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第四十一話 澱む心と黒い獣

バンロック地帯のある所


 息を切らして走るキリオ。


「ハァ…ハァ…まさか…あんなに強い上に幻獣まで手懐けてるなんて…ありえねぇ……ありえねぇ…力も…女も……あんなガキに俺が負けるなんて……ありえねぇ……ありえねぇ!!!」


 すると突然、キリオの目の前に黒いマントの謎の男が現れた。


「ひぃ!?な、なんだ!!お前もアイツの…」


「良いぞ……」


「あ、あん?…」


「嫉妬…憎悪…溢れんばかりの負の感情…まるで…あの頃の…」


「な、なんだテメェ……」


 薄気味悪く笑うその男に不信感を抱くキリオ。


「力が欲しいか?」


「あ?な、なんなんだよ…」


「欲しいよなぁ…見返したいよなぁ…周りの人間を…自分をコケにしたアイツを!」


 その言葉でウルカの姿を思い浮かべたキリオ。


「………あぁ、欲しいよ……ギルドの奴らも…幻獣も……あのクソガキも纏めて捻り潰せる力がよぉ!!!」


「良いだろう…その心意気…買ったぞ!」


 突然マントの男が懐から何かを取り出し、キリオの胸に押し当てた。


「ぐがっ!?!」


 男が取り出したそれはキリオの胸に触手の様なものを突き刺してしがみつき、何かをキリオに送り込んだ。


「ぐ、グアァアア!?!?!!?」


「さぁ!!溢れんばかりの負の感情で、その力を我が物にしてみせよ!!!」


「ア、ガガ、コ、コロス…クソ…ガキ……コ…ロス!!!!!!」


「あはははっ!!!良いぞ!!コレは成功だ!!!!」




〜獄炎火山 洞窟入口〜


 依頼を終えた僕達は、無事に獄炎火山を出られ、そこでも僕は幻獣のみなさんの事で質問攻めにあっていた。


「なぁなぁ!幻獣って何食べてんだ?」


「いや、それ僕じゃなくて直接本人達に聞いて下さいよ。だいたいゴーガンさんはそれ聞いてどうするんですか?」


「しかし、伝説の幻獣様の生態は私も興味があります」


「アルシオンさんまで……何を食べるっていうか…ユニコーンさんは野菜や木の実、キノコが好きで、レヴィアタンさんは魚が好き…ですかね」


「なんだウルカ。お主コイツらにメシでも作っているのか?」


「そうよ〜ウルカくんの料理は絶品なんだから」


「……宮廷料理人並み……知らないけど……」


「ほぉ!それなら是非我にも食させてもらおうか!!」


「虫歯治ったばかりでしょ。しばらく甘いものは禁止よ」


「グゥッ!?」

 

