテマスヨー。」

(この子神使(エンジェル)なのに生意気なのよねぇ。能力値は高いのだけど…)

ノエルが神使(エンジェル)なった(選ばれた)理由は能力にある。僅か3歳で魔力を完全制御し5歳で火・水・風・土の基本四属性魔法をマスターし、8歳で闇・光属性の魔法をマスターするなど魔力・魔法に対する素質が人一倍あった。もちろん、それだけではない。弱冠15歳で魔人になり、1人で最大級に強い生物である成体の(ドラゴン)を打ち倒す能力。ノエルは自覚していないが能力自体かなり究極(チート)なのだ。

(究極(チート)的能力を持っている人間は他者から狙われやすい。この子は自覚していないでしょうけど。そのうち仲間に勧誘する者・命を狙う者が出てくるでしょう。この子は耐えられるか。“あの子”のように死なないか。)

愛おしい“あの子”。自分と瓜二つの片割れ。気難しい自分とは違い天真爛漫で人を惹きつける力がある可愛い子。幼い頃に悔しくも命を落としてしまった最愛の“あの子”。

(“あの子”はいつか転生する。ノエルには“あの子”を守ってもらわなきゃ。)

「ティア。どうかしたんですか?」

「何もないわ。」

「そうですか。もうそろそろ起きる時間だから行きますね。」

「行ってらっしゃい。」

ノエルは夢の世界をあとにした。

「ごめんなさい。ノエル。」


目が覚めたノエル。まだどうやら空は暗い。

(早すぎたか。少し外に出てみよう。)

ノエルは宿を出て近くにある森に入った。静寂な暗い森。花々や木々はまだ昇りきらない太陽を待っている。聞こえるのは自分の吐息のみ。

(早朝の森は静かだな。誰もいない。ウェスタードはまだ森の開発をしていないのか?)

森林などの自然資源は家屋や商店の建築でよく使われるため開発が進んでいる。開発が進んだ森はザ・人工物とも言えるような独特な匂いを放っているがどうやらウェスタードはそうではないらしい。

(まあこの匂いを感じとれるのは聖なる称号(ホーリーアカウント)所持者レベルの人間だけなんだけどね。未満の人間は感じとることなんてできない。)

ノエルはそのまま森の中を進んだ。

(ここの王に話が伝わるとか言ってたから今日は王城に呼ばれるんだろうな。あわよくばウチの重臣に、とか言われそうだけど残念。僕はできたばかりの隣国からやってきた神使(エンジェル)なんですよ〜。…とか言えるわけないだろ。)

まさに自問自答

(神使(エンジェル)は神同様祀られる対象。ともあればここに縛られることは間違い無いだろう。それは何としても避けたい。目的地はここじゃないから。)

森をさらに深くまで潜り、少し開けたところについたところで空を見上げた。

(まだ星が見えている。端が少し水色に染まった藍色の空に見える星は格別だな。)

目を瞑って空気をいっぱい吸ったあと、ノエルは背伸びをした。

「よし、戻るか。」

踵を返して宿に戻って行った。宿の自室に戻ったら窓に鳥が止まっていたので窓を開けた。

「ノエル・アザリンス。アリアン・ウェスタード様ヨリ便リダ。本日昼ノ十時二王宮へ参レ。」

鳥は飛んで行った。

(話が伝わったのか。アリアンは確か、ウェスタードの現国王。聞くところによると民思いとか。ただの噂程度だが、一体どのような人間なのか。ウチのフラガラッハは豪快でカリスマ性はあるが後先見ない暴走列車。頼むからこちらの国は落ち着いているといいが、)

暫く経って鳴いたニワトリの声と共に部屋のドアが叩かれた。

「ノエル様。朝ごはんの準備が整いました。」

「分かりました。今行きます。」

鼻の奥を(くすぐ)る深みのある香りのデミグラスハンバーグに優しい味のオニオンスープ、少し焦げ目がついた香ばしい匂いの食パンが並べられていた。

(いかにも家庭料理といった感じだな。)

「ごゆっくりどうぞ。」

老婆は食堂から出た。ノエルは食べ物に手をつけた。

(そういえばまともにご飯食べたのいつぶりだっけな。魔人になってからあまり食べてないし、)

魔人の定義で“魔法により長命になった人間”とある。魔人が生きながらえるには食物ではなく魔力が必要である。元々魔力が多い者は長期間何も食さなくても生きることが可能なのだ。

(それよりこのハンバーグ美味しいな。)

朝食を終えてリラックスしていたら時間が過ぎ王宮から使いがやってきた。

「ノエル・アザリンス様ですね。アリアン王から命を授かりました。どうぞ馬車にお乗りください。」

馬車に乗ったノエル。

(さて、どんな人物なのか。アリアン・ウェスタード)

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