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第二話 ドワーフの自分

 

 女神様と話した後、目が覚めるとそこは森の中だった。僕は大きな木にもたれて眠っていたようだった。


「ここが異世界か…」


 立ち上がって辺りを見渡すも、人の気配は無く、最近誰かが通った様な感じもなかった。

 少し離れたところに湖があったので、近づいて覗き込み、湖面に映る自分の姿を確認した。


「……誰だ!?」


 ってそりゃそうか、もう前世の自分じゃ無いんだから。

 湖面に映っていたのは、パッと見小学校低学年くらいの見た目で、背丈は恐らく100センチくらいの茶髪で西洋風な顔立ちの男の子が居た。


「背が小さいのはドワーフだからなのか?はたまた単純に子供なのか?」


 とにかく自分の事を知る為にも、まずはステータスを確認してみようと思い、『ステータス』と念じると、目の前にゲームなんかでよく見るステータス画面が現れた。



ウルカ・ファイトス 男 12歳

Lv1

HP 100

MP 100

STR 16

VIT 16

INT 18

RES 16

DEX 56

AGI 21

LUK 45


スキル一覧


創造主(クリエイター)

この世のありとあらゆる物から、この世にまだ無いものまで、どんな物でもレシピを生み出すことが出来る。


『鑑定眼』

目にした物の詳細な情報を確認する事が出来る。


『アイテムボックス』

所持品を亜空間で保管する事が可能。容量は無制限。取り出したい物を念じれば、すぐに手元に出す事が可能。亜空間の中は時間が止まっており、保管した物は劣化しない。


『フィールドサーチ』

半径500m周辺に居る生物、魔物、採取可能なアイテムを察知する。



 12歳って事は、人間で言えば140㎝くらいはあっても良いはずだから、恐らくドワーフの身長はこれくらいで打ち止めなんだろう。

 ステータスはほとんど普通くらいなんだろうけど、物作りの為にDEX(器用さ)と、冗談かと思ったけど本当にLUK(運)が底上げされてるな。あとはスキルだけど…定番の『鑑定眼』『アイテムボックス』『フィールドサーチ』がある。この時点で恐らくだいぶチートなんだろうが、しかし…


「この『創造主(クリエイター)』てやつは、とんでもないチートなんだろうなぁ…」


 思い描いた物は全てレシピ化出来てしまうスキル。材料や技術が必要になるとは言え、悪用厳禁のチートスキルである事には間違いなさそうだ。


「まぁ試しに使ってみようかな、このまま立って考え事をするのもアレだし…『創造主(クリエイター)』!」


 僕は前世で使っていた、()()()()()がウリの家具屋の椅子を思い浮かべながら唱えた。すると目の前が光り、一枚の紙が現れた。


『ベーシックウッドチェア』

必要素材

・木材

・金属製のビス



「おぉ!本当に出た!……でも、金属製のビスなんて用意できないよ……もっと簡単に、この辺で取れるものだけで作れないかな?」


 僕は今思い浮かべたものよりも、もっと簡単で素材集めが楽な物を…と念じながら『創造主(クリエイター)』を唱えた。


『サバイバルウッドチェア』

必要素材

・丈夫な枝

・木の板

・木の蔦


「おぉ!コレなら作れそうだ!『丈夫な枝』と『木の蔦』と『木の板』……『フィールドサーチ』で探せるかな?」


 『フィールドサーチ』を唱えると、周辺で採取可能なアイテムが表示される。


「おっ!ちょうど良い具合に必要素材が集まってる場所があるな!」


 僕は『フィールドサーチ』で表示された場所に向かい森を歩く。歩いてる最中でも明らかに前に居た世界とは別物の環境だと不思議と感じる何かがあった。

 目的の場所に到着し、必要素材の採取をした。


「コレだけあれば大丈夫そうだな。早速作ってみよう!」


 先程作り出したレシピを見ながら、椅子作りを始めた。やった事も無い作業の筈なのに、手際よく作業が進み、5分も経たずに椅子が完成していた。


「あっという間に出来ちゃった……ドワーフの種族特性と、前世からの器用さのお陰かな?」


 出来上がった椅子に腰掛けると、ワイルドな見た目の割に中々の座り心地だった。


「うん!出来もいいぞ!コレなら楽しく物作りが出来そうだ!」


 これからのクリエイターライフに胸を高鳴らせたその時、腹の虫も鳴き始めた。


「……何か食べ物を探さないとな」


 フィールドサーチで近辺を調べると『アプの実』という表示が有り、恐らく食べれる物だろうと思い、表示された場所に向かう。辿り着いた場所には、大きな木とそこに成る赤い木の実があった。


