積み上げる信頼と実力
遅くなりました。すみません。
祖獣と出会ってから実に一年が経過していた。
俺はあれから着々と実績を積み上げ続け、気がつくと蒼星級にまで階級が上がっていた。たったの一年でここまでの昇格は異例のことらしい。
周りのみんなからはしょっちゅう驚かれるし、褒められる。結構嬉しいんだよな、これが。
因みに今だに俺の属性のことで絡んでくるやつは一定数いるんだけど、そういうのは大抵違う街から来た奴らか、俺が別の拠点に移った時に俺の事を知らずに絡んでくる、ってパターンが一般的だ。
俺に適度ボコられて2度と絡んでこなくなるか、俺のことを知ってる誰かに止められて絡むのをやめるかって感じで事態が収まることが多い気がする。
基本的に俺のことを少しでも知ってる人間はもうあまりちょっかいを出してこなくなっていた。
実は俺は、本来なら既に白星級になっててもおかしくないって言われてる。
以前、依頼の途中でまたまた運悪く強力な魔物に出会って、成り行きでそいつを倒したら、実はそいつ白星級の魔物だったみたいでさ。当時俺はまだ赤星級だったから本当に驚かれたな。
まぁ、倒せたのは相手が植物由来の魔物だったので相性が良かったと言われたらそれまでなんだが、それでも白星級は白星級。
組合の上層部は俺の昇格のことで揉めに揉めたらしい。その上で、やはり階級はルールに則り一つずつ上げていく形にするってことで決着したらしい。
そんなわけで、異例の早さで大出世してる俺は結構有名人らしく、周りの人間もよっぽどの情報集め下手かお馬鹿さんじゃ無い限り、ちょっかいをかけてこなくなった。
さて、そんな感じで結構話題になってる俺は今日も元気に依頼を頑張るのである。
そう思っていたのだが……
「で、どちら様ですか? お兄さんは」
「ほぇ〜、君口調が冒険者とは思えないほど丁寧だなあ! もしかしてあれか? 産まれや育ちが良かったりする?」
「別に丁寧でも無いと思いますが……。生まれに関しては、そうですね。平民家庭にしては結構裕福だったと思いますよ」
「な〜るほどね〜」
「それで? 何かご用があるのでは?」
「おっとそうだった! あのさ、最近巷で変な噂が流れてるの知ってる?」
なんの話かと思って促せば、男はそんなことを言い出した。
なんだ、結構有名な話じゃんか。
「ああ、よく聞きますね。確か山奥や森林の奥深く、あとは洞窟とかだったり、普通ならそういった人里離れた場所に住むはずの魔物や魔獣がその辺で頻繁に見かけるようになったとかなんとか……」
(と言うか、その普通なら頻繁に見かけない魔物にこの間襲われかけて、倒したから今の階級になったんだけどな……)
「おっ、ちゃんと情報収集してるね! そうさ! 最近マジでヤバいのさ!」
ほんとこの人のテンションは疲れるな〜。名前は確か……なんだっけ? ああ、ボドワンさんだ。
あんまりにも弾丸トークのペースで話すから、さっきチラッと自己紹介されたんだけど、名前忘れかけるところだったよ。
「それでさ、最近冒険者の間で強い人を主軸にパーティを組んでいこうって風潮が出来始めてるんだ」
「パーティ……」
「そうそう。それでね、どうかな? 僕とパーティ組んでくれないかな? 僕はこれでも一応黒星級だし、冒険者も長くやってるから色々と君が知らない知識も教えてあげられると思うんだけど」
「は、はぁ……」
確かに、今の話を聞くところでは受けたほうが良さそうな感じだな。また強力な魔物に不意打ちされるのも勘弁してほしいものだし、自分よりも階級が上の人が一緒にいてくれるなら心強いか。
受付嬢さんにも俺はだいぶ経験も積んで強くもなったから、難しい依頼も今後増えるだろうし、そろそろ仲間を集めてみてもいいかもって言われてたからな。
「分かりました。お願いします。あ、名乗るのが遅れましたね。僕はセドリックって言います」
「本当かい? やったぁ! あ、失礼。こちらこそよろしくね! それにしても僕は運がいいなあ。君と組めたらいいなって思ってたのさ!」
「そんな、大袈裟……」
