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第二十五話 森の主

 パラリアの森を進んでいくとフィールドサーチに数体の魔物の反応が有り、リリィさんが足を止めた。


「目標が近い様ですね…」


「えっ?なんでわかるんですか?」


「見えますか?風に漂う黒い砂の様な物」


 周りを見ると、確かに目に見えるか見えないかぐらいの細かい黒い粒が舞っていた。


「コレは『ブラストモス』の鱗粉です。ウルカさん、風魔法は?」


「多少は…」


「定期的に風で鱗粉を払って下さい。ブラストモスの鱗粉は、熱を加えると爆発するので」


「爆発!?」


「ブラストモスはこの爆ぜる鱗粉を使って獲物を仕留めるんです。更にこの鱗粉はブラストモスの生態において非常に重要な物なのです」


「どういう事ですか?」


「ブラストモスは成長過程で天敵に襲われない様に、非常に頑丈な繭を作り、その中で成体へと成長します。繭は自力で出るのも困難な程頑丈な為、鱗粉を使って爆発を起こして外に出るのです」


「……もしかして今回狙ってる素材って…」


「ブラストモスの出てきた繭です。あれほど頑丈な糸の素材はそうありません。爆発の影響で所々焦げてるのが玉に瑕ですが」


 まぁ、その辺は加工の腕の見せ所か…そんな事を考えていると、フレアさんが隣で震えていたり


「ブラストモス……黒光りする体、膨らんだお腹、大きな目……うぅ…想像しただけで寒気が」


「想像も何も、もう目の前に居ますよ?」


 気がつくと10体近くのブラストモスが目の前に並んでいた。


「…………」


「ふ、フレアさん?」


「あら、動かなくなってしまいましたね」


「大丈夫なんですか!?」


「ただの気絶でしょう。それよりも、目の前のターゲットに集中しましょう!」


 するとブラストモスは不自然にに羽を翻し始めた。


「ウルカくん!風邪魔法を!」


 言われた通り咄嗟に風魔法で体を包むと、ブラストモスが羽と羽をカチカチとぶつけ合わせて火花を起こし、周囲に撒いた鱗粉が次々と爆発した。


「『バタフライステップ』」


 黒煙を突き破るように突進し、リリィさんは目にも留まらぬ速さでブラストモスの間合いに入り、高速の連撃で倒していく。


「よし!僕も負けてられないな!『飛翔脚』」


 僕は空を飛ぶブラストモスの群れの真ん中に入った。


「う、ウルカくん!突っ込み過ぎです!」


「『旋刃』」


 ブラストモスの群れを一気に薙ぎ払い、地面に落とした。


「なるほど…やはりフレアが目にかかるだけありますね…しかし私も負けられません!『ホーネットスティング』」


「『エリアルトラスト』」


 地面に落ちたブラストモスを僕が上から、リリィさんは下からトドメを刺す。


「ふぅ、やはり我々なら楽勝でしたね…一人抜けていても」


 フレアさんは未だ直立不動だ。


「フレアさん!しっかりして下さい!」


「ふぇっ!?……はぁっ!?ぶ、ブラストモスの死骸が…こんなに……きゅう」


「フレアさん!!」


 再び意識を手放したフレアさんを起こし、討伐証明の素材を集める。


「さて、それでは繭を探しましょう。恐らくこの木の辺りに…やはり有りましたわ」


 戦闘をした場所のすぐ側にある大きな木の下に、黒く硬い繭が見つかった。僕は繭を軽く指で触ってみた。

 

