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予選開幕

遅くなりました。本日もよろしくお願いします

 俺たちが会場である闘技場に入場してすぐに目に入ってきた光景はものすごい数の人々が闘技場に集結していた光景だ。確実に貴族だと分かる高価な服を着ている人もいれば、明らかに軍人なんであろう、貴族よりもある程度動きやすそうな礼服を着ている人々。


 そしてもっとすごいのが、


(あれってどう見たって他の貴族たちよりも服の質がいいよな? まさか……王族とか?)


 いやいや、ないだろうな〜。それ流石にね? 王族まで来てるとしたらどんだけ大規模な大会なんだよ。

 お国のお偉いさんは来るとは言ってたけど、それは普通貴族とか軍人幹部とか、官僚だと思うじゃん。

 そんなふうに思っていると、入場してきた俺たちが取り敢えずその辺に綺麗に整列したのを見た途端、さっき観察してた人物が立ち上がった。


 それからさらに学園長自らがその人の紹介をし始めた。


「生徒の皆よ! よく聞け! ここにおられるお方は、我ら水の王国の民を導いてくださる尊き王族のお一人であらせられる。御名前はアングラード公爵閣下だ! 現国王陛下の弟君であり、宰相の役職についておられる。つまり国政を陛下とご一緒に執り行われるお方だ。わざわざお時間を割いてご来場くださっている。くれぐれも不甲斐ない戦いはお見せしないようにな。それでは閣下からお言葉を少しばかり頂戴しよう。それではアングラード閣下、こちらを」

「うむ」


 公爵様は拡声器のようなものを学園長から受け取り、言葉を発し始めた。


「ええ、まずは簡単なご挨拶を。国立学園にはれて入学することができた第一学年のみんな、おめでとう。物凄く苛烈な受験競争だったであろうが、それを勝ち抜いた君たちとこの場で出会えて嬉しく思う。今日はその才能と努力溢れる力を存分に見せてほしい。私からは以上だよ」

「お言葉、ありがとうございます閣下」


 なんとも普通のことを仰っただけなのに、なぜか心が落ち着くような気分になった。

 おそらくあの人の声だ。物凄くイケヴォ(イケメンヴォイスの略)なんだ。凄く低いでもなく、かといってしっかりと声変わりは経てきたような、そんなちょうど耳にいいくらいの低さの声。

 そんな落ち着く声で応援してもらえて、気分が高まってきたところで早速始まりのようだ。


「では皆のもの! 健闘を祈っているぞ! それでは序列決定戦、始め!」


 ジャラーンとドラのような楽器が鳴らされた。


「早速始まったか……て、ん? え? いや、なんでみんな俺に突っ込んでくるのさ!?」


 開始直後に、周りにいた一年生たちがみんな俺に向かって突っ込んでくる。

 

「それは君が主席だからね。蹴落とせばかなり有利になるって思われてるんじゃない?」


 焦っていると、隣からアランの声がした。


「そうなのか? ところでお前は俺に向かってこないのかよ」

「あははは、それはあれさ。邪魔者をある程度駆除してからってやつさ。君とは落ち着いて決着をつけたい。なるべく邪魔されない場面でね? だからひとまず共闘といこうじゃないか」

「ふーん、そうかよ。まあ分かったよ。後でやろう」

「ああ」

「というわけで、あたしも混ざるわね」


 アランと話していると、アニエスまで参戦してきた。不満はないので頷くことで了承とする。


「じゃあ、お二人さん? ボコボコに蹴散らすとしますか!」

「そう来なくっちゃね!」

「あぁ、あたしあんまり戦闘は得意じゃないのにな〜」


 それぞれ3人で今の心情を語ったところでようやく他の一年生が俺たちに到達した。

 こちらにくる間にも熾烈な戦いを演じてきたんだろう。すでに脱落しているものや、肩で息をしている者もいる。


 この大会のルールはシンプルだ。まずは失神したり、戦闘不能になった場合、脱落。降参した場合も脱落。その際、降参した相手を無理に攻撃した者は厳罰処分とした上で脱落措置を取るものとする。

 まあ、当たり前のことばかりルールブックには書かれていた。そして驚いたのが、あまり遠慮して手加減する必要がないという部分。どういうことかというと、この闘技場のすぐ外に魔導具があり、それが生きていれば治療できるという優れものらしい。

 お国お抱えの魔道士たちが定期的に点検もしてくれているようで安心して戦えとのことである。

 なんとも強烈な大会だこと。と思ったものである。



 そうこうしているうちに、たくさんの生徒が魔法を放ったり、訓練用の剣で攻撃してきたりと忙しかったので、俺も魔法を撃ったり、剣を振るって攻撃を防いでいく。

 


「よし! お前を倒せば僕が一気に上位に駆け上がれる!」

「馬鹿野郎! そいつは俺の獲物だ!」


 なんかものすごく威勢のいいことを言っているが、こいつらちゃんとルールブック読んだのか?

