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月の宮は空を駆ける  作者: 紗倉透
ウェスタード編
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ep.2 領主と宿

扉の奥にいたのは壮年の男性。色白でガタイがよく、ノエルの目から見て後方支援タイプの軍人に見えた。

「あなたがノエル・アザリンスですね。私はウェスタード王国ノイス領領主。エドワルド・ノイスです。此度は我が領の日照りへの対策を考えてくださり誠に感謝します。」

(随分と丁寧な口調だな。)

「単刀直入に聞きます。いったいどのような対策なんですか?」

「簡単な話です。僕が魔法で時の影響を受けない日差し避けを作ります。それを使えば半永久的に日差しの影響は受けないでしょう。」

「半永久的、というと?」

「僕が死なない限り使用が可能。つまり半永久的ってことです。」

「ノエル殿は魔人なんですか?」

この世界では一般人も魔法を使う。それは魔人も同じ。では一般人と魔人の違いは何か。魔人の定義は主に“魔法を使って長命になった人間”である。長命にになるというのは時の流れで老いる速度が通常より遅くなることであり、時の流れに逆らうことになる。一般人はそのような強力な魔法が使えないので“魔人”と言われているのだ。

「そういうことになりますね。とは言っても、僕はただの魔人とはワケが違います。」

「ワケが違う、と?」

「これ以上は個人情報なので控えさせていただきます。」

(僕は女神に選ばれたただ一人の魔人だ。なんて言ったら面倒なことになる。それにこの日照りの原因の国の者とバレれば首が飛びかねない。)

「初対面の方に少々無礼をはたらきました。どうかご勘弁を。日照りは国全体の問題にもなっていますので今回のことは王にも連絡しておきます。よろしければここに暫く留まりませんか?」

「良いですよ。宿さえあれば。」

「宿は、そうですね。ウチの領土にある宿は大体一般人専用ですし、」

「一般人と魔人を同じ宿に泊めたら何か面倒なことでも?」

「過去に魔人と一般人の間で一悶着ありまして、安全を配慮するために今は両者別にしているんですよ。」

「一悶着…いつの時代も一般人と魔人は面倒ですねえ。」

「そうですね。それで、魔人専用の宿が一つしかなくて、」

「一つしかないとは、魔人に対する偏見でもあるんですかね。」

「この国ではそもそも魔人が希少なんです。少数派に対して偏見を持つのは(さが)というか、」

(まぁ、あまり見ない何かに対して偏見を持つのはよく聞く話だな。)

「恐らく時代が進めばその偏見は無くなると思いますよ。」

「どういう、ことですか?」

「近い未来、偏見がなくなるということです。確定はしていませんがね。」

「偏見がない世界になると、良いですね。」

(ティアから授けられた権能全てを知る者(オールノー)で未来を視る限り、絶対とは言えないけど偏見はなくなる。)

全てを知る者(オールノー)は権能を行使した時点から近ければ近いほど鮮明な未来が視える。絶対とは言えないのは、それくらい後の時代ということ。少なくともエドワルドが生きている時代に偏見は無くならないことをさしている。

「で、宿の話に戻りますがどこですか?この領地唯一の魔人専用宿というのは。」


領地の中心地から少し離れた静かな場所。草花が生い茂り、少し古そうな見た目をしていた。

「ここか。中心地よりだいぶ古そうな見た目をしているな。」

宿を囲む低い塀の外で突っ立っていると中から老婆が出てきた。

「あなたが領主様から聞いていたノエル・アザリンス様ですね。お待ちしておりました。ご案内しますのでどうぞついてきてください。」

宿の中に入り、客室へ通された。

(目立つ埃はないし蜘蛛の巣も見当たらない。虫もいなさそうだし居心地は良さそうだな。)

「この部屋でございます。何かございましたらドア横にあるボタンを押してください。」

「ここは1人で回しているんですか?」

気になっていた。一軒家を老婆が1人で管理するのは難しいのだ。

「はい。昔は15人ほどいましたが、今は私1人でございます。皆魔人様を怖がってやめていきました。」

「僕が、怖くないんですか?魔人ですけど。」

「怖くありませんとも。私は過去に魔人様に助けてもらったことがあるんです。助けてくださった魔人様は優しいお方でした。それで魔人は怖くない人だと、思ったんです。」

(たった1人のおかげで魔人全体を受け入れるのか。この店主は。その助けられたとかいう魔人に感謝しないとな。でも、魔人全員が怖くないワケでではない。安易な考えをもっている人間は他に淘汰されやすい。泊めてもらうのだから先に借りは返しておこう。)

「お優しいんですね。あなたにはこれをお渡ししましょう。」

ノエルは懐から刻印が刻まれたブローチを出した。

「綺麗なブローチですね。なんですか?」

(女神の名を出すと面倒だから適当に言うか。)

「僕が生まれた国で1番の御守護り(おまもり)です。善意に甘んじて寄ってくる悪者を退治する力を持っています。」

(神は優しい人間ばかり連れて行くとも言うし、これくらい良いだろ。)

実は老婆に譲渡されたブローチはノエルが女神(ティア)から渡されたモノだった。

(異国の者に渡したとなると怒られそうだけど、まぁ良いでしょ。)

ノエルもノエルで安易な考えを持っていたのだった。

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