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避難訓練

「花園様だ……」

「テレビに取り上げられたよね?」

「凄ぇ、凄ぇよ!」


 花園さんが歩くだけでこれだ。


 自然と人が端により、廊下が花園さん専用(ロード)と化する。


 まあいつもの事ではあるのだが、今日は少し違う。


 そう、テレビに乗ったから見る人が沢山増えたのだ。


 先生ですら見惚れている。


 おいおいもうすぐチャイムなっちゃうぞ。


〈キーンコーンカーンコーン〉


 あーあー鳴っちったよ。


 先生()が慌てて移動する。


 うちの担任も急いでやってきて、ホームルームを始めた。


 花園さんパワーやべぇーなー。


 そしてもうすぐホームルームが終わるというところで先生がこう言う。


「あぁそうそう、今日避難訓練あるから」

「「「えぇぇぇぇぇ〜」」」


 生徒達から不満の声が上がる。


 俺も避難訓練は嫌だなぁー。


 せっかくの休み時間が潰されるし。


 でも、万が一本当に学校でそういうのが起きたら役には立つからなぁー。


「だが皆聞いて驚け」


 先生がそう言った事で不満の声が止む。


「一番早くキチンと逃げれたクラスには……なんか景品があるらしいぞ?」


 その瞬間、クラス中から何か闘志のようなものを感じた。


 こっっわ。


 うちのクラスこっわ。


「先生! 避難場所はどこですか!?」

「場所はグラウンドだ、それ以外は言えないな」

「何故言えないんですか!?」

「本当の火事とかそういうやつは発生する前から場所が分かるのか?」

「うぐっ、た、確かに……」


 ま、そうだよな。


 先生が教室から去った後、皆が円陣を組んで会議を始めた。


 ……俺を残して。


 おーい、皆ぁー、俺を忘れてるぞー?


「先生はキチンとと言っていた。つまりしっかりとした対処方をしないといけない」

「火災の場合は?」

「火災の場合はまず(かが)んで壁に手をやって触りつつ上下に動かす。この際絶対に走ったりなんかしちゃいけない」

「分かった」


 凄いやる気入ってんなぁー。


 先生入ってきてるのに誰一人気付いてないし先生も邪魔しちゃ悪いかなって遠慮しちゃってるじゃん。


 一人の生徒が先生に気付いて


「おい、先生来てるぜ」


 と周りに言った。


「あちゃーもう来ちゃったか」

「続きは休み時間に」


 各々自分の席に戻る。


「じゃ、じゃあ授業を始めるぞ」


 先生引いてるやん。


 一時間目は普通に終わり、先生が退出した瞬間……


「地震の場合は?」

「まずは当たり前だが机の下に行って頭なんかを守る。その後防災頭巾なんかを被りながらグラウンドに行く訳だが……朝言ったようにキチンとしないとダメなんだろう。階段をゆっくり降りるなどして、丁寧に歩こう」

「分かった」


 なんか災害時のエキスパートいないか?


 あいつ何者だよ。


 そしてまた次の授業が終わると皆円陣を組んで話す。


 そんなこんなでランチタイムになった。


「確か避難訓練があるのは昼休みだったよな……」


 担任の先生が担当の授業になった時、災害時エキスパート君が避難訓練はいつなのかを聞いていた。


 なら中庭でパパッと食べて戻ろう。


 小走りで中庭に行き、ベンチに座って弁当を開く。


「おぉー」


 いつ見ても美味そうだ。


 冷めているはずなのに何故かあったかく感じる。


 ……え本当に何で?


 何であったかく感じれるんだ?


 ……愛花、魔法使いにでもなった方が良いぞ。


 そんなお弁当を食べる。


 うん! 美味い!


 しっかりと味が整っている!


 全部しっかり味わって食べた。


 また早歩きで教室へ戻る。


 皆お弁当や食堂で買ったパンなんかを食べつつ会議している。


 な、何でそんな気合い入れられるんだ……?


 そんなに景品が欲しいのか?


『これから、避難訓練を始めます』


 突如(とつじょ)放送が鳴る。


「き、来たぞ!」


 クラスメイト全員が身構える。


『今回は、3階の第二理科室から火災が発生したものとします。生徒の皆さんは、落ち着いて、グラウンドまで避難して下さい』


「さあ始まったぞ、避難訓練(デスゲーム)が」


 いやデスゲームでは無いだろ。


「皆! 姿勢を低く! ハンカチで手を押さえて左の壁沿いにしゃがみ歩きするんだ!」


 俺のクラスがあるのは三階だから、火災が発生した階だ。


 ……中々に面倒だな。


「よし、ならばまず階段に向かって歩こう!」


 エキスパート君はハンカチで鼻と口を覆ってしゃがみ歩きで教室から出て行った。


 皆も彼の真似をして歩く。


 そして廊下に出て分かった。


 ここまでガチでやってるのは俺らだけだと。


 他クラスの生徒は皆ハンカチで鼻と口を押さえてないししゃがみ歩きもしてない。


 それどころかめちゃくちゃ話しながら歩いてる。


 だから俺らが変な目で見られるのは当たり前な訳で……。


 め、めっちゃ恥ずかしい。


 もう見方によれば奇行種だからね。


 しっかりと階段を降りようとするが……。


「っ! 待て!」


 エキスパート君がそう叫ぶ。


「どうした!? 何かあったのか!?」

「この階段……火災が発生した第二理科室のすぐ近くだ!」


 た、確かにそうだ!


 つまりこの階段は……


「使えない!」


 A組の皆が困惑し始める。


「大丈夫だ皆! 別の階段から行けば良いんだ!」


 エ、エキスパート君! 凄い冷静だ!


 第二理科室とは反対方向にも階段があるので、そっち側に向かう。


 左の壁沿いに進みながらやるのは中々膝にくるなぁ……。


 目的の階段に着き、エキスパート君から慎重に降りる。


 一階に着いた後は楽勝だった。


 彼(いわ)


「煙は大抵上に行くから一階に行けば大丈夫な筈だ」


 との事。


 グラウンドに並んで、先生達が話し始める。


 だが俺らA組は、景品がどのクラスに渡るのかが知りたかった。


 そしていよいよどのクラスに渡るかの発表の時が来た。


「えー、景品が渡されるのはぁー」


 周りからゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。


「3年A組です!」


「ぬわぁぁー!」

「嘘だろぉー!」

「馬鹿……な……」


 結構な数の生徒が倒れた。


 ……この学園大丈夫か?


 気絶しなかった生徒達は教室へと戻って行った。


「いやぁー悔しかったなぁー」

「流石3年A組、花園様がいるクラスなだけはあるぜ」


 へぇー、花園さんってA組なのか。


 ……いや連絡先知ってるのに何でクラス知らないんだよ俺。


「花園様が指示したって話だぜ」

「やっぱ花園様は偉大なんだなぁー」


 へぇー、ちゃんとエキスパート君が言ったような事やったんだ……。


 火災の時の対処法とか知ってるんだ……花園さん……。


 いやでもこの学園の校長の娘らしいから幼少期に教えられててもおかしくはない……のかな?


 授業が始まったが、皆心が折れて授業に集中出来ていなかった。


 まあかく言う俺も出来ていなかったのだが。


 そのまま時間は過ぎていって放課後になった。


 まるで歩くしかばね(ゾンビ)の様に帰っていくA組の生徒達。


 俺は大丈夫だ。ゾンビにはなってない。


避難訓練(ひなんくんれん)結構疲れたなぁー」


 そう言いながら下駄箱へと向かった。


 …………花園さん専用(ロード)を避けて……。


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