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第十四話 冒険者の格

 武術試験の後、ギルドマスターに呼び出された。何かまずい事をしたかな……そんな不安を抱えながら鍛冶屋を離れ、ギルドマスターの部屋を訪ね、卓越しにギルドマスターと対面する。


「…単刀直入に聞く。お前…何か隠してるな?」


 ギルドマスターの言葉に冷や汗が出た。


「ど、どう言う事ですか?…」


「お前が武術試験の時に見せたスキル。『破砕撃』はハンマーのスキルだし、魔法もお前の年頃でも使える初級魔法ばかり。鍛冶士で魔法も使えるのは珍しいとは言え、無くは無い話だ。しかし……『アクセルステップ』は短刀、『一閃』は剣、『兜割』は大剣、『エリアルスティング』は槍のスキルだ。ハンマーで扱える訳が無い。それに最後、俺の斧がぶっ壊れたのは、お前の連撃によって削られた俺の斧の一番弱ってる部分を狙い、俺の振り下ろす力を利用してお前が一撃を喰らわせたから砕けた。そうだろ?」


 スキルの面はやり過ぎてしまったとは言え、斧を砕いたトリックまで気付いていたとは……流石ギルドマスター。


「で、お前……何を隠してる?」


「そ、それは……」


「……言えねぇってのか?……このギルドマスター『ゲオルド』に」


 凄まじいオーラで威圧するゲオルドさんに、泣きそうになりながらも答えられず苦悩していると、ゲオルドさんが口を開いた。


「……ぶはっはっはっはっはっ!!!!いやぁ悪い悪い!流石に意地が悪かったな!!」


 豪快に笑い飛ばすギルドマスターの姿に、呆気に取られた。


「気にするな。脛に傷のある奴や、口にするのも憚られるような経験をした奴、そんな奴らが仕事を求めて集まるのが『冒険者ギルド』だ。かくいう俺も人様に自慢出来ない様な生き方をして来たクチだ。だからお前がどんな奴であろうと構いやしねぇ。あんだけ脅かして扱いた俺のエモノを焦って直すような奴だ。悪い奴じゃ無い事はわかる」


「あっ……ありがとうございます」


「安心しろ。ギルドの登録は間違い無くやっておく」


 ホッと胸を撫で下ろしていると、ゲオルドさんが続けて話し始めた。


「ただ…本当に信頼できる奴が現れた時は、包み隠さず自分を曝け出した方がいい。そういう奴が一人も居ない世界ってのは…どう足掻いても孤独だ。真の仲間を見つければ、世界が広がるぞ」


 そう言われた時、ふとフレアさんの顔が浮かんだ。まだ会ったばかりなのに、フレアさんに強い信頼感を抱いているのか?


「…はい。わかりました」


「それと、お前ほどの腕なら頼みたい仕事が山程有る。身分証のつもりなのはわかるが、それを持ってるって事は間違い無くお前は冒険者なんだ。出来れば早いとこランクを上げて依頼をこなして貰いたい。そこで特例として、本来Gランクスタートのところを、Eランクのギルドカードを発行してやる」


「えっ!?そんな事いいんですか!?」


「俺のエモノをぶっ壊しといて、よく言うぜ」


「あれはゲオルドさんが手加減したから…」


 僕の言葉にフッとほくそ笑むゲオルドさん


「そこに気づける時点で、お前は他の冒険者とは一線を画してる。そんな奴にちまちまGランクの仕事をさせておくのは勿体無い。なるべく早く高ランクの仕事をしてもらった方が、ウチとしても助かるんだ」


「でも、他の冒険者さんから文句が…」


「ここのギルドにいる奴は気のいい奴ばかりでな。特にお前みたいな若い奴にはとりわけ甘いから大丈夫だろ。それに、文句言う奴には『俺と戦いながら斧を砕いて見せろ』て言ってやらぁ!」


 また豪快に笑うゲオルドさん。恐らくこの人も、『若い奴に甘い人』の一人なのかな?と思った。武術試験も、若い冒険者が無闇に前線に突っ込んで、負傷したりしない様に釘を刺す為なのかもしれない。


