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第三十九話 怒れる古龍と禁断の果実


 怒り狂った様子のエンシェントドラゴン、その前に立つのは僕とユニコーンさん、レヴィアタンさんの三人。


「さぁて、どの程度懲らしめてやりましょうか?」


「……我を忘れてる……何かあった……」


「下手に傷つけてしまうのは良くないかもしれませんね…」


「傷つけない程度に懲らしめる……あぁん!面倒をかける子ね全く!」


 ユニコーンさんとレヴィアタンさんは大きな幻獣の姿に変わり、エンシェントドラゴンに立ち向かう。

 まずはレヴィアタンさんがエンシェントドラゴンに絡みつき、締め上げ、ユニコーンさんと僕が身動きの取れないエンシェントドラゴンに突っ込む。


「少し痛いですよ!!」


「オシオキ!」


 僕の槌とユニコーンさんの角がエンシェントドラゴンの鱗を傷付けるが、瞬時に傷は再生された。


「えぇっ!?」


「グウアァアアアアア!!!!!!!!!」


 エンシェントドラゴンはレヴィアタンさんを掴み、無理矢理引き離して僕らの方へとぶん投げた。


「うわあぁあああ!!?!!?!」


 三人まとめて吹き飛ばされ、僕とユニコーンさんはレヴィアタンさんの下敷きになった。


「………ゴメン……ダイジョウブ?……」


「ワタシハ……ウルカクン!?」


「僕もなんとか…セレーネモスの装備じゃなきゃ、ひとたまりもなかったかも…」


「マッタク…ヤッカイネ!ウルカクン、アワセテ!」


「はい!『森羅共鳴』!」


 僕とユニコーンさんが合わせてスキルを使い、溶岩を突き破った樹木がエンシェントドラゴンを拘束した。


「……コンドハ…ワタシト…」


「はい!『慟哭』!」


 レヴィアタンさんと合わせたスキルによって、大津波を一点集中型で起こし、エンシェントドラゴンに向かわせる。


「グウゥ…ヴァアアアアアアア!!!!!!!!!!!」


 するとエンシェントドラゴンは津波に向かって咆哮。とてつもない風圧と稲妻を吐き出して津波を吹き飛ばし、そのまま体に絡みつく樹木までぶっ壊した。


「マズイ!ニゲテ!!」


 あちこち見境なく振り回される咆哮から僕達は逃げ回った。死に物狂いで逃げ回って、やっと咆哮が落ち着いた時には僕達はもうクタクタになっていた。


「モウ!ナンナノヨ!!」


「……ヤッパリ……コロシテデモトメル?……」


「ま、まだ判断するには…」


「デモ、コンナジョウタイジャドウシヨウモ……」


 するとユニコーンさんの目に気になる物が飛び込んだ。それは、何かの植物のヘタの様な物だった。しかも山積みになっている。


「コレハ…マサカ……ウルカクン!アノコヲ『カンテイ』シテ!」


「え?ど、どうして…」


 僕は言われるがまま鑑定をかける。すると、エンシェントドラゴンが暴れている理由がわかった。


「ま、まさか…それじゃあ!」


「ウルカクンガ()()()()()()()()()()()デ、ナントカナルハズヨ!」


「……あっ!あのスキルですか!」


 ユニコーンさんの意図を組むと、僕はエンシェントドラゴンに向かっていく。それと同時にユニコーンさんは再びエンシェントドラゴンの足元を樹木で抑え、レヴィアタンさんの津波で視界を奪った。