 俺を倒したからって上に上がれるなんてそんなルールは一切ないんだが……まずここでやるべきことは、1200人いる学年の中で、50人の予選突破者の中に入ること。

 これができなきゃそもそも序列も何もない。ただ、即行でやられた雑魚認定を受けるだけだ。


 ちなみにその場の情景を逐次白黒で模写する魔導具が設置されていて、倒された順番や倒された生徒の顔は全て記録されている。

 なので嘘は通用しない。

 なんだかなあ〜と思いながらも、このおバカたちを相手する。


「取り敢えず、お前らは何か行動を起こす前に、規則やらなんやらをしっかりと確認する癖をつけないとな」

「はあ?」

「何を言って……」


 最後の1人が言葉を発する前に俺は腹を相手に向けた剣(峰打ちというやつだ)で粗暴な言葉遣いのやつ、おそらく平民なんだろう。そいつを吹っ飛ばす。

 また1人脱落者が増えたな。いくらみんな特訓してきたとは言え、切り掛かってきてる勢いに、カウンターを合わせるように峰打ちを鳩尾に叩き込まれれば、誰だって失神する。

 


 そんな俺の流れるような攻撃に流石に簡単に倒せないと悟ったのか、貴族っぽい奴は一旦勢いを緩める。

 そして手で何かのポーズを取りながら、仕切りに動いてこちらに狙いを定めさせないようにしていることから、なにをしようとしているのかすぐに分かった。

 だってアイツから急に魔力圧が吹き付けてきたんだからな。魔法を使う準備をしているのは一目瞭然だ。


 なので分かった時点でそれを阻止する。俺は一気に相手に近づいて、魔法使いが1番嫌いな接近戦の間合いに持ち込む。


「させるかよ!」


 俺は気合いと共に叫びながら相手に峰打ちを力いっぱい叩き込んだ。



 


 戦いが始まってまだ10分も経っていないと思う。だけど生徒の数は一分一秒ごとに減っていき、今となっては2、300人くらいしか残っていないと思う。

 相変わらず、アランとアニエスは俺の近くで戦っている。

 2人もものすごい勢いで相手を薙ぎ倒していっている。ほら見なよ、アニエスは別に弱くないんだよ。ちょっと特進の奴らが凄すぎるだけだって。

 実際教室の奴らは、まだまだたくさん残っている。制服でわかるっていうのはありがたい制度だ。



 俺もさっきから魔法を放ち、剣を振り、時には拳の突きや蹴りで相手を失神させと、忙しなく動きまくっている。

 爆炎魔法を地面に向けて放ち、その衝撃で数人を一気に吹っ飛ばしたり、熱風でまた複数人を吹き飛ばしたりと。


 そんな感じでずっと戦い続け、ついに残り100人ほどになった。ここからは完全に上位者同士の潰し合いとなる。


「やはり、セドリックの野郎は残りやがったか」

「ベルリオーズ騎士爵家の嫡男も生き残っているか。うん、流石だな」

「ほんとやになっちゃう。ここからは本物の化け物揃いってわけね」


 皆が口々にそんなことを言っている。そして、


「後50人ほど倒せば本戦出場か」


 アランがそう言うと、


「そうね、そうすればあたしたち3人も落ち着いて一対一で戦えるしね」


 アニエスが同意する。まあ確かに邪魔が入る予算よりも、本戦の方がいいわな。

 当たり前の話だけど。


「それじゃあ、ちゃっちゃと倒して本戦で会おうぜ?」

「そうだね、それがいい」

「りょうかーい」


 こうして俺たちはそれぞれが戦う相手を見つけ、本戦出場者に入るべく奮戦するのだった。



 そうして、約10分後。


「予選そこまで! その場に残っている生徒は全員足元に武器を置いて魔力を解除し、待機せよ!」


 学園長の静止の合図で試合終了となった。なんともまあ、張り合いがない試合だった。

 マジでいい勝負ができたのだって特進の奴らとだけだし。一級のクラスの生徒が何人か残ってたけど、全員大したことなかった。



 その後、本戦に出場した生徒は倒した生徒の数を教えられ、これ以降も頑張るようにとのお達しをいただいた。

 ちなみに俺が倒したのは82人だった。意外と少ないように思えるかもしれないけど、これは仕方がない。

 なんせ1200人が一気に戦うのだ。一人一人が大量の戦果を挙げている訳だから俺一人分の打倒人数が少なくなっても仕方がない。


 だが取り敢えず今俺が考えないといけないのは、この熾烈な戦場で生き残った残りの50名をしっかりと一人一人倒していく方法だ。

 余計なことを考えている暇はない。


 なんせ、アランもアニエスもなかったんだからな。気は一切抜けない。

 

 

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