表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/47

父アシル

少し短いです

 私はアシル。我が愛する息子セドリックの父だ。

 私は今最大に驚いている。それは何故か? 自分の息子が神童と呼ばれるほどに優秀であるからだ。

 

 まだ齢3つであるというのに簡単なものではあるが、読み書きを覚え始める。

 話し言葉に関しては既に他の子よりもはっきりとこちらに意志が伝わるような喋り方をする。

 もちろん子供の言葉だし、まだまだ舌が回っていなかったり、話しにくそうな部分はたくさんあるんだが、それにしても成長速度が早すぎる。

 だが、だからなんだというのだ。成長が早いに越したことはないのだし、むしろ喜ばしいこと。

 他の街の人々も大袈裟なほど褒めてくれる。

 嬉しいことだ。



 だがそんな私をさらに驚愕させたのが、4歳半でもう計算を学び始めていたからだ。

 いや、3歳の時点で足し引きくらいは理解している節があったが、それでも普通の計算問題はやってこなかった。

 だがここにきて学び始め、話し言葉に関してはもはや日常生活では困らないレベル。

 読み書きにしてもどんどんと難しい言葉も覚えていく。

 単純に凄まじいの一言だ。

 それに何よりも驚くべきはその記憶力だ。ほとんど一回でなんでも覚えてしまう。仮に一回では難しくとも2回くらい復習すれば覚えてしまう。

 物覚えの速さも尋常ではないのだ。



 そうして過ごしているうちに3歳から始めた剣術の指導もいよいよ打ち込みに入ってきた。

 まだ早いだろって? 私も初めはそう思った。だが基礎訓練は直ぐに覚えてしまって、体力作りも毎日サボらない。もう基礎的なことを教える必要がまったくと言っていいほどないのだ。

 そして何より、だんだん私の剣術指導に飽き始めている節がある。なんとも生意気な、といい歳をした大人が思ったものだ。

 というわけで最近ではもう打ち込みを教えていいかもなとか思ってしまったのだ。

 そこからは今までのようにやる気が漲った感じがした。

 やはりな、少し飽きてきていたか。


「ほらもっと強く!」

「うん!」


 まだ、コンッ、コンッと言った感じの打ち込みだが、こんなものだろう。

 いくら神童と言われるくらいに優れていると言っても肉体は皆同じ成長速度。

 劇的に何が変わるわけでもない。でもそれでもこうやって真面目にとことん、徹底的に手を抜かず頑張り続ける我が息子は、私の誇りだ。

 きっと立派な戦士になるだろう。



 


 そんな感じでずっと訓練と勉強を続けたセドリックは立派な7歳になった。

 本当に聡明で優秀だということがわかる見た目をしている。本当に7歳かと思ってしまうほど知性に溢れた瞳、目的意識を持って必死に生きようとする強い意志。

 それらが感じられる。だが、何故だろうか時々、この子は本当に子供なのか? とか実は中身はある程度の歳をとっているのではと思ってしまうくらい、7歳ではあり得ないほどの哀愁を漂わせることがある。

 そもそもこれほどの哀愁を漂わせるような体験、よほどの事情がない限り7歳にあるわけがない。

 なのに何故だろうか?


 これほどまでに胸を締め付けられるような悲しさをこの子から感じるのは……


 だけどそういう瞬間もいつも短時間だけですぐに気持ちを切り替えたような顔をなる。

 本当に不思議な子だ。

 まるで大人が子供の姿をしているかのようだ。あり得ない話ではあるがな。



 そうして7歳になったので、いよいよあの日がやってきた。そう、適性診断の日だ。

 私はこの日を妻のカトリーヌと共にものすごく楽しみにしていたのだ。

 さてさて、我が息子はどんな診断結果になるのだろう?

 私たちの国は水の王国なのでおそらく女神様の加護がある故に水の適性にはなると思う。

 だがそれ以外の部分でどうなるかとても楽しみだ。



 数十分後、


 セドリックが適性診断の宝珠に触れた瞬間に真っ赤な、そう紅とも言えるほどに真っ赤な色に変化したのだ。

 つまりこれは炎適正ということ。こんなことがこの国で起こり得るとは……いや、王国始まって以来、数名そういうことが起こったみたいだけど、まさか自分の息子にまで起こるとはな。

 いや、そういうことがあるからこそ、わざわざ診断などをやっているのだろう。

 

 それよりもだ、なんだこの圧倒的な魔力量は……宝珠が割れた上にまだ魔力が上昇し続けて、もはや計測すらできなくなっている。


「とんでもなく珍しいことが起こったもんだな〜」


 私は思わず口に出していた。すると隣にいたカトリーヌが、


「そうねえ〜、少し驚いちゃった」


 と、私と似たような反応。



 その後、私たちは普通に喜んでいたのだが、セドリックは少し気になることがある様子。

 色々と質問をしている。そしてその質問の内容がだ。

 7歳のする質問ではないのだ。

 私は心の底から脱帽したよ。本当に我が息子ながらすごいと思う。




 こんな感じで診断は色々あったが、概ね問題なく終了した。セドリックもどこかあの哀愁のようなものが消えている気がした。何故だろうか?

 私にはわからないが、セドリックなりにやはり何かしら抱えるものがあったのだろう。

 これは……あまりその話題に触れてやらない方がいいのかもしれんな。

 なんにせよ、今までより晴れやかな笑顔を浮かべる息子は親の私から見ても男前と思うものだ。

 これは女の子たちから引く手数多になりそうだ。



 とまあ、色々と我が息子について考えはしたが、とにかく優秀なの子で周りのみんなにも気配りができ、とにかく優しい子なのだ。

 それでいて勉学や剣術などでも優秀なのだから本当に私は素晴らしい子の父になれたと今の境遇に深く感謝しているよ。


 これからもっともっと親として精進して、あの子の父親として恥ずかしくない男になるぞ。

 そう誓ったのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