「とにかく、これからよろしくな!ウルカ!」


 ゲオルドさんに握手を求められ、それに応えると手が潰れるんじゃないかと思うほど握り返された。




 ギルドマスターの部屋を出て、カウンターの方へ戻るとフレアさんが待っていた。


「ウルカくん!大丈夫だった!?」


「は、はい!ちゃんとギルドカードも貰えました!」


 発行されたギルドカードをフレアさんに見せる。


「よかった〜……って!Eランク!?」


「なんか、特例って事らしくて……」


 酒を酌み交わしていたオジサンの一人が、会話に反応してグッと振り返った。


「ほぉ!登録初日でフレア嬢に追いつくとは、将来有望じゃねぇか!フレア嬢もうかうかしてらんねぇなぁ!」


 オジサン達の爆笑に包まれ、複雑そうな顔をするフレアさん。


「た、確かに。ウルカくんステータスも凄いし、ギガントボアもあっさり倒せちゃうしなぁ…」


「なんだって!?ギガントボアを倒したのか!ありゃDランク級の魔物だぞ!すげぇな坊主!」


 オジサン達に褒められて少し困ってる僕の前で、フレアさんが少し複雑そうな顔をしている。


「……よし、私も負けてられないね!!ウルカくんに追い越され無い様に、私は『Dランク』を目指すよ!」


「なっ!?ふ、フレア嬢!まさか『試験依頼』を受けるつもりか!?」


 ギルド内の先輩冒険者達がざわつき始めた。


「試験依頼?」


「冒険者はランクを上げる時、ギルドが指定した『試験依頼』って言う特別な依頼を受ける必要があるの。だから私、Dランクに上がる為の試験依頼を受けようと思う!」


「ちょ、ちょっと待てフレア嬢!Dランクの試験依頼はEランクまでの採取や小物の討伐とは訳が違うんだぞ!」


「どう言う事ですか?」


「Dランクに上がる為の試験は『大型魔獣の討伐』が基本だ。冒険者としての基礎を身につけた上で、大物相手に立ち回る事ができるかを見る、冒険者にとって最初の関門になる。その分失敗も多いから、下手すりゃ万年Eランク冒険者なんてやつもザラだ。最悪の場合は……」


 オジサンが暗い顔をしたところで、フレアさんが声を上げる。


「大丈夫!冒険者になった以上、超えなきゃいけない壁なんだから!」


「しかし、今出てる相手はまさにあの『ギガントボア』だ。冒険者になったばかりフレア嬢が倒せるか……」


「大丈夫!今はウルカくんがくれたこの剣が有る!だから今度は負けないよ!」


 フレアさんは依頼掲示板に向かい、試験依頼の依頼表を取り、受付に向かった。


「…フレアさん。本当に大丈夫ですか?」


「うん!心配しないで!必ずやり遂げて見せるから!」


 ギルド内の全員が、心配そうな顔でフレアさんを見ていた。


「あの、フレアさん…」


「どうしたの、ウルカくん?」


「もし良ければ、僕も依頼に同行させて貰えませんか?」


「えっ!?な、なんで?」


「僕もフレアさんの事が心配なので……」


「そうか…坊主の腕はギルマスもお墨付きみてぇだからな。万が一の時はフレア嬢を助けられるだろう。頼んでいいか!?」


「はい!勿論です!」


「うぅ……なんか私よりもウルカくんの方が信頼されてる……でも、私もウルカくんが近くにいてくれたら安心だし、お願いしようかな」


「ありがとうございます!」


「ただし!討伐する時、ウルカくんは手を出さないでね?ウルカくんが手伝ったら、試験依頼は失敗扱いになっちゃうから」


「はい、わかりました!」


 フレアさん自身の実力は申し分ない。封印された剣じゃ無ければ問題なく倒せる筈だ。


「討伐は明日、モーゼスの森だから、ウルカくんの家で待ち合わせでいいかな?」


「了解です!」


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