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月の宮は空を駆ける  作者: 紗倉透
ウェスタード編
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ep.1 始まり

「魔女狩りの生き残りが知る真実は残酷です。」の外伝

 ガレットの恩師であるノエルが主人公として描かれます。

 舞台は建国当初のエアリオス王国。ヤンドールになる前のノエルの姿をお楽しみに。

革命は終わった。僕は旧エアリオス南東部、故郷に戻った。。ちょうどいい頃合いなので今までのことを書に記す。初めは、エアリオス建国の日だ。


「女神ティアよ。どうか愚かな(わたくし)の言葉をお聞きください。(わたくし)はエアリオス王国を建国します。どうか、その天上の神殿にて国の守り神になってはくれませんでしょうか。」

エアリオス初代国王であるフラガラッハ・エアリオスは教会で跪きお祈りをしていた。フラガラッハ自身、これで女神が降りてくるとは思っていない。

(やはり無理か。)

フラガラッハが神壇に背を向けた時、教会のステンドグラスが閃光の如く輝いた。

「まさか!」

女神ティアの顕現。

『フラガラッハ・エアリオス。あなたは国王として民衆を率いて上に君臨することを名において誓えますか?』

フラガラッハはティアの前に跪いた。

「はい。(わたくし)フラガラッハ・エアリオスはこの国を統治することをこの名において誓います。この世に理想郷を創ってませましょう!」

『よろしい。では私は天上の神殿にて人の世を見ています。何かやったら全て私に筒抜けですのでお気をつけて。ですが私は手を出しません。かわりに手を出すものを人の世に派遣します。では、さようなら。』

女神はそう言い終わった後、神殿に戻っていった。

そして女神が言った“手を出す者”が

「何で僕なんだ!」

ノエル・アザリンスである。

(確かに僕は優秀な魔法士だ。でも僕は誰かの指示に従うほど暇じゃない。勘弁してくれ。初めて見た時頰を紅く染めなければこうはならなかった!クソ!)

ノエルはティアに一目惚れしたのだ。

(手を出すってどう言う意味だ?出過ぎた人間にバツを与えるとかそういう系か?...考えてもしょうがない。頼まれたことはやるしかないか。下手に動いたら自分が消されかねない。あぁ、やるか。)

ノエルは元々面倒なことは避ける傾向があった。だが相手は神。避けようもんなら自分の存在が無かったことにされかねない。

(最初は何からやるか、というか建国されてからまだ半年だぞ。経済はまだ滞りなく行われているし、あるとすれば教育サービスくらいか?学園、あれは創るのが面倒だ。暫く他の国をまわって制度を学ぶとするか。)

これがノエルが各国を旅した理由だった。

最初に行ったのはウェスタード王国。エアリオス西部に隣する国。農耕業が盛んである。だが内陸国であるため漁業は無頓着。

(内陸で土地が平坦だから農耕に適している、か。土壌を魔法で改良することは可能。だが永遠ではない。長期的な関係を見れば自力でやるのが聡明だろうな。)

「って、何考えてんだ。農耕の話じゃ、」

「そこのお客人!」

(ウェスタードの人間か?)

「我がウェスタードの農耕について興味がおありで?」

「え?あ〜僕は、」

「いきなりなのですがこの国の農耕業の解決策を共に練ってはくれませんか?」

(っはぁぁぁぁぁ!!!???いきなり何だコイツ!話しかけてきたと思えば問題解決だぁ?!巫山戯るのも大概にしろよ。いや、ここで貸しを作っておけば後々便宜を図ってくれるかも、仕方がない。やるか。)

「...僕が今提示することを教えてくれるなら、勿論。」

「はい!私に分かることなら何でもお教えしましょう」

「ウェスタードの教育制度について聞きたい。」

「教育、ですか。私はあまり詳しくないのであとで領主様のところに聞きに行きましょう。」

「感謝する。この国では今何が問題になっているんだ?」

「我がウェスタードでは農耕が主な産業となっています。農耕というのは天候に大きく左右されます。魔法で完全自動化しても良いのですがそれではいつか穴ができる。だから今まで自然に頼って農耕をしてきました。ですがここ最近日照りに見舞われていて作物が育たないのです。」

「日照りの原因は何がわかっているのか?」

「恐らくは世界のバランスが崩れたことによる天候不順と伝えられています。」

“世界のバランスが崩れた”と壮大な話ではあるがノエルには心当たりがあった。

(絶対エアリオスのせいだな。普通一国家ができたくらいでバランスは崩れない。直接的な原因は“神の顕現”。本来この世に存在してはいけない神物が出てきたわけだからそりゃバランスも崩れる。ようは全部アイツ(ティア)のせいだな。)

「あの、解決できますかね…」

「原因の予想はついた。日照りが強いと言うなら弱めれば良い。日差し避けはないのか?」

「日差し避け、ですか。あるにはあるんですけど、」

日差し避けが入っている倉庫へ向かった。

「現在はこのようでして、」

お世辞にも綺麗とは言い難い日差し避け。

(端部でこんな粗末な備品しかない、と。貴族連中は贅沢三昧とかそう言う話か?)

「聞くがこの国の王侯貴族の生活ぶりはどのような感じか知っているか?」

「はい。王都の貴族や王族は面子を保つくらいの豪華さはありますがそれ以外は基本的に質素と聞いております。」

「誰から聞いた?」

「領主様から聞きました。領主様は国王にも面識がある方なので信用できますよ。」

(面子を保つくらいの豪華さ、か。ならそこまで贅沢はしていないことになるな。領主とやらが私腹を肥やしている可能性があるが自分よりも立場の上の人間が贅沢をしていないのだから自分はそれよりも贅沢な暮らしをしようとは思わないだろう。)

「…対策は思いついた。」

「本当ですか!?」

「その前に、名乗ってなかったね。僕はノエル・アザリンス。」

「私の名前はフィリス・イーサンです。」

「じゃあ、フィリス。農業の話ついでに教育の話が聞きたい。すまないけど領主に会わせてくれないかな?」

「承知しました。」

ノエルとフィリスは領主邸に向かった。領主邸は一般民とは違いコンクリートで固められたかのような壁で覆われていた。

(高いとは言い難いが、3メートルか。防御魔法は中級程度、硬質化も中級程度。まあ土地を治める領主ならという感じの造りだな。)

「中へどうぞ。」

フィリスは領主お付きのメイドに話をした後に持ち場へ戻っていった。

(中は清潔、と言ったところか。調度品も一級ではなく二級品。ここの領主は倹約家らしいな。)

「ここが来賓室です。」

扉が開かれた。

(さて、どんな人なのか。)

ウェスタードについて

・国内の主要産業は農耕業

・エアリオス西部に隣する国

・内陸国であるため漁業は行われておらず、輸入頼り

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