ep18 双子
ノエルは双子が生まれたタイミングで外に出ていたため食い止めることができなかった。
「おい!双子が、生まれたっていうのは、本当、ってコイツ!」
床に倒れていたのは聖なる騎士団団長だった。
「ヤンドール様。」
ノエルは双子の母に近寄った。
「体は大丈夫なのか?」
「はい。ご心配なく。それより、さっき面白いものが見れました。」
「面白いもの?」
「女神様が双子に宿って魔法を発動させたんです。生まれたてなのに、凄いですね。」
(女神、というのはおそらくティアのことだろう。あれだけ自分が手を出すのを嫌がっていたのに...いったいどういうつもりなんだ。)
「それは、凄いな。」
〜夢の世界〜
「おいティア!どういうつもりだ!」
ティアは白けた顔をした。
「何かしら?」
「惚けている場合じゃないですよ!双子に憑依するって、しかも生まれたての。負担を考えてください!それに、今問題を起こしたら国のトップが収まりませんよ!」
「それはあなたがどうにかすれば良いでしょう?」
「そういう問題じゃないんですよ...フラガラッハとダズは亡くなりましたけど、アリジオの一族はまだ残っている。アイツらが動きますよ!国の中枢部の連中は既にここの存在を認知し嫌っています。暗殺を自殺と書き換える奴らです。一歩間違えればどうなるか分かるでしょう!」
ティアは半ば憤慨しているノエルをよそに紅茶を飲んだ。
(スカした顔しやがって...)
「頑張ってくださいね。ノエル。」
(今すぐにぶん殴りたい...でもそうしたら僕が消される。だぁ、もう!僕がやるしかないのか。)
「運命の歯車はもう既に回っていますよ。あなたの立場ももう決まっています。あとは、時を待つのみ。」
「わかってますよ、もう。」
何が起きるか分からないが、確実に何かが起こる。それまでどう動けば良いのだろうか...
それからまた春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来て。とうとう数百年の時が過ぎた。
“また”双子が生まれた。
「アーレット。」
「ヤンドール様...」
「知ってると思うが、この国は双子が生まれたらどちらか里子に出さなければならない。どちらかを、俺に預けてくれないか?」
この時点で双子はどちらかを里子に出さなければならないと国で決められていた。
「でも...」
「俺を信じて、任せてくれ。」
ノエルは片割れをアーレットから預かり、知人の元へ届けた。
「頼む。」
「分かった。ワシに任せろ。」
ノエルが片割れを知人に預けたあと急いで村に戻った。
「アーレット。“ガリント”は聞いていたが、もう1人の名前は何だ?」
「この子の名前は、」
“マーガレット”
「マーガレットか。良い名前だな。」
マーガレットが生まれてからノエルは知人と村を往復していた。そうこうしているうちに数年が経ち、マーガレットが歩けるようになった。
「ヤンドールさん!」
「マーガレット。大きくなったな。」
「えへへ。」
その笑顔は、微かにティアに似ていた。ノエルはマーガレットの頭を“撫でようとした。”その時だった。かつてウェスタードで夢に見た子供の泣き声が頭に響いたのだ。
(この、声。あの時の?まさか、)
マーガレットの泣き声?
(近くにマーガレットが泣くほどのことが起きるということか...)
ノエルは数百年村で過ごし愛着が湧いていた。
(ここを守りたい。マーガレットを守りたい。なら、)
ノエルはある日、城に来ていた。聖なる騎士団に入る為だった。
「聖なる騎士団なんてできれば入りたくなかったんだが...マーガレットとあの村を守る為だ。仕方がない。」
ヤンドールが聖なる騎士団に入ると噂で王城は騒がしかった。
(それにしてもうるさいな。)
途中で誰かとすれ違った。
「せっかくだから道連れにしてやろう。」
そう聞こえた。
(誰だ。あの気色悪い根暗みたいなヤツは。)
ノエルは途中で王城の図書室に入った。
「ここ、でかいな。」
ノエルは適当に椅子に座り、魔法で書を出した。
(恐らく、いつかその時になったら誰かが呼んでくれるだろう。題名は、)
“史上最強の一族wについて。”
(かなり題名がダサいがすまんな。それより、疲れたなぁ。一眠りするか。)
ノエル居眠りをした。
ここで、ここで居眠りをしなければ。
夢の世界で目を覚ましたノエル。
「あれ、ここの景色、」
ウェスタード滞在時に見た夢の景色だった。
(ここって、ディアーニだったのか。)
瞬きを一回したら景色は一変した。上空が結界で覆われ、村に火が放たれた。
「なんだ!」
無慈悲な蹂躙。無力な一般人には自分の身を守ることもできなかった。人々の阿鼻叫喚。耳と目を塞ぎたくなった。
(何なんだこれは!これだけ鮮明なら、近いうちに、)
また、誰かの泣き声が聞こえた。
(これは、これは焼き討ち、聖なる選別!)
ノエルは目が覚めた。
「ディアーニが、焼き討ち、早く行かなければ!」
ノエルはディアーニへ転移した。目の前にあるのは過去に夢で見た焼き討ちになった村の姿。
(まさか、あれは、予知だったのか。戯言ではなく本当に、)
鮮血が咲き乱れ、焼けた鉄の匂いがした。誰も息をしていない。
「クソ、間に合わなかった。」
ノエルは魔法で人々の体を結晶にして一つの宝玉を作った。
(土に還すと悪用されかねない。こうして、僕の元にいるといい。)
「誰か、誰かいないか!」
酷く弱く今にも消えてしまいそうなか細い泣き声が聞こえた。
「...マーガレット」
村の奥にある二階建ての家に向かって階段を駆け上がり声の出どころへ向かった。
「マーガレット!」
「ヤンドールさん…」
マーガレットは小さく震え、涙目になっていた。
「父さんと、母さんが、」
ノエルはガレットを強く、優しく抱擁した。
(可哀そうな子だ。全て知ってしまった。分かってしまった。この国は、まだ十歳にもならない幼気な子どもにこのような仕打ちをするようになってしまったのか。嘗てのエアリオスはどこにいったんだ。)
「皆、死んじゃった。死んじゃったんだ。炎に吞まれて、貫かれた。残っているのは私だけになっちゃった。」
「マーガレット、マーガレット。もう、大丈夫だよ。僕が君を守るからね。」