「アレが『アプの実』……名前と見た目からしてリンゴみたいな物かな?」


 一応『鑑定眼』で確認してみる。


『アプの実』

大木に成る赤い木の実、中は薄黄色の実で、甘酸っぱくシャクシャクとした食感。一般的な市場にも出回る庶民的な果実。


「うん、やっぱりリンゴだな。そうと決まれば…」


 僕は地面に落ちてる石を持ち、アプの実を目掛けて石を投げる。石は見事にアプの実に命中し、地面に落ちた。


「よし!これも器用さのお陰だな」


 地面に落ちたアプの実を手に取り、早速齧ってみると、口の中に食べ慣れた甘酸っぱさとは若干違う味の果汁が広がった。


「うん!コレはコレでイケるな!」


 空腹の為か、より一層美味しく感じている様で、夢中になってシャクシャクと食べていると、遠くの方でガサガサと物音が聞こえた。


「な、なんだ!?」


 フィールドサーチを使うと、そこには『ファングボア』と表示され、コチラに猛スピードで迫って来ていた。


「コレって…モンスターだよね?……ヤバいヤバいヤバいよ!こっち向かってるよ!どうしよう武器も何も無いよ!な、何か身を守る物を!」


 藁にも縋る思いで創造主を唱えると、一枚のレシピが現れた。


『くくり罠』

必要素材

・木の蔦

・丈夫な枝


「くくり罠って確か猪を捕まえるやつだよな…もしかしたらイケるかも?ってか急がないともう来ちゃうよ!」


 僕は急ピッチでくくり罠を作り上げて、ファングボアの進路に設置した。


「頼む!上手くかかってくれ!」


 茂みの中からファングボアが現れたが、想像していた猪くらいの大きさよりも、2倍も3倍も大きな体と牙を持った魔物が現れた。


「プギィイイイイイイイイイ!!!!!!」

「デカぁぁい!!?!こんなの止まるわけないでしょお!!」


 絶望していると、ファングボアは罠を踏み、後ろ足を取られて動けなくなった。


「グウゥウウ!!……ブゴォ!!」

「えっ?……やった…やったよ!!成功だ!!」


 喜んでいたらファングボアがくくり罠を力づくでブチン!と切り、再びコチラに向かって来た。


「プギィイイアアアアア!!!!!!!!」

「やっぱダメだったあぁぁ!!!」


 突っ込んで来るファングボアに対し、僕は咄嗟に緊急回避。見事避けた直後、ファングボアは僕の真後ろにあったアプの大木にドスウゥゥン!!と大きな音を立てて突っ込む。バラバラと落ちてくるアプの実の中でファングボアは動かなくなってしまった。


「……し、死んじゃった?…」


 鑑定眼でファングボアを確認する。


『ファングボア』死亡

Lv8

大きな牙が特徴のボア系モンスター。牙は武器、皮は防具、肉は食用とされる生活に身近な存在。


「Lv8って……まともに戦おうとか思わなくて良かった……」


 そんな事を思っていると、頭の中にピロロン!と音が鳴り、ステータスウィンドウが目の前に広がった。


ウルカ・ファイトス 

Lv5

HP 300

MP 300

STR 24

VIT 24

INT 26

RES 24

DEX 76

AGI 29

LUK 57


「今ので経験値が入ったのかな?トドメを刺したのはアプの木なんだけど……まぁ罠にかけたしな」


 取り敢えず自分を納得させた。


「格上相手に勝ったからなのか、一気にレベルが上がったな……それにしてもファングボアの体はいろんな事に使えるみたいだし、アイテムボックスに仕舞っておこうかな」


 僕はファングボアの大きな体を、小さな体で無理矢理アイテムボックスに押し込んだ。

 なんとか仕舞い終わったその時、一粒の雫が肌にぶつかるのを感じた。


「雨か?参ったな…どこか屋根のある場所は……」


 フィールドサーチを使うと、少し離れた場所に家屋の様な物が反応した。


「人の気配は無いけど…ちょうど良いから雨宿りさせて貰おう」


 急いで向かっている最中に、雨足はどんどん強まっていた。家屋の目の前に着くとそこは、暫く手入れがされていないであろう家と、その隣に小さく墓石の様な物が置かれており、そこには『グランツ・ローゼンベルグ、ここに眠る』と書かれていた。


「……なんか不気味だなぁ…ちょっと怖いけど、他に雨を凌げる所も無いし……は、入るか」


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