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第三十八話 火山洞窟と雷獣の罠


 獄炎火山、超高温のマグマを囲う岩山の中には、長年の火山活動、地震、魔力の影響により、アリの巣のようなダンジョンと特殊な生態系が生まれた。熱をもろともしない頑丈な皮膚を有する者、マグマを利用した攻撃手段を有する者等様々。

 そんな人を寄せ付けない火山洞窟の入り口に、エンシェントドラゴン討伐隊が構えていた。


「これより、エンシェントドラゴン討伐任務を開始する!道中、様々な魔獣や価値のある鉱物等目にするだろう。相手をするのは構わんが、それ相応の覚悟をしろ!消耗した体では、エンシェントドラゴンとの応戦で緊急事態を起こしかねない!自分の体力、技量を十分理解した上で事に当たれ!」


 死にたくなけれぱエンシェントドラゴンに集中しろという事だとわかっていても、やはり希少な鉱物や素材を目にして、立ち止まらないという選択肢は……


「ウルカくん、気をつけて下さいね」


 僕の心を読んだのか、リリィさんに釘を刺されてしまった。


「それでは攻略を開始する!」


 討伐隊は一斉に洞窟へと侵入した。最前線には剣鬼同盟、最後尾には青眼の一矢が配置され、ギルドを代表するSランクパーティが全体を纏める形になっている。間にいるパーティも実力者揃いの為、途中で現れる魔物に引けをとることは無かった。


 僕はそんな戦いの最中、コッソリと鉱物や珍しい素材を集めていた。


「………」


 リリィさんの冷ややかな目線を感じたところで、僕の採取活動は終了した。




「もうすぐ報告のあった龍の住処だ!全員気を引き締めろ!」


 まもなく到着といったその時。突然洞窟内に煙が充満し、視界を奪われた。


「な、なんだこれ!」


「全員口を覆って屈むんだ!結界魔法を使える者は周りの人間を守れ!」


 僕達のパーティはリリィさんの光の結界で守られたが、突然あちこちに謎の魔法陣が現れる。


「これは……転移魔法!?」


「チッ!トラップに当たっちまったみてぇだ!このままじゃ間に合わ……」


 ギルドマスターの声が途切れると、周りの煙が晴れ、そこは先程とは全く違う場所だった。


「ここは……どこ?」


「どうやら転移魔法のトラップで飛ばされたみたいですね」


 周りに討伐メンバーの姿は無い。しかし、すぐ近くに異様なまでの魔力を探知した。


「ここ……恐らく龍の住処のすぐ近くですね」


「えっ!?嘘っ!!」


「運がいいのか悪いのか……」


 しかし、強力な魔力とは別の存在も察知した。


「おーいっ!!!!誰か!!!」


 声の元に向かうと、そこには傷つき手から血を流すキリオさんの取り巻きの姿が。


「どうしたんですか!?」


「き、キリオの旦那が……エンシェントドラゴンの目の前で!!」


 動揺するその人から話を聞くと、どうやら転移魔法で偶然にもエンシェントドラゴンの目の前に転移してしまい、一時交戦を試みるも歯が立たず、負傷したキリオに逃がされて応援を呼びに来たという事らしい。


「……それ、本当なの?」


「こんな状況で嘘なんかつけるかよ!!」


「しかし、あなた方には前科があります。そう簡単に信用出来る相手では…」


「キリオさんはどこですか?」


 三人の会話を遮るように僕が言うと、フレアさんとリリィさんは驚いた顔をした。


「ウルカくん…まさか、助けに行くつもり!?」


「先日までの件から考えても、彼の発言は怪しい。それに万が一本当だとして、それでも助けてもらおうなどあまりに虫が良すぎる」


「それでも彼等は同じ討伐隊のメンバーです。放っておく事は出来ません」


「ありがとう!!この道のまっすぐ先だ!」


「わかりました、お二人はこの方と一緒に他の方と合流して、この件を伝えて下さい」


「そんな!危険だよ!!」


「ドラゴンと交戦はしません。キリオさんを助けてすぐに戻りますから」


 二人の静止の声も聞かず、僕は一目散に走り出した。

 


 走り去るウルカの後方で、キリオの取り巻きは不適な笑みを浮かべていた。


 


 道を進むにつれ熱気は強くなっていたが、セレーネモスの服が体を熱から守ってくれているようだ。

 細い道を抜けた先には、黒い岩場と真っ赤なマグマが広がる空間、岩場に横たわるキリオさん、そしてその背後には……


「グウォオアアアアア!!!!!!!!」


 金色の鱗に覆われた龍、間違いなくエンシェントドラゴンだ。僕の気配に気付いたのか大きな鳴き声を上げる。

 僕は急いでキリオさんのそばに駆け寄った。


「キリオさん!キリオさん!?」


 数ヶ所大きな怪我をを負っていたが、何度か声をかけるとゆっくりとこちらに顔を向けてきた。


「キリオさん!」


「うぅ……」


「肩を貸します!早く出ましょう!」


「す、すまねぇ……助かった…」


 僕の肩にもたれたキリオさんは不適な笑みを浮かべた。


「ほんと…バカで助かった」


 その言葉の後、僕の両足に鋭い痛みが走った。


「…っ!?」


 足元を見ると何かで切り付けられた様な傷、そしてキリオさんの両手には短剣が握られていた。


「不意の転移トラップで龍の前に飛ばされ、助けに来た他のメンバーと交戦するが惜しくも敗走。命からがら逃げ延びて、涙ながらにお前の無念と惨状を仲間に伝える。後は鼻に付くSランクの連中にでも任せておけば、周りは俺を「少人数で龍と交戦した討伐の功労者」として扱ってくれる……そうすりゃ俺もSランクに……ケッケッケッ!!最高だろ!」


 地面に這いつくばりながらキリオさんの下品な笑い声を聞いた。


「安心しな!お前の死は無駄にしねぇよ。俺様のSランク昇格の糧になるんだからな!!」


 キリオさんは高笑いしながら僕を置き去りにした。

 

 僕も…ここまでか…………なんて事はなく


「はいはい、痛いの痛いのとんでけ〜」


「…露骨に子供扱いしないでくれます?ユニコーンさん」


「………間違いなく…私達より子供……」


 僕のそばには、先程まで姿の無かったユニコーンさんとレヴィアタンさんが居た。ユニコーンさんの霊薬の力で僕の足は元通りに治った。


「流石ですね、ありがとうございますユニコーンさん」


「うふふ、どういたしまして」


「……これからどうする?……」


「うーん…ここまでは想定内なんですけど……ここからは未知数で…」


 僕らは怒り狂っている様子のエンシェントドラゴンを見上げた。


「お二人から対話は出来そうですか?」


「う〜ん…こんなに怒ってるこの子は初めて見るわ」


「……何度か念話してるけど……反応ない……怒り…憎しみ…悲しみ…痛み…負の感情でグチャグチャになってる……」


「やっぱり…魔力の暴走?」

 

「どうでしょう…セレーネモスの時みたいな魔力の乱れは感じられないわ」


「……とにかく……対話不能……」


「となると……」


「作戦Aの『お話仲良し大作戦』は無理ね」


「…その作戦名、まだ活きてたんですね」


「……じゃあ…作戦B?…」


「えぇ…作戦B『荒っぽくても大人しくしてもらおう』決行ね」


 ちなみに作戦名を決めたのはフレアさんだ。

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