 やっぱりユニコーンさんは二人のお母さん的な立ち位置なんだな。


「ウルカくんの作るデザート……間違いなく宮廷料理人を超えています」


「ウガァッ!!」


「リリィさん、煽らないでください」


「理由はどうあれ周辺を荒らした上、ウルカくんに怪我をさせたんですから、このくらいは妥当です」


 少し不機嫌そうなリリィさん。


「ま、まぁ良い!そもそも我は甘味よりも肉だ!ウルカよ!とびきりの肉料理を馳走せい!!」


「はぁ…また家が騒がしくなる………!?」


 静かなスローライフが遠く霞んで見えてきたその時、異様な気配を感知したと共に。隊列の前方がざわつき始めた。


「な、なんなんだよアイツ!!?」


「どうかしたのかな?」


「ゲオルドさん!!」


「あぁ…ゴーガン、アルシオン」


「了解だ!」


「承知しました」


「僕も行きます!!」


「え、な、何!?」


「わ、私達も行きます!」


「お二人はここで待っていて下さい!」


「この気配…何が起こるか予想がつかないわね」


「……私達も……2人と一緒…」


「ありがとうございます!」


 ユニコーンさんの言う通り、これは尋常では無い。魔力の気配だけならもしかしたら…。


「我はウルカ達についていこう。メシの約束を反故にされては敵わん」


 異変の元凶と思しき場所へ、僕、ゴーガンさん、アルシオンさん、エンシェントドラゴンさんとで向かう。



 気配の方へ向かうと、そこらじゅうに火が燻った跡が有った。


「なんなんだこれは……アルシオン!」


「大きな声を出さないでください。コレは恐らく落雷の跡。つまりは…」


「雷魔法だな。しかもこんなドデカイ物を何発も。それを……彼奴がやったのか」


 みんなの見つめる先には、禍々しいオーラと怪しい眼光の男が居た。


「……キリオさん!?」


「これは…一体どうなってんだ?」


「ヨォ!!マタアッタナクソガキ!!オマエノオカゲデ、オレノボウケンシャジンセイハオワリダ!!!セメテウサバラシサセテモラウゼ!!!」


「憂さ晴らしだぁ?何言ってんだ」


「遅かれ早かれ貴方の悪事は露見していたでしょう。きっかけがウルカくんに過ぎないだけで、全ては貴方の自業自得です」


「…ウルセェ…ウルセェウルセェ!ウルセェエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」


 キリオさんが悍ましい雄叫びをあげると、その身は禍々しい雷で包まれた。


「ウルカよ、あの童の胸をよく見てみろ」


 エンシェントドラゴンさんに言われて見ると、キリオさんの胸に輝く物が埋め込まれている。


「あれは……魔石!?」


「恐らくアレがあやつの魔力を吸い上げ、蓄えて増幅した魔力でこの様な魔法を何度も打ち続けているのだろう」


「そんな事が出来るんですか!?そもそも人間に魔石だなんて……」


「そうだ。本来魔石は我の様な魔獣や魔族の魔力と生命の根源、言わば第二の心臓。逆に言えば魔石が無ければ我は生きる事が出来ない。そんな物を魔石無しでも生きられる人間や亜人が身体に取り込めば……器以上の生命力によって身体はメチャクチャになるだろう」


「そ、そんな……だけどキリオさんは!」


「しかし、魔力を操る根幹は精神力。あやつの嫉妬や憎悪の類が、無理矢理命を繋ぎ止めておるようだな。更には魔石の能力を暴走させて、ハッキリ言って魔力量だけなら我を上回っておる…これは厄介だな」


「どうすればいいんですか!?」


「胸に埋め込まれた魔石を取り除けばどうにかなるだろうが、それがあやつにどんな影響をもたらすかは我にもわからん。それに万が一取り除く前に魔石が砕けでもしたら、まさきに蓄えられた魔力が一気に体中に巡り、酷い暴走した上で命を落とす」


「そんな……」


 どうすべきか考えていると、エンシェントドラゴンさんは不思議そうに尋ねる。


「わからんな。お主を亡き者にしようとした童を助ける義理が有るのか?魔力量が膨大とはいえ、我が本気を出せばあやつを魔石ごと塵にする事も出来るぞ?」


「そ、そんな事しなくて大丈夫です!例え危害を加えられたとしても、命を奪って良い理由にはなりません」


 エンシェントドラゴンさんは溜め息を溢した。


「甘いなウルカは…しかし、益々気に入ったぞ!あやつを助ける手助けをしてやろう!」


 快活に笑うエンシェントドラゴンさんが、僕の隣で構えた。


「先ずは動きを抑えましょうか…」


 アルシオンさんが弓を構えた。


『影縫い』


 アルシオンさんが放った矢はキリオさんの影に突き刺さり、キリオさんが動きを止めた。


「グゥッ!?クソガァア!!!」


 好機を逃さんとゴーガンさんが後に続く。


『鬼神断』


「ウォラァア!!!」


「チッ…ウゼェンダヨォオ!!」


 キリオさんは無理矢理アルシオンさんのスキルを引き剥がし、切り掛かっていくゴーガンさんに向かって手をかざした。


「グッ!?ヤベェ!!」


「シネェエエエ!!!!!」


 キリオさんは強大なドス黒い雷魔法でゴーガンさんのスキルを打ち消し、そのまま追撃をかけようとする。


「調子に乗るな小童っ!!!」


 キリオさんの魔法を押し返すようにエンシェントドラゴンさんも雷魔法を放つ。


「ジャマスンナァ!!トカゲエェエエエ!!!!!」


「くっ!……」


 ほとんど互角の魔法のぶつかり合いは、お互いの魔法を打ち消して終わった。


「ウルカよ…前言撤回だ」


「えっ?…どうかしましたか?」


「彼奴の魔力…下手をすれば我を超えておる。我の力を持ってしても簡単に息の根を止めることはできん。しかし、裏を返せば彼奴が自らの魔力で壊れるのも最早あと数分と言ったところか…」


「そんな…」


 僕がどうしたものかと悩んでいると、エンシェントドラゴンさんは僕の頭にポンと手を乗せた。


「案ずるなウルカ。手助けすると言った以上、彼奴をみすみす死なせたりはしない!」


「俺達も手を貸すぜ!あんなんでも同じギルドの仲間だ!」


「ドラゴン様にとっては微力どころの話ではありませんが…」


「いえ…ありがとうございます!みんなで力を合わせて、キリオさんを止めましょう!」


 僕たち四人による協力戦が始まった。

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