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第四十七話 司令と依頼


〜????〜


「失礼致します」


「おや…ヒューイ団長。どうなされましたか?」


「例の少年なのですが…王都に連行しようとしたところ、突然現れた魔族に拐われてしまい…」


「ほう…それはいけませんね」


「いかが致しましょうか?」


「魔族はローゼンベルグ王国の宿敵。そのような者に拐われてしまうなんて大変危険ですから……『勇者』を派遣しましょう」


「勇者を!?流石にそれは…」


「なに、目的はウルカ君だけではありませんから…」


「……なるほど…了解しました」


「これでまた…イリスに一歩近付けますよ…」




〜モーゼスから北西に離れた森林〜


 猛スピードで駆けるユニコーンの背には、賑やかな3人の姿があった。


「急いでよユニさん!!」


「全速前進です!」


「……ユニ…速く…」


「モウ!!コレデモゼンリョクナノヨ!!」


「行き先はマジナで間違いないのよね?」


「あの魔族の飛んでいった方角からして、ほぼほぼ間違いないでしょう」


「……早く行かないと…危険…」


「そうよね…魔族の国なんて、何が有るか」


「……いや…マジナは大丈夫…」


「えっ?でも…」


「モンダイハ…アノコヨネ…」


「エンドさんですか?あの方が居てくれれば安心なのでは?」


「……エンドは…手が早い…」


 フレアとリリィの背後に稲妻が走った。


「アノコトフタリナンテ…ナニガアルカ…」


「ユニさん!!もっと急いで!!!」


「火急的速やかに!!!ハイヨー!!!」


「チョッ!?ケラナイデ!!」


 


