魔法の訓練開始!
翌日、俺の適正診断が終わってから、早速魔法の訓練をしていた。
この世界はみんなが魔法使いだから色々教えてくれるのだ。剣術訓練も再開したけどこっちに関しては父さんが引き続き教えてくれている。
実を言うと魔法を発動させること自体は3歳の頃に成功させてるから基礎訓練はもう必要ないんだよね。
体系が完成していてみんなが一般的に使う魔法っていうのは当然あるけどそれは初めの1時間ほどで全部覚えてしまった。
街のみんなはそもそも魔力制御すら難しいのに早速基礎魔法を全て覚えた俺に驚愕している。
だけどいつも通り褒めてくれるだけ。本当に俺は今幸せだ。
「でもすごいよな、セド。魔法は全員が使えるものだと言っても、属性によっては扱いや見た目も想像媒体も全部違う。なのによくそんなポンポンと炎魔法でも同じようなものを再現できるな」
「みんなが丁寧に教えてくれるからだよ」
本当にこれに尽きる。魔法はイメージで発動する。なので既に俺の中で何個か自分で開発出来そうな魔法は用意してある。あとは練習するだけ。
まあ、成功するかどうかはわからないんだけど。
とまあ、こんな感じで自分の家の近くのおじさんに色々教わっていると、
「ああ、悪い。おじさんこれから予定があるんだ。また今度いろんなコツとかいっぱい教えてやるからな。今日はこの辺にしておこう」
「そっか、それは仕方ないよね。分かった、またよろしくねおじさん」
「任せとけ!」
こうして近所のおじさんがいなくなった。今日も色々コツを教えてもらった。
魔力制御に関してはもう完璧といろんな人からお墨付きをもらってるからいまさら練習はしていない。
やっているのは、その応用で魔力を効率的に魔法に込めて、よりスムーズに魔法を発動させる方法だ。
火力を上げるなら単純にイメージの練習をすればいい。
この世界の魔法はイメージの出来次第で威力の上下が激しいから、何かしら自分のイメージしやすいものを用意しておくのがいいんだ。
さてさて、魔法をスムーズに発動させるコツを今学んだ。そして俺が自分で発見した、イメージで火力を上げる方法。
これらを合わせて今から特訓だ。なんせ魔力は有り余ってるんだ。いくらでも練習できる。
そんなわけで俺は今、誰もこない山奥の開けた場所に向かっている。
そこで行うのは自分がイメージした魔法の試射。
「まずはっと、あれからやろうか」
そう呟いてから自分で考えた魔法をイメージする。それは至ってシンプル。
ただの火炎放射だ。この世界の人々はイメージで魔法が使えるはずなのに、何故か炎の攻撃といえば1番思いつきそうな火炎放射を魔法として完成させていない。
ずっとそれが疑問だった。ただの炎でも魔法で放てば爆発するほどの威力を出せるんだ。
やらない理由がない。
「というわけで、早速行きますか! ハッ!」
俺が魔法をイメージした瞬間、勝手に魔法陣が構築され、すぐさま烈火の猛威が指向性を持って、前方にある大岩にて炸裂した。
そう、炸裂したのだ。触れた瞬間から岩が赤熱し始めて、
それを数秒後にはドガンッ! と破壊した。
「え? これ凄まじい威力だよな? なんでみんな思いつかないんだよ」
確かにこの街の、いやこの国の人たちは水魔法使いだ。故に炎魔法に関して造詣が深くなくても理解できる。
だけど魔法書というものは全ての属性に対応すべく、全属性の基礎魔法が掲載されている。
そしてそこの基礎炎魔法に火炎放射らしきものは見当たらなかったのだ。
「でも、待てよ? ああ、そう考えれば」
俺は1人納得する。この世界には火炎放射器なんてものもなければ、前世での某モンスター的な存在たちが使うアレ、か○んほうしゃだ! ってやつも知らないだろう。
