ep.14 会談
「ゔぇっくしょい!」
「ノエル様?如何なされた?」
「誰かが僕の話してる...」
「誰か他人に噂されているとくしゃみが出るってことですかね?」
エランとノエルは帝城の廊下を歩いていた。
「そういえばノエル様はご結婚はされてるんですか?」
「な、なんですかいきなり。」
「それほどお強いなら種は残さないんですか?」
「た、種だなんて...僕は魔人になので種を残す必要はないし、特にそういう予定はないです。」
「ふ〜ん。」
(いやふ〜んってなんだよ。)
「私の話になるんですけど、この役職だからなのか結婚しろってうるさいんですよね。」
「まぁ家の人からしたら早く身を固めてほしいって思いますよ。」
「結婚したら前線に出ることが少なくなる。それが嫌なんですよね。」
「ウェスタードは今戦争でもやってるんですか?」
「今はないですよ。私が嫌なのは後方で支援することなんです。私の能力は後方向きじゃないので。前線で動くのがウェスタードにとって最善、ということになるんですよね。」
「効率重視、ですか。」
「まぁそういうことになりますね。」
(見かけによらずって言っちゃダメなんだろうけどエランが効率重視なのちょっと意外かな。)
「シリウスも親族から縁談がひっきりなしって言ってましたよ。」
(まぁシリウスは顔が良いもんな。そりゃ縁談来るわ。)
「まぁ私とシリウスより陛下のほうが縁談は多いんですけどね。」
「そりゃ多いでしょうね。国の長たる皇帝が独り身なんて民が心配しますよ。」
「本人は気にしてないっぽいんですがね。」
二人が長い廊下を歩いていると廊下の向かい側から誰か一人走ってきた。
「どうした。」
「トワイライト様。“来客”です。」
「“来客”、か。すぐに向かおう。」
「来客って、国賓か誰か?」
「そんな生優しいものではありませんよ。ノエル様、陛下の執務室へ行ってください。」
エランは言葉の終わりに廊下を走ってその場を離れた。
(何かあったのか?まぁ僕が気にしたことじゃないか。)
ノエルは自由に城の中を歩き、フォニアの執務室に着いた。
「あのー、さっきエランが来客?が来たって言って執務室に行ってって言われたんですけど…。」
「来客?あ〜“来客”か。」
「“来客”ですか…おr、私も向かったほうがいいですかね?」
「好きにしたらいい。その代わり、死ぬなよ。」
フォニアの顔は『傲岸な美』ととれるような顔をしていた。
「いや、やめときますよ。エランに任せます。魔力感知で“来客”の確認をしましたがエランで十分、いや城の兵で足りるでしょう。」
「なら良い。」
(仲間思いなんだな…フォニア帝は。)
「で、よくここまで辿り着いたな。ノエル。」
「え、あ、はい。」
「そこの椅子に座ると良い。立ちっぱなしだろ疲れるだろう。」
フォニアはシリウスの向かい側にあるソファーを指差した。
「では、お言葉に甘えて。」
ソファーに座ったノエル。
「ノエル。お前に言っておかなければならないことがある。」
「陛下、今言うのですか?」
「早めに伝えるのが吉だろう。これはある意味緊急事態だ。」
「やっぱりさっきの来客ですか?」
「あれは問題にもならないレベルの埃だ。気にするな。これはもっと深刻な話だ。」
フォニアは改めて真剣な顔をした。
「深刻...」
「エアリオスの、何だったか。ダズ・w・アリジオだったな。」
「ダズがまた何かやったんですか?」
「あいつには気をつける。何やら黒い気配がする。」
「そんなことですか?」
「お前はあいつを”そんなこど”の一言で済ませられるのか。じられん。さっきの国交を立する文、恐らくだが改竄されている。」
「か、改竄!?あれはフラガラッハが自分で書いたやつじゃ...」
「それが違うんだな。」
フォニアはノエルから渡された国交を立する旨を香かれた紙を出した。
「よく見ておけ。」
フォニアは紙に手をかざして魔法を発動させた。
(紙が、器を出してる?)
しばらくして霧は消えた。
「これ、」
「見たらわかるだろうが、これは改竄されたものだ。文字が綺麗なものからお世辞にも綺麗とは言えない文字になり、内容がエアリオスが上ではなく平等なものになっている。あいつの筆跡は覚えているから丸わかりだ。文章の表現もハッキリ言って雑。つまりあいつが書いた文だ。」
「改竄なんて、」
「信じられんようだが事実だ。部下から改竄されている可能性があると言われていてな。念のため確認したらこのザマだ。」
(あれ、もしかして、)
「シリウスも気づいてたんですか?」
「気づいてましたよ。私は改竄されていたことより、ノエル殿が気づいていなかったことに驚いていますがね。」
「不覚。まさか騙されていたなんて。」
「フラガラッハも大概だがお前もお前だな。」
「何がですか?」
「人を疑いもせず純粋に信じ込む。そういう奴は大抵何か失うんだ。」
ノエルには心当たりがなかった。
“アホかこいつは。”
“そうですね、陛下”
念力で会話をしていたフォニアとシリウスだった。
「とにかく、早めに国に戻ることを推奨する。でないと手遅れになるぞ。」
「分かりました...」
「で、後何か悩み事はないのか?」
「そうですね…強いて言えば、学園を創るべきか否か。」
「学舎がないと後進を育てるのに苦労するぞ。自分が何かするときに協力者が欲しいなら学園を創るのが手っ取り早い。」
「デスヨネ〜。しょうがない、創るか。」
「創るなら一人で創れ。」
「一人で創るのは難しくないですか?」
「ダズとやらの手を借りるつもりか?そしたらもっと面倒なことになるぞ。国交樹立の書状を改竄するようなヤツだ。分かるだろ?」
「そう、ですね…仕方がない。一人で創ります。骨は多少折れるでしょうが。」
「ダズの干渉を受けずに一人で創るのは難しいだろう。シリウスを貸す。好きに使え。」
「え、でもシリウスはこのリーシェリウスの宰司ですよ?そんなに手を煩わせるわけには、」
「私は問題ありません。陛下は私がいなくても大抵何とかなりますから。」
ノエルは考え込んだ。
(ダズの手を借りる気満々だったけど、改竄したってことなら借りることはできない。かといって一人で全部できるわけない。ここはシリウスの手を借りるべきなのか?使節団として連れてくることは可能だろけど、いきなり連れて行くのもアレだしなぁ。)
「すぐには決められないでしょうから少しお考えください。何も私がエアリオスに行くわけではありません。あくまでも相談役というだけ。どうしても会って話がしたいときは呼んでください。こちらからも人材を貸し出すことは可能ですので。」
「それなら、力を貸してください。シリウス。」
「お互いの国の利益のため。できる限りの協力を約束しましょう。ノエル殿。」
ノエルとシリウスは握手をした。
「じゃあ僕はフラガラッハに国交の件の連絡に行ってきます。また後で戻ってきますね。」
「期限付きということも忘れるなよ。一番大事だからな。」
「承知いたしました。」
ノエルは執務室から出た。
「...シリウス。私が今何を考えているか分かるか?」
「分かっていますとも。」
「リーシェリウスに仇なす存在は排除しなければならない。それがたとえ懇意にしていた者でも。守らねばならぬものが我々にはあるということを、忘れるなよ。」
「御意。」




