ep.15 帰還
ノエルは執務室から廊下へ、中庭に出た。
「広いな...えーと、伝書獣に事の旨を刻んで、よし。行ってこい。」
伝書獣はリーシェリウスから飛び立った。
(あそこまでフォニア帝がダズを警戒しているのは、驚いたな。僕もダズを警戒してるつもりだったけど、足りなかったか。)
中庭にあるベンチに座り、空を見上げだノエル。
(早く戻った方がいいのかな。来たばっかりだけど...というかウェスタードでも長居しなかったんだからここにも長くいる必要はないよね。どうするべきか...はっきり言ってウェスタードよりリーシェリウスの方がウチにとって脅威になる。下手に動くのはそれこそ面倒だしなぁ。)
静かに目を閉じて助言を求めにいった。
「というわけで、女神サマ。どうすれば宜しいですか?」
夢の世界でノエルがティアに言った。
「私に聞かないでください。それに、あなたならフォニアくらい小指でヤレるでしょう。」
「そうですけど...そうしたらエアリオスが終わります。」
「冗談です。あなたが帰りたいなら帰ればいいでしょう。幸い、フォニアはそこら辺はわかる人らしいので。」
ノエルは悩んでいた。
「何をそこまで悩む必要があるのですか?」
「何か、何か忘れている気が、っあ、」
ノエルは突然の頭痛に襲われ、その場に倒れた。
「この、頭痛、」
「ノエル、ノエル?」
頭に響いたのは幼い子供の泣き声。
(ウェスタードでもあった、子供の泣き声。)
一体、一体誰なんだ!お前は!
目が覚めたら頭上にエランがいた。
「うっえぇ?!」
エランの頭とノエルの頭が鈍い音を鳴らしてぶつかった。
「いったぁ...」
「え、あ、エラン、ごめんなさい!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それより魘されていたみたいですけど、大丈夫ですか?」
「ま、まぁ。大丈夫です。」
(あれ、なんか手に違和感が、)
ノエルの手の中には先程エランから貰った白銀の扇子が握られていた。
「これ、さっきの扇子?」
(僕懐にしまってから出してないんだけど、何で手元にあるんだ?)
「扇子を早速使ったんですか?」
「いや、使ってないです。これってもしかして、イワクツキだったりします?」
「どう、なんでしょうね。私はこれがどのようなルートを辿ってここに来たのか知らないので。」
「そうですか...」
(なんか怪しい武器だと思ってたけど、やっぱ怪しい武器で間違ってなかったみたい。管理には気をつけないとな。)
「わ、私は行きますね。」
エランは足早に去っていった。
エランは武器庫に向かう前、フォニアに伝言を授かっていた。
「ノエルに白銀の扇子を渡せ。」
「え、本当ですか?」
「あぁ。あの扇子に込められた魔力は特殊でな、運が悪いと使用者に害が及ぶ。害が及んでは我々が害を被るだけ。ならノエルに渡した方が良いだろう。」
「大丈夫なんでしょうか...」
「それに、あの扇子も故郷に帰りたいだろう。」
「故郷...」
「とにかく、何とか言いくるめてノエルに渡してこい。」
(ノエル様、申し訳ございません!)
エランは申し訳なかった。
ノエルはその後、客間に招かれた。
(この白銀の扇子、一般武器じゃなくて魔法具だよね...押し付けられたか。まぁ見た感じ制御して使うのは一般人には難しいし、良いのかな。)
扇子を広げて仰いだ。
(結構涼しいんだな。)
扇を仰いでいると耳に鈴の音が聞こえた。
「誰かいるの?」
鈴の音は頭の中に響いているようだった。
(魔法、か?頭の中に響くような音だから実際は鳴ってないのか?)
“...エル。ノエル。”
誰かが自分を呼んでいた。
「誰?」
“ノエル、ノエル。”
(知り合いかな...だいぶ声が幼い。子供なのは分かるけど知り合いに子供なんていたか?)
“早く、気づいて。手遅れになっちゃう。”
「何が、手遅れになるのかな?よかったら教えてくれないかな?」
“全て失っちゃう。あなたの大切なものが、未来でいなくなっちゃう。今から動かないと絶対後悔する。”
「大切な、もの。」
“今あるものを守りたいなら今から動いて。それが、”
『私から言える事だよ。』
「君は誰なんだ。」
“名前は言えないよ。君は知ることができないからね。”
「僕は全てを知る者だよ?知ることができないことなんて、」
声の主は静かに言った。
“知っても君は何もできない。君ができることは今、動くことだよ。行動するしか君はできないからね。”
(口調が、変わった?)
ノエルが感じた通り、声の主の口調は変わった。
“私は今存在しない。だから君に託した。世界の全てを。君はこれから苦難の道、茨の道に進む。耐えるしかないんだ。ノエル。この世界を、あの神を、頼んだよ。”
声は止んだ。
「あの神って...ティアのことか?ティアの関係者が僕に何の用なんだ...」
(は!まさか、もう用済みどか?)
「そんなわけないか。」
ノエルは心穏やかにいた。
すると部屋の水晶が光り、声が聞こえた。
「ノエル様!ジェインです。」
ジェイン・シャーロズ卿。エアリオスの子爵。後のシャーロズ侯爵家である。
「ジェインか?久しぶりだな。建国以来だよな。」
「はい!ノエル様があのとき助けてくれなければ今の僕はありません!」
建国より少し前、エアリオスになる前の山の奥でジェインは魔物に襲われていた。その襲われていたジェインをノエルが助けたのだった。
「今は、リーシェリウスですよね?良いなぁ。僕はリーシェリウスに行ったことがないから羨ましいです。」
「ジェインならあと何年かしたら侯爵に上がれるだろう。そのときにでも来たら良いさ。」
「上がれますかねぇ。子爵から侯爵だなんて。夢物語ですよ。」
「できるさ、きっと。」
ノエルにはジェインが侯爵になる未来が見えていた。リーシェリウスの帝城は外から魔法で会話できることができない魔法陣が刻まれている。
(リーシェリウスの魔法陣を突破して僕に話しかけてる時点で相当実力を持ってるってことだ。まぁ本人は自覚してないと思うけど。いつか大きくなる。シャーロズの家は。)
〜翌日〜
ノエルはエアリオスへ帰る支度をし、帝城の庭にいた。そこにはフォニア、シリウス、エランがいた。
「本当に、帰るんだな。」
「はい。フォニア帝。」
「お元気で。何か相談があれば、またご連絡を。」
「はい。」
「いつかまた、お手合わせ願います。」
「分かりました。」
遠方転移魔法陣を展開し、ノエルは中に入った。
「また。会いましょう。」
魔法陣はノエルを連れて消えた。
「いつかまた、会えるさ。神がいなくても、人間は皆繋がっている。あえるさ。ノエル。」