〜魔王城〜


 マジナの夜の散歩を終え、魔王城で一夜を過ごした。そして僕は謎の息苦しさに目を覚ます。


「ん……んぐっ…んっ?」


 何か柔らかい物で顔を覆われ、上手く息が出来ない。コレは……


「エ、エンドさん……」


「グガァアアアア!!!ゴオォオオオ!!!」


 龍の鳴き声の様なイビキをかくエンドさんが、僕の顔にしがみつきながら寝ており、エンドさんの胸に押しつぶされていたみたいだ。


「エンドさん!!!」


「グガァアア!!!!!」


「……」


 あまりの目覚めの悪さに耐えかね、僕は神槌を取り出してエンドさんの頭を軽く叩いた。


「グゴァ!?アタタタタ……なんだウルカ…酷いでは無いか…」


「危うく窒息死するところでしたから、やむを得ませんでした!」


「あぁ…すまんなぁ。我は何かにしがみつかないと寝られない性分でな」


「全く…ほら!早く支度してルシェフさんに会いに行きますよ!」


「もう少し寝たいぞ…」


「ダメです!起きますよ!!」


「うぅ…なんかユニみたいだ…」




 支度を終えた僕達は、再び玉座の間の扉の前に立っていた。

 僕は3回扉をノックした。


「入れ」


 中に入ると、そこにはルシェフさんと仕事の手伝いをさせられているアーラさんが居た。


「おはようございまっす!!よく寝れたっすか!?」


「えぇ、とてもよく寝れました」


「我はまだ寝足りないぞ」


「エンドさんはお泊まりにテンション上がり過ぎて寝れなかったんでしょ?」


「朝早くから申し訳ないが、本題に入らせて欲しい。改めて修理を依頼したい」


 そう言ってルシェフさんはアーラさんに指示を出し、裏から一本の剣を取って来させた。

 その剣は禍々しくも繊細な装飾が成された剣だったが傷ついており、その上刀身の半分が折れていた。


「コレは…とりあえず鑑定してよろしいでしょうか?」


「無論、何をしてもらっても構わない」


 僕はその件を鑑定する事にした。


『魔剣サタネル』

等級・神話級

ATK2000


「これは…神話級!?しかも攻撃力2000なんて!?」


「ほう…そこまで見えるとは…鑑定士としても一流のようだ」


「これ程の物を直そうとは…いよいよ戦争でもするつもりか?」


「そ、そんなつもりある訳が!!」


 すると、ルシェフさんはアーラさんの発言を制止した。


「……ウルカ君はどう思う?これを直せば、人間達の国に危険が及ぶと思うか?」


 僕はルシェフさんの質問に素直に答えた。


「それは…あまり考えづらいですね」


「何故だ?神話級の武器を治そうというのだ。軍力の強化以外の理由が見つからんだろう?」


 確かに、これ程の武器を要する理由なんて、国外に攻撃を仕掛ける危険性があるかもしれないけど…


「この剣で戦争を起こそうと思うのなら、ルシェフさんはとっくに戦争を起こしています」


「どういう事だ?」


「ルシェフさんを含めたマジナの軍力は、魔剣に頼るまでも無いと思われます……ルシェフさんの懐の物を見れば」


「なっ!?あ、アンタなんで!?」


「……君の鑑定眼をみくびっていたな。まぁ、転生者ならそれも頷けるか…」


 そう言ってルシェフさんが懐から出したのは、黒光りする拳銃だった。


「それはなんだ?」


「僕の前世の世界にあった兵器…『銃』です」


「じゅう?」


「あれさえあれば魔法が使えない人間でも、離れた場所から人の命を奪うことが出来る」


「なっ!?そんな危険な物なのか!?」


「そうだ。そして、コレは君の前世の世界で扱われていた銃を、魔石の力でさらに改良した物。魔石の魔力が無くならない限り銃弾は切れる事なく、魔力によって強化された弾丸は、龍の鱗すら貫く。


「龍の鱗…そうか。ならば我の鱗でも試してみるか?」


 エンドさんはルシェフさんの言葉に反応し、臨戦態勢になった。


「…試してみるのも一興ですが…明らかに無謀な試験だ。意味がない」


 そう言って銃をしまい、エンドさんも牙を納めた。


「エンドさん、こんな所で喧嘩腰にならないで下さい」


「しかし、龍にも効くなどと戯けた事を…」


「オヤツ抜きにしますよ」


「魔王、話を続けろ」


 不服そうだったエンドさんが、まともに話せる状態になったので話を続ける。


「そもそも、マジナはこれを使って戦争を起こすつもりは更々無い」


「まぁ、それもそうか。敵対心を持っているのは人間の方だからな」


 僕はルシェフさんとエンドさんの会話に違和感を覚えた。

 まるで魔族は比較的友好的で、人間の方が敵対してる?なんだか引っかかるやり取りだったが、まずは依頼の話を済ませようかな。


「改めて、軍事力としては必要の無い魔剣を、何故わざわざ僕を呼び寄せてまで直したいのですか?」


「それは……出来れば控えさせてもらいたい」


「虫のいい話だな。そんな物引き受け訳…」


「お引き受けします」


「そうそう引き受け……って何!?」


 何か言えない事情がありそうだが、荒事に使われる心配は無さそうだし、引き受けても問題ないだろう。


「ありがたい…相応の謝礼はさせてもらう」


「そういうのは大丈夫です。その代わり…」


「その代わり?」


「無事に修理が完了したら、依頼をした理由、改めて聞かせてもらえませんか?」


「…わかった、約束しよう」


 約束を取り交わし、僕はクリエイトを発動した。


『魔剣サタナスの修理』

必要素材

・魔石(高純度)

・黒死竜の牙


「魔石は手持ちの幻魔石で代用できそうだけど…黒死竜の牙か…」


 すると突然アーラさんが声を上げる。


「ここここ、黒死竜っすって!?!?」


「そんなに危険な生き物ですか?」


「我ほどでは無いが、常に身体の周りに瘴気を漂わせており、近付いて呼吸すると体内を蝕まれ、人間や魔族のような矮小な生き物は一瞬で命を落とす」


「あんな奴、マジナでも倒せる奴は居ないっすよ!!」


「エンドさんなら大丈夫なんですか?でしたら…」


「あぁ…死にはしないのだが、どうもあの匂いを嗅ぐと我はクシャミが止まらなくなってなぁ…仕留めるどころでは無くなってしまうな」


「じゃあまずはその対策かな…」


「何か策が有るのか?」


「多分行けると思うけど…ルシェフさん、どこか場所をお借りしても良いですか?」


「城内に研究スペースがある。アーラ」


「はい!ご案内するっす!!」

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