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第二十話 秘密と友情


 ギガントボアの騒動から一夜明けて、僕とフレアさんはセルジアの冒険者ギルドに居た。神妙な面持ちで黙り込むゲオルドさんの前に立たされる僕とフレアさん。そこにノックの音が。


「入れ」


「失礼します」


 入って来たのはキリエさんだった。


「素材を確認した結果、超大型でステータスもかなり高いようでは有りますが、通常のギガントボアとの大きな違いは見受けられませんでした」


「あぁ…やっぱりか……魔石の無い魔獣なぁ……」


「…信じ難いかもしれませんが、本当に他の個体とは大きく違っていて…」


「いや、それは疑っちゃいねぇよ」


 ゲオルドさんはしばらく考え込んでから、再び口を開いた。


「実は、今回の件と似たような話が方々のギルドでも上がっててな 」


「えっ!そうなんですか!?」


「与太話と疑ってはいたが、まさかモーゼスの森でも出てくるとはな…これはもう無視できんな」


 ゲオルドさんはまた考え込み、ふと気づいたように話し始める。


「あぁっ!そういや試験依頼だったな!色々あって忘れかけてたぜ……フレア」


 ゲオルドさんはフレアさんにカードを手渡した。


「これでお前も一端の冒険者って事だな」


「や…やったよおおぉ!!!!!遂にDランク冒険者だよおおぉ!!!」


「それからウルカ、お前もだ」


 ゲオルドさんは僕にもDランクのカードを手渡して来た。


「えっ!?な、なんで僕にも?」


「今回の一件、主役はフレアだが立役者はお前だろ?だったら無視するわけにいかん」


「で、でも…」


「前にも言った通り、お前ほどの実力者をほったらかしにはしておけないんだ。早いとこランクを上げてもらった方が助かる。それに…今回の件もある。これから何が起こるかわからない。お前には是非とも協力してもらいたい。頼めるか?」


 正直、冒険よりもスローライフを楽しみたいのが本音だけど…また今回みたいな事が起こって、街の人達に危害が加わってしまうかもしれない。


「……わかりました。Dランクカードを頂戴します」


「よろしく頼むぞ」


「あはは!結局追いつかれちゃったね!でもなんか嬉しいよ!」


 これからの不安を吹き飛ばすようなフレアさんの明るい笑い声が響く。




 ギガントボアの一件からはや数日。危険と冒険の日々が続くと思いきや、そんな事は無くて至って理想通りの異世界スローライフを満喫していた。

 今日の朝食はコカトリスのスクランブルエッグと自家製ギガントボアベーコン、トーストと野菜スープだ。


「う〜ん……やっぱりスクランブルエッグにするにはマンティコアよりもコカトリスだなぁ…何故かフワッと仕上がるんだよねぇ…ギガントボアのベーコンも、即席燻製器で作ったけど中々の出来だし、野菜スープにも少し入れると、塩とペパの種だけでも奥深い味わいに……」


 ブツブツ独り言を呟きながら朝食をとっていると、勢い良くドアの開く音が。


「ウルカくーん!!!遊びに来たよー!!!!」


 思わず野菜スープを吹き出してしまった。


「アハハ!ごめんねご飯中に!!」


「ゴホッ!ゴホッ!!……い、いいえ…大丈夫です。それにそろそろ来る頃かと思ってましたから。どうぞ、おかけ下さい」


「う、うん……」


 そう、ここしばらくは同じ事ばかりを考えていた。フレアさんに真実を伝えるべきか否か。そんな中でもフレアさんはちょくちょくウチに遊びに来ていた。前回のギガントボア討伐の報酬に加え、Dランクの高難度依頼をこなし、良い薬を買えるようになったため、お父さんの体調も良くなっているらしい。なので安心してウチに来ては朝ご飯を食べ、昼ご飯を食べ、夜ご飯を食べ、オヤツを……まぁそんな純粋な姿を見た上で、僕は決意を固めた。


「実は、フレアさんに伝えたい事があるんです」


「!!……そ、そうなんだ………うん!なんとなくわかってたよ……」


「えっ!?」


 まさか…僕が転生者だと気付いてた?


「い、一応わたしもそれなりに…見た目とかスタイルには自信あるし……これだけ一緒の時間過ごしたら……」


「あ、あのぉ……多分フレアさんの考えてるような事ではありません……」


「えぇっ!そうなの!?は、恥ずかしいいぃ!!!」


 顔を真っ赤にするフレアさんを見て、よくわからないけど、よりこの人を信頼してる自分が居た。


「フレアさん……これから話す事は、現実味の無い御伽話に聞こえるかもしれません。信じてもらえなくても仕方ないと思いますが、間違い無く真実を話します。どうか驚かないで聞いて欲しいんです」


「う、うん…わかったよ」


 僕は一息ついてから、真実を話し始めた。


「実は僕……元々この世界の住人じゃないんです」


「……えっ?…」


 呆気に取られているフレアさんに対して、話を続ける。


「僕は元々地球と言う、ココとは違う世界の星に住んでいました。それがとある事情で命を落とし、女神様の力によって、この世界に転生したんです」


 呆然としてたフレアさんが、ハッと何かに気づいた様に喋り出す。


「も、もしかして…ウルカくんの作る、見たことの無い道具とか料理とかって……」


「僕が元いた世界のものです……」


「じゃあ!私の剣を直せたのも!?」


「それは……それについても説明します」


 ヴォルカヌスの神槌を取り出し、説明を始める。


「コレは『ヴォルカヌスの神槌』と言って、この家に元々住んでいた方が偶然思いついてしまった神の道具『神器』なんです。コレがあれば、どんなに武器が壊れていても、修復が困難でも、たとえ神様の呪いがかかっていても、修復する事が可能なんです。だけど、無闇に力を使ってしまえば、下手をすれば世界全体に影響を及ぼしてしまう強力な力なんです。実はフレアさんの武器も、すぐに直すことが出来たんですが……あまりに強大な力を持っていた為、フレアさんが…もし力を悪用してしまったらと……疑ってしまい、申し訳ありません!」


 僕はフレアさんに頭を下げた。


「……謝らないで!」


 フレアさんの声に驚き、パッと顔を上げてしまった。


「こちらこそ……ゴメン!!事情も知らずに修理を依頼して、ウルカくんの事……困らせちゃった……でも直してくれたって事は、私の事を信じてくれたんだよね?……私…嬉しいよ!」


 フレアさんの返答に驚き、言葉が出なくなっていた。


「ウルカくんが、転生?したって話、私信じる。ていうかそうじゃなかったら、今までの事に説明がつかないもんね?この事は秘密にした方が良いんだよね?大丈夫!誰にも言わないよ?ウルカくんと私の秘密ね!」


「フレアさん……」


 本当にこの人を信じて良かった。心の底からそう思えた瞬間だった。


「でさ!秘密を守る代わりといってはなんだけど…」

 

 やっぱり何か取引を持ちかけられるのか?


「……これからも異世界の美味しいもの、食べさせてくれないかな!?」


「…………ブッ!…アハハハハ!!!」


 やっぱり心配は無用だったな。これからも大切な友人に美味しい料理を振る舞おう。




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