まさかの早期発見。そして絶望?
少し短いお話が続きました。長文をご期待されていた読者様がいらっしゃった場合はご期待にお応えできず、申し訳ありません。
俺は自分が魔法を使う時、他の人とは感覚が少し違うというのを発見してからは、そりゃもう毎日水魔法! 水魔法!
と願っていたものだ。
だけどあれから1年が経ち、俺が三歳になった頃、新たな事実に気づくことになる。
それも最悪の事実に……
それは、この世界の魔法はイメージで完結するものらしいことが最近になってわかった。
そういうわけで俺は身の回りの人たちが使っている魔法をイメージして水をただ放射する魔法や水球を出し、敵を攻撃する魔法を発動するよう念じてみた。
そこで分かったのが……
「水魔法が全く使えない……」
今は魔力制御が既にできることはあまり大っぴらにしない方がいいと思い、自分の部屋でこっそりやっている。
「だったら何の魔法なら使えるんだよ。魔法が使えないのに、魔力だけあったって意味ないだろ」
事実、俺は魔力制御の方法を他の子供より早く知り、実行できている。これは確実に前世の記憶の恩恵だな。
ありがたい。でもそれと同時に、なら逆に何故魔法が使えないのかが疑問で仕方ない。
しかも魔力量は日に日に増えている。
そしてそこで俺はふと気づいた。俺は魔力を扱う時、体が暖かくなる。つまりはそれに関連する、熱を放つ属性の魔法なのでは? と。
「仮に水じゃない属性だったとしてもいずれ、適正診断で分かるんだ。だったら今からわかっている方が、気持ちの整理もつくはず」
僕は恐る恐る、前世の知識を頼りに火球的な魔法をイメージした。すると……出た、魔法が。
メラメラと光り輝く炎の魔法が……俺は一気に気分が落ちた。まさか、この地域に1人としていない水以外の他属性魔法使いに自分がなってしまうとは。
どうしよう、分からない……どうしたらいいか全く分からない。
とにかく、このことは今は黙っておこう。どのみち本格的な魔法教育がなされるのは7歳の診断が終わって、適性がわかってからだ。
既に魔力制御ができている今の時点で、結構な異端児だ。
俺は今後もしかしたら不運な運命を辿るかもしれない。だけどこうなってしまった以上、一生この体と付き合っていかないといけない。とにかく、今は気持ちを落ち着かせる時期だ。自分が炎適正だということはいずれバレるだろう。その時にどんな反応をされても心だけは折れないように、今から覚悟を決めておこう。そのための時間だと思えばいい
俺が自分の適性を隠すと決めてから数ヶ月がった。今は父さんの指導のもと、剣の訓練をしている。
これがまたエゲツない。かなりのスパルタ教育で、実践などは流石に3歳なので、まだやっていないが軽い素振りと倒れない程度に走り込み。
聞いただけなら大したことなさそうだろうけど、3歳がやる内容じゃない。
でも剣にも興味があるので毎日頑張っている。そのひたむきさが嬉しいのか、父さんはより張り切ってしごいてこようとする。
でもこうして見ていると、父さんは本当に俺のことを立派な戦士に鍛え上げて、村のみんなを守れる強さを身につけさせようとしてくれているのだろう。
それがとても温かく、心地よく感じるので、剣の練習をしんどくてもやめられない。
そんな毎日が続き、読み書き計算の勉強も徐々にまともなレベルにまで達してきた。
相変わらずみんなは驚いているけど。まあそりゃそうだろうな。
だって普通3歳なら喋るので精一杯だ。この時点で普通なら変に思われるかもしれない。
けど、そんなそぶりを町のみんなは一切見せない。もしかしたらと少し希望を持てた。
だけど、まだ俺にとっての本番は4年後なので油断はできない。とにかく今の俺にできることは毎日を必死に生き抜くこと。
それ以上はできっこない。
そして、優秀な人間になって家族をもっと楽させてあげたい。
そう願わずにはいられないほど、この生活が心地よい。
そうして、個人的な魔力操作の訓練と、父親からのスパルタ剣術訓練を耐え凌ぎ、毎日を過ごしていた。
そうやって毎日を必死に生きているうちに年月はすぎていき、ついに俺は7歳を迎えた。
いよいよだ。自分の属性が他の人にバレる日がきた。これだけの長い年月一緒にいて、みんなを疑うのは間違いなのかもしれない。
でも俺は前世での記憶を保持しているため、どうしても安易に人を信用することができない。
それは当然の話だ。なんせ人の愛を知らずに20歳前まで生きてしまったんだから。
人の感情の機微や、自分に対して抱いてくれている感情、そう言ったものを理解できない、もしくは素直に受け取れない頭になってしまっている。
いつもいつも、人を簡単に信用しようとすると、頭の中で警報が鳴るんだ。
簡単に信じるなって。だから俺は今だけは人のことなんか考えずに、自分が今後どう動くかや、どうなるかだけ考えようと思った。
もし仮に自分が本当に炎属性適正で、水魔法を使えない落ちこぼれだとわかった時、どう状況が動いても初動を早くできるように。
でもふと思った。そんなこと俺にできるのだろうか? 簡単に人を信用しないとは言ったものの、この世界の人々との生活はとても楽しかった。
まだ僕が住んでいる町の人たちとしか会ってないけど、それでもすごく生きやすかった。前世よりも……
ゆえにもしかしたら、状況判断が鈍ったりすることもあるかもしれない。
でも、それでも俺は好きに生きると決めた。
前世は親の言いなりに、親の道具になって生きることを甘んじて受け入れたけど、今世は何者の影響も受けないで(悪い影響の話)生きていこうと決めたのだから。
俺は今世も努力し続ける。今度こそみんなにありのままの自分を受け入れてもらいたいから。
少し身勝手な考え方かもしれない。でも俺は、というよりも人という生き物はそのために生きているんじゃないかと思う。
誰かに頼まれても、例え頼られなくなっても、自分を曲げずに生きる。
そう決めたんだ。
どうしても、今後の流れを書くにあたって前半は短くならざるを得ませんでした。