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涙の魔法使い REMAKE  作者: 夕凛
プロローグという名のエピローグ
2/2

プロローグ


 木造二階建ての我が家では、珍しくドタドタと妹達が朝早くに起きてくる音が聞こえている。


「あぁ。今日中には身支度を済ませて出るつもりだ」


 僕はこれから旅に出る。「異世界」に。

 前日から荷造りを始めると、妹達に気付かれ、やれ一緒に連れて行ってくれだのとせがまれるので、荷造りは出立の当日の明け方とかに済ませる。

 まぁ、荷造りとは言っても、魔術で作った異空間に物を収納しておくだけだけど。


「ご飯、冷めちゃうよ~」


 下の階からは、姉さんの声と料理をする音が聞こえる。


「そ。なら、行ってきますぐらい言ってやんなよ。(はな)たちにさ。一度行ったらしばらく帰ってこないんだから」


「了解了解」


 適当に相槌を打って流す。

 だが内心、妹たちに心配かけていることは知っていたし、それを申し訳なくも思っていた。

 僕の行き先は「異世界」だから。何があるか分からないのが常だ。それがこの旅の面白さの一つではあるのだけれど。


「そんじゃ、行ってくる」


 異世界に転移することができるのが、僕の魔法の一つ、「物語(パラミーシ)」。通常、魔法とは一人一つ、固有のものであるが、僕にはそれが三つある。

 そして、魔法の完全下位互換となるが、誰しもが使える「魔術」。これは、自然の延長線上にあるような力だ。


「まったく。そうやって無視して。帰ってきたときにどうなっても知らないよ?」


「それはその時に考えるさ」


 一度姉の方に顔を向けてから、もう一度前に向き直す。

 妹達と出くわす前に、さっさと出て行きたい。


「じゃあ、行ってく・・・」


「どこに行くのですかお兄様」


 んー・・・。間に合わなかったみたい。


「次に旅するときは、花も一緒にっていったじゃないですか!」


 ほら、ヤッパリこうなった。

 姉にはそっぽを向かれる始末だ。


「はぁ...」


 ため息をついて、油断を誘う。彼女たちに、「ようやく詰ませた」と()()()()のが狙いだ。


転移(セプテ)


 と、妹達の隙をつき、魔術を使って屋根の上までひょいと移動した。

 後ろを向く形で妹達を見下ろし、前に向き直してから、魔法の詠唱を始める。


「屋根の上よ!」


 次女の葵の声が聞こえる。

 大丈夫。大丈夫だ。彼女たちに転移の魔術は使えない。姉が変な気を起こして手助けしたりしなければ、ね。

 普通に登ってくるにしても、魔法の発動に間に合わない。


「残念!今回もお預けだね。ハッハハハ」


 彼女たちが必死こいて屋根の上に登ってきた時には、僕は笑顔を向けて旅立っていた。


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