俺は大袈裟ですよって言おうとしたんだけど、ものすごい勢いで否定された。
「大袈裟だなんてとんでもない! 君、自分の状況理解してないの?」
「え? 俺の状況ですか? えっと……」
「やっぱり……。君ね、冒険者になったばかりなんでしょ?なのにたったの一年で蒼星級にまで上り詰めた。一般的にはもう熟練冒険者って呼ばれる領域だ。つまり何が言いたいかっていうと、君は今や注目を浴びる存在だってこと。君と組みたい輩はかなり多い」
「そ、そんなに?」
「うん。そんな中で僕は一番乗りで君に声をかけに来たってことさ。多分悔しがってる奴も多いんじゃないかな? ははは」
俺はチラッと周りを見渡した。すると確かに悔しげな表情でこっちを見ている人たちと目が合った。
彼らは俺に気がつくとスッと目を逸らした。
「でもそんなに悔しがることなんですか?」
「あったりまえさ。なんたってパーティってのは別に2人でもパーティだ。そのパーティの主要人物が元々群れるのは好きじゃないって言うのなら、2人集まった時点で募集を切ってもいいんだ」
「な、なるほど」
確かにそれならどれだけ早く声をかけられるかにかかってるな。でもそれなら声をかけられる側の俺が言うのも変だけど、どんどん声をかければいいのに。
そんな感じのことを言うと、
「ははは、それは無理ってもんさ。冒険者は階級が絶対。もし自分が狙ってる獲物を他の上級冒険者が狙ってたりしたら、邪魔しないようにするのが、暗黙の了解ってやつさ」
「へぇ〜」
結構親切な人だな。ボドワンさんって。さっきから教えてもらってるの、かなり勉強になる情報ばかりだぞ。
「でも中には勇気のある奴もいるみたいだからそう言う奴らが声をかけてくるかもな」
「?」
俺は急にボドワンさんが変な方向を見ながら話し出すので、なんだろうと思いながらその方向に目を向けると、1人の青年がこっちに向かって歩いてきていた。
「失礼、お話し中のところ申し訳ないのですが、よければ僕も混ぜていただけないでしょうか?」
いきなり、バリバリ丁寧な敬語で話しかけられてびっくりした。どう見てもこの人俺より年上なのに。
「え、ええ。もちろん。それよりお兄さん、僕絶対年下だと思うんで、敬語じゃなくて大丈夫ですよ?」
俺がそう言うと、いきなり後ろからボドワンさんにチョップされた。
「え、いきなり何するんですか?」
「さっき言っただろう? 冒険者は階級が絶対だって」
「え? てことはもしかして?」
俺が頭をチョップされた理由になんとなく思い当たると、目の前のお兄さんはくすくすと笑い出した。
「ははは、そうそう。お察しの通り、僕はあなたより下の階級です。ちなみに赤星級です」
「そうだったんですね」
「はい。なのでセドリックさんは僕に対して別に敬語じゃなくてもいいですよ? と言うより、上下関係が曖昧になるので、基本的には下の階級の者に敬語はやめた方がいいです」
「あ、うん。分かった」
俺がそう言うと彼はニコッと微笑んだ。むかつくくらいイケメンだな、おい。
「ところで君、名前は? 僕はボドワン」
「あ、そうだった。まだ名乗ってませんでしたね。僕はアルセーヌです」
「俺はセドリック。それと、さっきの話なんだけど……」
「ああ、お話しの件ですね?」
「そうそう」
そこからは俺とボドワンさんとアルセーヌの3人での会話となり、内容はアルセーヌもパーティに入れて欲しいと言うものだった。そして結果的に彼は俺たちのパーティに入ることとなった。
理由はいくつかあるが、大きなものは二つ。まず一つ目が彼は戦闘はもちろん、情報収集が得意だと言うこと。
そしてもう一つは戦闘以外のスキル(狩りなど)も得意だと言うこと。これらの理由から彼が入ってくれれば、依頼の進行効率が格段に良くなるだろう。
というわけで、彼に入ってもらった。
因みにボドワンさんは完全な戦闘員だ。
そんなわけで完成した俺たちのパーティ、
名を"紅蓮の剣"はカウンターでパーティ登録を行ってから、早速3人で依頼に出かけたのであった。