「これがブラストモスの繭…一本一本細い糸なのに鉄のように硬い。加工は難しそうだけど、これなら…」


「目的完了ですね」


「な、なら!とっとと帰っちゃお…」


 その時、ヒィイイイン!!と甲高い何かの魔獣の鳴き声が聞こえ、同時に突風と謎の威圧感が僕らに襲いかかった。


「な、なんだこれ……」


「わかんないけど…多分かなりヤバいよ!!」


 すると、リリィさんが僕とフレアさんの背後に何かを見つけて硬直した。


「あ……あ、あれ…」


 恐る恐る振り返るとそこには、神々しいオーラを纏い、額に歪な一本の角をつけた馬の様な生き物が居た。



「ユ、ユニコーン………」


「何故こんな場所に…」


 二人とも驚きと恐怖で身動きが取れなくなっている。


「ニンゲンガ……ナンノヨウ……ジャマシニキタノ?…」


 頭の中に直接響くような声。恐らくユニコーンと呼ばれた魔獣の声だろう。取り敢えず僕は普通に会話を試みてみた。


「邪魔?邪魔って何の事ですか?」


「ジャマサセナイ……ワタシガ……アノコヲマモル!」


 とりつく島もなさそうだ。とにかくなんとかしなくてはと神槌を構えると、ユニコーンは驚いていた。


「……ソレハ…」


 そう言えば神槌にはユニコーンの角が使われている。まさか……


「ソレ……アノヒトガトッタ…アナタ……ナニモノ!!」


 ユニコーンが角を振り上げると、地面が大きな音を立てて割れ、あちこちの地面が大きく突き出した。


「うわあぁぁ!!ちょ、ちょっとヤバいよぉ!!」


「!?、ウルカくん!!前です!!」


 地面の動きに気を取られていると、ユニコーンが目の前まで突進してきた。咄嗟に神槌を構え、なんとか直撃は免れたが、あまりの衝撃に後方へと吹き飛ばされた。


「ぐぅっ!!」


「ウルカくん!!」


「だ、大丈夫です!それより…!!」


 ユニコーンは僕だけに向かっており、二人の事は相手と思っていない様子だ。


「狙いは僕だけの様です!二人は今のうちに逃げて下さい!!」


「そんな事…出来るわけないでしょ!!リリィ!」


「はい!」


 二人揃ってユニコーンに飛びかかるも、恐らくユニコーンの放った風魔法によって押し戻されてしまった。


「フレアさん!リリィさん!」


 そんな時にもユニコーンは僕をめがけて突進する。今回はなんとか神槌で捌いたが、それでも反撃する余裕は無い。


「ヒイイイイイイイイイイン!!!!!!!」


 ユニコーンの咆哮と共に地面から樹木が壁になるように隆起し、フレアさん、リリィさんと完全に隔離されてしまった。


「ウルカくん!!!」


 壁の内側にいるのは僕とユニコーンだけ。


「コタエナサイ……ドワーフノコ……ソレヲドコデテニイレタノ……」


「これは偶然手に入れただけなんです!」


「ウソヲツカナイデ!!!」


 ユニコーンは一気に距離を詰めて猛攻を始めた。僕はユニコーンの攻撃に集中して何度も捌いた。しかしどれだけ続けても反撃の機会が無い。


「アナタハ……アノヒトヲ!!」


 最後に強烈な一撃を放ち、捌ききれずに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。


「ぐっ!!……どうすれば……アレ?」


 勢い良く叩きつけられたのに痛みがない。しかも、体の内側でみるみると力が溢れ出すのを感じた。


「どうなってるんだ?……でも、チャンスかもしれない!『ホーネットスティング』」


 一気に間合いを詰めて放った一撃は、ユニコーンをよろめかせた。


「ナニ!?」


 ここで畳み掛けるように攻撃を繋げた。先程とは打って変わって、互角の打ち合いをする。


「ナゼ……ドウシテ…」


「はぁっ!!」


 再びユニコーンをよろめかせ、そのまま膝から崩れた。この隙に何か無力化出来たら良いんだけど……そんな事を思いながら、ユニコーンが立ち直す間にスキルウィンドウを読み返すと見慣れないスキルがあった。こんなのあったっけ?と思ったが、中々都合の良いスキルのようなので行使する事にした。


「イイカゲンニシナサイ!……ドワーフノコ!!」


「『森羅共鳴』」


「……ヘェ?」


 スキルを行使すると地面から太い木の蔓が飛び出し、ユニコーンを拘束して宙に浮かせた。


「ナ、ナンデ…コノワザ……」


「さて、この後どうするかは考えてないんだよなぁ…一応討伐しないとマズイのかな?」


 僕の言葉にビクッとしたユニコーンは突然光に包まれ、なんとその姿を変えてしまった。


「ちょ、ちょっと待ってぇ!降参!私の負けで良いから!とにかく、()()()だけは見逃してぇ!!」


 そこに居たのは人間の女性の姿をしてるが、頭にはツノ、お尻には尻尾が生えている。長い白髪に垂れ目、見た目や背丈は一般的な成人女性ぐらいだが、胸の球体はフレアさんに負けず劣らず……というより上回ると言った具合だ。恐らく魔法の類で、ドレスの様な服も着ている。先程までの威圧的な風情とは打って変わってほんわかした感じに見える。


「まぁ…勝ち負けは良いんですけど、あの子って言うのは?」


「へっ?あの子を追って来たわけじゃ無いの?なんだぁ…そうなら先に言ってよぉ」


「説明も何も…話す以前に襲いかかって来るから」


「………と、とにかく!もう降参だからこれ解いてぇ!」


 言われるがままに拘束を解いた。


「はぁ…良かっ……てうわぁっ!!!」


 何故かユニコーンは僕の上に落ちてきて、下敷きにした僕の顔を球体で押し潰した。


「だ、大丈夫!?ドワーフのボク?」


 これはこの世界のお決まりなのか?

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