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第十二話 セルジアの街


 街に向かう道中、フレアさんと色んな話をした。


「ウルカくんは、街に着いたら行きたい場所とかあるの?」


「まずは鍛冶屋さんと、あとは冒険者ギルドを見てみたいです!」


「オッケー!任しといて!」


 そんな話をしていると、近くに魔物の気配が。ファングボアが二体ってところか。


「フレアさん…」


「大丈夫、わかってるよ。ここは私に任せて!ウルカくんがくれたこの剣も試したいし」


 そう言ってフレアさんが背中の大剣を構えると、茂みからファングボアが飛び出して来た。


「プギィイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!」


「ぅおおおりぃいやああああ!!!!!!!」


 フレアさんは突進してくるファングボアに向かって大剣を振り下ろし、切り伏せるというよりも叩き伏せるようにして一体仕留めた。そして今度は真横からもう一体のファングボアが突進してきた。


「そぅらぁああああ!!!!!!!!」


 横に薙ぎ払った大剣がファングボアの顔面を捉え、斬撃を食らったファングボアは4,5メートル吹っ飛んで動きを止めた。


「す、すごい……」


「ふぅ、いやぁこんなにアッサリ魔物を倒したの久しぶりだよ!やっぱりウルカくんの剣はすごいや!」


 剣の性能云々の問題じゃない。スキルも使わずにファングボアをここまで圧倒するなんてあまりにすご過ぎる。僕は興味本位でフレアさんを鑑定してみた。


『フレア・バルティシオ』

Lv50

HP 3500

MP 20

STR 300

VIT 280

INT 20

RES 200

DEX 20

AGI 200

LUK 50



「こ、これは…」


 LvもさることながらHPとSTGとVITがずば抜けて高い、剣聖と呼ばれた人の娘であるゆえの才能も有るけど、おそらくフレアさんは血の滲むような努力を続けてきたのだろう。しかし、魔法面と器用さに関しては…


「んっ?どうかした?」


「い、いえ!なんでも…」


「そう……さっ!そろそろ街も見えてくる頃だよ!」


 移動を再開して数十分、見えて来たのは石の壁に囲まれたまさにファンタジー世界の街だった。


「あれが私の住む街『セルジア』だよ!」




 入り口と思われる門に近づくと、槍を持った門番らしき男性が話しかけてきた。


「おぉフレア!ホーンラビット相手にしちゃ少し遅かったんじゃないか?」


「み、道に迷ってちょっと……」


「またか!何回迷えば気が済むんだ!」


 馬鹿にしたように笑った後、フレアさんの背中の剣を見た門番。


「ありゃ?自称伝説の剣って言ってたあの鉄の塊はどうした?とうとう捨てたか?」


「そんな訳ないでしょ!訳あって彼に預けてるの!」


 そう言って僕を指さすフレアさん。


「……お前なぁ、金が無いからってこんな子供こき使って荷物持ちさせるなんてどうかと思うぞ」


「ち、違うって!彼はドワーフ!こう見えても私と四つしか変わらないの!」


「ほぉ!ドワーフなんて初めて見たぜ!フレアの四つ下ってことはちょうど成人くらいか。そのくらいの歳にしちゃあ確かに幼く見えるな」


「私の武器は彼に修理してもらうつもりだから、今は預けてるだけなの!」


「成程な……確かにドワーフの鍛冶の技術はすごいが、それでもアレは無理だろ」


「そんなこと無い!ウルカくんはすごいんだから!今背負ってるこの剣もウルカくんが作ったんだから!」


「あぁそうかい……って!その剣ミスリルか!?」


「そうだよ?ウルカくんは自分で素材を集めてこんなすごい剣を作る優秀な鍛冶師なんだから!」


 門番はフレアさんの持つ剣をまじまじ見ながら唸っている。


「なぁ、お前ウルカって言ったか?」


「は、はい!ウルカ・ファイトスと言います!」


「俺はロベルトだ、この町の衛兵をしてる。さっきは子ども扱いして悪かったな」


 優しく語りかけてくるロベルトさんに対し、首を横に振った。


「彼、ずっと森の中に住んでて、今日は初めて街に来たから私が案内するの」


「森って…モーゼスの森にか?あんなところで暮らすなんて、さぞ不便だったろうに」


「ふっふっふっ…それが違うんだなぁ」


 一向に街に入れそうにないため、話を遮った。


「あ、あのぉ!」


「んっ?あぁごめんね!街に入ろうか!」


「ちょっと待て。ウルカはずっと森暮らしってことは、身分証みたいなものは持ってないだろ?」


「あ、あぁ!!しまった!そのことを忘れていた!」


 頭を抱えて絶望するフレアさん。この世界にも身分証という概念があるのか…迂闊だったな。


「み、身分証が無い場合は確か……」


「通行料、銀貨一枚だ」


 大体千円ってところか。まぁ妥当な値段なんだろう。


「ごめんウルカくん…さっきも言ったけど、私お金が…」


「い、いえいえ!持っていたとしてもお世話になるわけにはいきませんから」


「ウルカくん…」


「お前よりもしっかりしてそうだな」


 フレアさんとロベルトさんが仲良く喧嘩している中、僕はどうやって街に入れてもらおうか考えていた。


「しかし本当にいい剣だなぁそれ。ミスリルってだけでなく、ウルカの腕の良さがよくわかる」


「へへーん、良いでしょ!」


「なんでお前が誇らしげなんだ」


 …そうだ、お金が無いなら他で払えないか?


「ロベルトさん!相談なんですが、これでお金の代わりになりませんか?」


 僕はアイテムボックスから一本の槍を取り出した。


「こ、こいつは…ミスリルの槍か!もしかしてこれも?」


「はい、僕が作ったものなんですが……これで通行料になりませんか?」


 ロベルトさんはワナワナ震えている。もしかして怒っているか?


「……銀貨一枚どころの話じゃねぇ!ミスリルってだけでもとんでもないのに、こんな上質な槍なら貴族の御殿が買える値段はするぞ!」


 ミスリル武器ってそんなに高いんだ…まぁ小指サイズで金貨一枚だもんなぁ。


「こ、こんなもん恐れ多くて受け取れねぇよ!」


「そうだよ!銀貨一枚なら私が何とか…」


「いいんですいいんです!練習で何本も作って余ってるので!」


 そう言うとロベルトさんは、迷いながらも槍を受け取ってくれた。


「そう言うならありがたく受け取らせてもらうよ。通行料は俺が立て替えとく」


「ありがとうございます!」


「いや、礼を言うのはこっちだよ。銀貨一枚じゃ到底効かないさ。せめてこの街に居る間、困った事が有ったらなんでも言ってくれ!力になるからよ!」


 そう言ってロベルトさんは親指をグッと上げてニカッと笑った。


「ロベルト……随分ウルカくんに優しいねぇ」


「お前さんと違って礼儀がしっかりしてるからな」


「ぐっ!否定できない…でも本当にウルカくんってしっかりしてるよね…まるで大人みたい」


 フレアさんの言葉にビクッと体が震えた。まさか中身は30歳のおじさんだなんて思いもしないだろうけど。


「今回は良いが、今後も身分証が無いと何かと不便だろう。冒険者ギルドなら登録すればすぐにギルドカードが発行される。それさえあれば街の出入りで手間取る事はない。フレアは依頼の報告に行くんだろ?ついでに登録も手伝ってやったらどうだ?」


「そうだね…よしっ!まずは冒険者ギルドに行こうか!」


 ロベルトさんに見送られながらフレアさんと一緒に冒険者ギルドに向かった。


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