第十話 信念の修理依頼
直して欲しいと言ってフレアさんが渡して来たのは、大きな鉄の塊。棍棒の様な武器かと思っていたが、フレアさんはコレを『剣』と言った。
「コレは…一体なんですか?」
「私の一族に伝わる……伝説の武器!……のはず」
「はずって……」
「……私の一族は、魔力の才は無かったけど、武術に関しては名門の一族で、元々は王族に仕える剣士として活躍していたの。中でも私の父『クラトス・バルティシオ』は剣聖と呼ばれて、国王の近衛兵団を任せられていたの」
「国王の近衛兵団の団長…凄い人なんですね」
「そうなの!本当に強くてかっこよくて、しかも優しい!私の憧れのお父さん!……だけど…」
イキイキとした表情から一変して、肩を落として悲しそうな表情になったフレアさん。
「四年前、私が成人を迎えてやっと近衛兵団の見習いとして入団が認められた年に……」
〜四年前 王宮内兵舎〜
「団長…どういう事ですか?……」
「今言った通りだ、近衛兵団は……解体だ」
「どうして……どうしてですか!?」
「お前もわかっているだろ。今の王国では武力よりも魔力を重視し、生活も政治も軍事も全てにおいて優先されるのは魔法だ。我々の様な魔力の才が無い武術家連中は……時代遅れなのだ」
「だけど!」
フレアとクラトスの口論を妨げるようにドアを開く音が響き、数人の男達が兵舎に入る。
「おやおや、まだいらしたのですか?」
「ヒューイ副団長……」
「ヒューイ団長ですよフレアさん?ここは我々『魔剣兵団』の兵舎です。用の無い方は早々に立ち去って頂けますか?」
「用の無いって……貴方、元は団長を支持していた近衛兵団の一員でしょう!?なんでそんな薄情な…」
「これでも温情を込めて言葉を選んだつもりですが…それならハッキリ申し上げましょう。今や王国に汗臭く剣を振るうだけの兵士など無用、不要、邪魔者。さっさと出て行って貰えますでしょうか?」
「……ヒューイィィ!!!!!」
フレアが勢い良く掴み掛かると、ヒューイは魔法でフレアを吹き飛ばし、壁に叩きつける。
「ぐうぅ!!!?!」
「フレア!!」
「おっと失敬、手が滑ってしまいました。しかし、いきなり掴み掛かられては、こちらとしても不敬罪として取り押さえなければならない所。おあいこと言う事でご理解いただけますよう」
不敵な笑みを浮かべるヒューイ。
「ヒューイ……お前ぇ!!!」
クラトスがフレアを制止する様に手を翳す。
「失礼したヒューイ団長。我々はコレで失礼する」
「お世話になりました、クラトス元団長。どうかお元気で…」
ヒューイを睨みつけ、歯を食いしばりながらも、クラトスに手を引かれて部屋を出るフレア。
兵舎を出て王宮の門の前に佇む二人。
「………お父さん……悔しく無いの…」
「あぁ、時代が変わった…ただそれだけの事だ」
「……なんでなの……なんでお父さんは平気なの……私は…こんなに悔しいのに……」
大粒の涙を流すフレアの頭に、クラトスが優しく手を乗せた。
〜それから三年後〜
ベッドに横たわるクラトスと、その隣に座るフレア。
「ゴホッ!ゴホッ!」
「お父さん……」
「すまない…この苦しい状況で、私が病に伏せってしまうとは…」
「大丈夫!私が冒険者になってお金を稼げば、暮らしもお父さんの薬もなんとかなるから!」
「しかし、武具のほとんどは質に入れてしまって残ってない…有るのは練習用の防具と…」
二人の目線の先には、大剣を模った様な鉄の塊だった。
「コレ、バルティシオ家に伝わる伝説の武器なんだよね?」
「何百年も前の文献に残っている眉唾物の話だ。ただの鉄の塊かもしれない。そんな物で冒険者など…」
「大丈夫!私は剣聖クラトス・バルティシオの娘、フレア・バルティシオ!鉄の塊でだって魔物を倒して、立派な冒険者になってみせる!そしていつか……」
「フレア?……」
「……なんでもない!とにかく大丈夫!なんとかしてみせるよ!」
〜再びウルカの家〜
「そうですか…そんな事情が」
「……これが本当に伝説の武器なら、高い報酬の討伐依頼も受ける事が出来て、お父さんの薬も買える……ウルカくん、コレを直す事出来るかな?城下に居る腕利きの鍛冶士でも直す事が出来なくて…なんでも特殊な呪いみたいなものがかかってて、そのせいで直せないみたいなの」
「少し拝見させて貰いますね」
僕はフレアさんから鉄の塊を受け取り、鑑定を行ってみた。
『◾️◾️の◾️◾️◾️」
武器種・大剣
クラス・神話級
ATK・◾️◾️◾️◾️
スキル
『◾️◾️』
所有者◾️◾️の◾️を◾️◾️◾️◾️にする
『◾️◾️◾️』
前方に強力な◾️◾️◾️を◾️◾️す
◾️◾️◾️◾️スキル
『◾️◾️の◾️◾️』
所有者の◾️◾️◾️と◾️◾️◾️を◾️◾️に引き上げる
『◾️◾️◾️』
所有者の◾️◾️を◾️◾️に◾️◾️、◾️◾️な◾️◾️を放つ。
あまりの内容に僕は思い切り吹き出してしまった。
「どうしたのウルカくん!?」
「いや!その…なんでも」
フレアさんに不審に思われたその時、祭壇部屋から光が漏れ出した。やっぱり特別な案件のようだ。
「あっちの部屋がどうかしたの?」
どうやらあの光は僕にしか見えないようだ.
「すいません!ちょっと失礼します!」
僕は祭壇部屋に飛び込み、すぐさまカミスワさんのもとに向かった。




