平穏な学校生活の終了
「何で遅れた?」
「寝坊です」
「全く、大体な――」
今、俺は奥村先生にめちゃくちゃ怒られてます。
まあこれだけならまだ分かる。
実際映画見て遅れちゃった訳だし。
でもさ! こう言うのもなんだけど花園さんはお咎め無しどころかめっちゃチヤホヤされてんのは流石に酷すぎませんかね!?
女子達よ! そういうこと言うのサイテーとか思うかもしれないが、〝チヤホヤ〟はおかしくないか!?
流石に女子達でもおかしいと思うだろう!
まあ、学園のマドンナですからね……チヤホヤされて当然ですわ。
俺は彼女に比べたらミジンコどころかマイコプラズマですからね。
ははっ、言ってて悲しくなってきたわ。
「ほら、授業に行け」
「はい……」
いやぁー、結構怒られたな。
ガラガラと扉を開けて教室に入る。
その瞬間――めっちゃ見られた。
え? 何で? 俺が入って見られた事なんて無かったのに。
「あの人……」
「だよな……」
待て待て待て待て! 俺の知らないところで何が起きてる!?
席に座って周りの声に耳を傾ける。
「あいつが……」
「ああ、あいつが鴉画叉さんに呼び出された奴だ」
……あぁー……確かにあれは話題になってもおかしくないな。
でも呼び出されただけでこんななるのか……。
噂の的は辛いぜ……。
そして授業が始まり、またあまりよく分からない事を言って終わる。
そして俺は休み時間にジロジロ見られるのが嫌だから懐かしい場所に向かった。
そこは――図書館である。
「ここに来るのはほんと久しぶりだなー」
一年生の頃はまじでここにお世話になった。
あの時は愛花に料理の最後らへんのコツを教えてもらってたからテスト勉強が殆ど出来なくてここに来ていた。
というかむしろその行動が俺を更に陰キャにしたのかもしれない。
奥の方にある自習ができる一人用テーブルに座る。
……うん、ここなら目立たない。
この席はいつも空いているのだが、俺はそれが不思議でたまらない。
何故かというと、日光が入ってきていて窓も付いているので開放感があり、自習席の中でもかなり奥の方のため音があまり聞こえないというのがある。
まあ日光が邪魔とか単純に奥すぎて気付かれていないとかあるのかもしれないが。
座る前に【探知】でこの席に持ってきておいた方が良い本を持ってきたので、それを読む。
……なんだこれ? なんて書いてあるのかさっぱり分からん。
オール漢字とか難しいにも程がある。
でも【探知】の兄貴が読むべきって言うならば……読んでやる!
♪
えー、撃沈しました。
ごめん、サッパリ分からなかったわ。
辞書とかも見たけど分からん。
「あ、あの」
「!?」
突然横から話しかけられて驚く。
そこには少々小柄な女の子がいた。
な、何でこんな奥の方の席に来たんだ?
というか俺に話しかけるとは……。
「あっ、驚かせたならすみません」
「いやいや、大丈夫です」
よし、なんとかどもらなかったぞ。
昨日花園さんと話した影響だろうか?
「えと……その本……」
彼女は俺の持っていた本を指さす。
「あぁ、これ? 欲しいの?」
欲しいんだったらマジ助かる。訳分かんなかったから。
「いや、読んでいる人珍しいなと思って」
た、確かにこんな本読む人珍しいよな。
「は……ははは……」
苦笑いしか出来ねぇ!
【探知】パイセン? 女の子に話しかけて貰えたのは嬉しいですけどー、話すのに困るのはちょっと……ねぇ?
「えと……そういう系の本、お好きなんですか?」
何で答えたら良いんだ!?
「ま、まあまあ……かなぁー?」
好きでも嫌いでもないという完全なる中立状態を生み出せる魔法の言葉を使ったが……どうだ?