「グ、グオオアアア!!!」


 やっと視界が開けた時、僕はエンシェントドラゴンの目の前に居た。


「見つけた!そこだあああ!!!!!」


 僕が魔力を込めた神槌が、エンシェントドラゴンの大きな牙にぶつかり、大きな音が響く。


「グウオオオアアアアア!!?!?!!!?!」


 エンシェントドラゴンは今までに無い程苦しみ悶え、その後すぐに僕を睨みつけ、飛びかかって来ようとする。


「ギィヤアアアアア!!!!!!!………アッ?」


 エンシェントドラゴンは何か不思議そうな顔をしながら口元を抑えた。


「アッ?エッ?……オォッ!!」


 すると次の瞬間、エンシェントドラゴンは煙に包まれ、その大きな体は一気に小さくなった。


「ふむ!よくわからんが痛みが無くなったぞ!」


 煙が無くなると、そこには小麦色の肌をした金髪の女性が立っていた。


「おい!そこの亜人の少年!!」


「は、はい!」


「お主、我に何かの魔法をかけたのか?」


「は、はい…」


「お陰で助かった!褒めて遣わすぞ!ワッハッハッハッハ!!!」


「………ワッハッハじゃ無いわよ!!!!!」


 ユニコーンさんの怒声が響いた。


「むっ?そう言えばユニコーンにレヴィも居たな。何か用か?」


「暴れるあなたを心配して来てみれば……コレは何!?」


 ユニコーンさんは先程見つけた謎のヘタを指差した。


「むっ!?あ、アレはだなぁ…」


「ジュエルの実よね!?あれ程食べ過ぎるなって言ったのに……あなたって子は!!」


「ゆ、ユニコーン!?待ってくれ!!」


 あっという間にユニコーンさんの膝の上で四つん這いにさせられるエンシェントドラゴンさん。


「ちゃんと反省しなさい!!」


「痛い!わ、わかったと言うのに!200歳を超えたと言うのにお尻ペンペンは勘弁してくれ!!」


 パッと見普通の成人女性二人によるお尻ペンペンの構図は、中々シュールな物だった。助け舟の意味も込めてユニコーンさんに質問をした。


「ゆ、ユニコーンさん!ジュエルの実ってなんですか?」


「あ、あぁ…ジュエルの実って言うのは、獄炎火山から少し離れた『カジュールの森』になる木の実なんだけど……この子は私の言いつけを守らずそれを食べ過ぎたようね」


「食べ過ぎたらダメなんですか?」


「ジュエルの実は、亜人族が口にしたら卒倒してしまう程甘いの」


「えっ!?そんなに!?」


 恐らく一口で血糖値スパイクが起こるほど糖分が多いのだろう。


「幻獣で有ればそんな事は無いとはいえ、食べ過ぎはマズイって言っておいたでしょうが!!」


「だ、だって好きなんだからしょうがな……痛っ!!」


「なるほど…だからか」


 先程ユニコーンさんに言われて鑑定した結果、エンシェントドラゴンさんのステータスには『虫歯』の状態異常が付いていた。つまり今回エンシェントドラゴンさんが暴れていた原因は、『虫歯の痛み』という事だ。

 そして僕は、先日薬の調合で手に入れた『完全洗浄』を使って、エンシェントドラゴンさんの虫歯を洗浄、殺菌したのだ。


「でも、多分歯に穴は空いたままだと思うんですが……」


「それは問題無い。我の再生能力で、鱗や歯の類の傷はすぐに修復されるからな!」


 ユニコーンさんの膝の上でドヤ顔をするエンシェントドラゴンさん。


「じゃあ、虫歯もそれで治るんじゃ…」


「うぅ……小さき者らが関わることだと、何故か再生能力が働かんのだ」


 小さき者って多分菌の事かな?バイ菌が入ると傷の治りが悪くなるのと同じ事なのかな?


「それならユニコーンさんに薬を頼めば…」


「お主!今の状況を見てそんな事が言えるのか!?」


 成る程。注意を無視してジュエルの実を食べまくった事を隠したかったのか。


「だからって人間に迷惑かけたら余計ダメでしょうが!」


「す、すまない!!痛いっ!!」


 人間も幻獣も、隠し事はするもんじゃ無いな。そう思ったその時、頭の中に声が響いた。


(ユニークスキル『テンペスト』をラーニングしました)


 流石に予想はついていた、エンシェントドラゴンさんの牙を『武器』と認識した神槌が、エンシェントドラゴンさんのスキルを覚えてしまったんだろう。


「ところで、ここに来たのはお主らだけか?」


「はい…それが?」


「いや…微かだが、お主ら以外の気配が残っておってなぁ…」


「……あ、そうだった」


 キリオさんの件を忘れていた。今頃は討伐メンバーの前である事ない事言ってる頃かもしれない。恐らく何人かは本気にするだろうけど、まぁなんとかなるだろう。


 僕の胸元で、アルシオンさんがくれたペンダントがキラリと光った。



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