人間が特殊な力を持つ動物に指示を出すアレ。
てことは他で炎の実物というか、イメージしやすいものと言えば、
「火事、くらいか」
と言うことはメラメラとただ燃えているだけの炎しか見たことがない人の方が多いかもな。
あとは火球的なのも昔誰かがイメージに成功して火の玉みたいなのを使っていて、それを第三者が見て広まっていったのかもな。
「なら、単純に炎そのものに指向性を持たせて前方に放つ、なんて発想が生まれなくても仕方がないか」
火球にしたって炎自体は変形させてあるんだし。
「まあ、いいや今度は何にしようかな〜……」
考えても仕方ないことは考えない! これも立派な大人の対応。
まあ前世含めれば今の俺は二十歳を余裕で超えてるが、今世だけだとまだ7歳だけどな。
「よし、次は……」
そうして次々に俺は魔法を開発していった。さっきの火炎放射に空気中から酸素を集めるイメージをして、青色の炎に変えた状態で放射したり、炎の鞭のようなものを生み出す魔法を作ったり、単純にその場から全方位に向けて馬鹿みたいに炎を放射しまくる魔法を使ったりと、割とやりたい放題やってます。
そんな中、1番使ってみたかった魔法がある。
「前世では映画でチラッとみただけだけどな」
イギリスが舞台の某魔法使いたちの話。主人公はとても有名人。でもその有名さは嬉しいものでもなんでもなく、当時最強で最凶と言われた、史上最悪の闇の魔法使いから生き延びたと言う理由からだ。
その少年が魔法の学校でとある事件に巻き込まれた時、怪我をしてしまった。
それを治したのが、
「確か不死鳥だったよな?」
不死鳥ってなんかカッコいいよな。心がくすぐられる響きがある。
「そうだなー、名前は何にしようか。あ、不死鳥の慈涙なんてよさそうだな」
いいぞいいぞ。順調に魔法開発が進んでいるな。今の魔法の効果も抜群だった。試しに近くにいた野生動物に魔法を使った。仮に治さなくても、夕食にできると思ったからだ。そしてその動物に不死鳥の慈涙を使ったら、瞬時に負傷した部分が治って走り去っていった。
すごい効果だ。取り敢えず、今日はこの辺にしておこう。
もうすぐ日も暮れるし、だんだん薄暗くなってきた。
そうして俺は満足のいく成果を抱えて、自分の住んでる地区に戻ってきた。
自宅近くに行くと、何やら騒がしい。
「何かあったのか?」
俺は不思議に思い、彼らに近づくと、
「ああ、騎士様! お気をしっかり! 誰か! 回復魔法をまだ使えるもんはおらんのか! わしはもう魔力が空になってしもうた!」
「町長、良いのです。あなたがた、市民を守れただけでも、僥倖。あの魔物が、異常に強かっただけです……あなたがたは命が助かった、、それが私にとって、は1番重要です」
「そんな! ダメです! あなたはまだお若い! こんなところで死んではダメです!」
なんとも生々しい、ものすごい光景だな。右横腹を食いちぎられたのか、陥没している。
そして腕も変な方向に曲がっている。血も大量に出ている。
俺で治せるか? 効果はさっき確認済みだ。でもあれほどの重症にも効くのか?
分からない。でも、やってみる価値はあるな。
「どいてみんな。俺がやる」
「な!? セドリック! 何をしておる! お主では絶対無理じゃ!」
「なんでそう言い切れるの?」
「炎魔法使いで回復魔法を使えるものはおらん! 元々攻撃特化の属性だからな!」
「ふーん、でも関係ないや。とにかく時間がないからやるしかないじゃん。ほら、町長一旦避けて?」
町長は何か言いたげだったが、俺が今までいたずらに嘘をついたりなどはしてこなかったから、取り敢えずは俺に任せてくれたんだろう。
それじゃあ、やるしかありませんね〜。
これはなかなかタフな治療になりそうだ。