「そんなんだ……その本の作者さんの本は『み』の段に沢山置かれてるから是非読んでみてね」
目がめっちゃキラキラしてる。
「分かった……ありがとう」
彼女はそのまま受付の方に戻って行った。
あぁー、図書委員の子だったのか。
この学校の受付の位置はよく出来ていて、少し見渡すだけで図書館の全貌が分かる。
普通死角になるところも鏡などがあるから分かるのだ。
ほんとよく出来てんなぁー。
流石私立。
〈キーンコーンk(ry)
もうチャイムが鳴ったのか。
意外と早かったな。
意外と読んでるのが楽しかったのかもしれない。
教室に戻り、少々視線を浴びつつ自分の席に座る。
すぐに先生が来て授業が始まった……が、集中なんて出来なかった。
先程読んだ本、漢字だらけで分からなかったが、何故だか中毒性がある。
本当に所々しか分からないのだが、調べると違う漢字の意味が分かってストーリーが分かるという中々に面白い小説なのだ。
(また今度読んでみよう)
そう思っている内に授業が終わっていた。
少しだけの休み時間。
この時間は図書館に行けないので、机と一体化して精神統一をする。
視線は熱いが、机ーはーひーんやりー♪
……なんか今のどっかのCMで聞き覚えあるな……。
というかこれ以上の資産をいつも受けてる花園さんって意外と凄くね?
ひんやりしてた所が温まったら別の所に頭を置くというのをやり続けていると古典の授業が始まった。
図書館であの漢字の本を読んでいたからかどうかは分からないが体感早めに終わった。
つまり……多少は分かるようになった?
よっしゃ!
ランチタイムになり、いつも通り中庭へ行く……が。
「あ、弁当無いんだった」
今日は急いで来たので作っていない。
「仕方ない、食堂に行くか」
食堂に行き、【探知】さんにこの中で一番美味いものを教えてもらってそれを買う。
ちなみに、素うどんだった。
えぇ……素うどん?
近くのテーブルに座り、ズルズルとうどんを啜る。
うっんめぇぇー!
めっちゃもちもちなんだが!?
おいおい普通こういうとこって冷凍のやつじゃねぇの!?
仮に冷凍食品ならその製品会社教えろ! 絶対買う!
そんなこんなで昼食が終わろうとした頃……
「花園様だぁー!」
「花園様ぁー!」
「キャー!」
男子も女子も凄い騒いでんな。
てか購買の人まで騒いでるじゃねぇか!
…………なあなあ、こっちを見て「あっ」て顔したんだけど気のせいだよね?
こっちに来るのも気のせいだよね?
「岩井君」
……何も聞こえてない。憎しみの籠った視線も送られてない。
「岩井君!」
あー視線が憎しみから殺意に変わりやがった。
「な、なんでしょーか?」
「今日一緒に帰れないかしら?」
「「「はぁ!?」」」
その食堂にいた全員がそう言う。
待て花園さん! 早まるな!
運命の人と言えど展開早すぎませんか!?
まだそこまで心の準備はできてないといいますか……。
「あっ、えっ……とー」
「帰れないかしら?」
「カエレマス」
「じゃあ授業終わったら校門で待ってるわ」
そう言って何事も無かったかのように花園さんは食堂を後にした。
そしてこの後に起きる展開は簡単に予想できた。
「おいお前! 花園様とはどう言う関係なんだ!?」
「お前! 一体花園様に何を――」
「あんた! 花園様が――」
あーもうめちゃくちゃだ。
食堂にいた人全員が俺に突撃インタビューして来てる。
突然隣の昼ごはん放送決定!
ってふざけてる場合じゃねぇ! 俺の平穏は今ので間違いなく吹き飛んだ。
でも……一緒に帰らなかったら翌日間違いなく「おめぇーの席無ぇーからぁー!」をやられる。
かといって一緒に帰れば夜道で背後から刺される可能性も無くはない。
……もしかしてだけど……俺人生詰んだくね?
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