表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/47

入学式とクラスでの顔合わせ

遅くなってしまいました。ごめんなさい

 試験が終わった翌日、俺たちは特進教室に集まっていた。


「今日が入学式かあ。楽しみだね」


 と、アランが言ってきた。うーん、そうかなあ? 昔から俺はそういう式典ごとはあんま好きじゃなかったな〜。校長の話が長いだけでつまらねえし、なんなら式典が長すぎて途中でトイレに行きたくなって、ギリギリまで我慢しすぎて漏らしそうになった。

 それが小学生までならまだ許されただろうが、これが中学2年生の時なんだから笑えない。

 中学生でみんなの前でお漏らしとか普通に精神的拷問だ。


 そんなわけでぶっちゃけ式典はどうでもいい。早く授業を受けたいくらいだ。

 魔法をもっと学びたい。


「そうか? 特になんもすることなくて、学園のお偉いさんが長々と話すだけなんじゃ?」

「何言ってんのさ! それはとても大事なことだよ! それに今日は僕らがこの学園に正式に入ったと認定されるめでたい日なんだよ?」


 うーん、なんか前世の知識がある俺とは少し感覚がズレてるな。それに多分、アランは最下級とはいえ貴族だし長い話を聞くのに慣れてるんだろうな。

 俺には無理。時間の無駄にしか思えない。

 時間はお金より大事なんだぞ! お金は稼げば支出しても戻ってくるけど、時間は使えば使うほど無くなっていってしまって、また厄介なことに取り戻すことができないってんだからどっちが貴重かは考えなくてもわかるしな。


「まあまあ、セド。おめでたい日っていうのには変わりはないんだから、そういう自分を祝う意味で参加するのもありなんじゃない?」

「まあ、確かにそうか。じゃあそうすることにするよ」


 俺がそう答えると、なぜかアランが不満そうに膨れていた。


「ふーん、なるほど君は幼馴染とはいえ、女の子の言うことなら素直に聞くんだね。僕は置いてけぼりかい? 悲しいよ」


 と、訳のわからないことを言っていた。冗談で言っている感じなので、取り敢えずお馬鹿は放置する。



 俺たちがやいやいと談笑していると、教授が1人入ってきた。おそらくこのクラスの担当なんだろう。

 ズカズカと勢いよく入ってきて、


「諸君! ようこそ我らが学園へ! 歓迎するぞ! そして入学者の中でも君たちは特に素晴らしい才能を発揮し、努力の成果を修め、我ら教員に実力を示してくれた! これからも大いに期待しているぞ! そして申し遅れたが、私がこの教室を担当するバスチアンだ! よろしくな」


 その後、いろいろと学園についての説明を受けた。まず初めに気になったのは1年生が受ける授業について。

 それから学園規則。そして何よりも気をひいたのが、"各国合同国際武芸披露大会"。

 これは年に一度の大行事だそうだ。この日だけは敵対している国もそう言うのは関係なく、一緒に参加するのだ。

 いろんな国が年毎に指定された国の闘技場に代表者を送り、そこで8カ国の頂点を決める武芸大会が開かれるのだ。

 雷の帝国、炎の王国、大地の皇国、氷の王国、風の連邦帝国、光の聖王国、闇の魔導王朝。そして最後に水の王国、これらの国が参加する。


 ちなみに風の国だけ少し風変わりな名前なのは、一般的な帝国とは少し異なるからだ。

 その特徴の一つとして、帝国なのでもちろん侵略して得た国がある。だがその国の上層部をそのまま領主に据え置くのだ。それなら普通に連邦国でいいじゃないかと思うかもしれないが、連邦国となる場合はあくまでも併合される前のその国のトップがそのまま国を治めるが、風の国は負けた相手の国の王族は女子供以外皆殺しだ。

 そしてその次世代の王族をその土地のトップに指名するか、はたまた元はその土地で大貴族だったものをトップに指名するか、と言った感じ。

 つまり完全にその国のトップがそのまま起用されるわけではないんだな。次代の王族が力不足と認定されれば貴族に落とされることもある。

 なのである意味、帝国がその土地の領主を任じているようなもの。

 普通の帝国なら侵略した土地はすぐに帝国側から貴族を派遣する。だけど風の国ではそうしない。

 なのであくまでも連邦なのだ。ある程度その元国の自由がある。


 そもそもの話、俺はこの8カ国以外にも国が存在していたことの方が驚きだ。

 世界史で勉強した内容によれば年月が経つごとに各国の独自の体制に不満や疑問を持ち、独立する者たちが現れたそうだ。それらが所謂、小国群である。

 そう言った国々があって、色々な政治理由で侵攻することもあるから、8カ国の中に帝国の類が存在するんだ。



 おっとっと、話が逸れたな。まあ、ようはその小国群は参加出来ないけど、8つの大国は今年の指定場所であるこの国、水の王国に集まる。そして武芸大会が開かれると言う話だ。

 そしてその後は学生たちに関しては国主導で特別プログラムのようなものが開催され、1週間ほど開催国で留学が行われるらしい。

 そのほかの者は元の国に帰っていく。そんな感じの大会だ……かなりの猛者たちが集まるだろうに、結構面白そうだと思ったのは内緒だ。



 そんなこんなで学園についての説明は終わり、早速入学式のための講堂に向かった。

 そこで開会の挨拶を学園長が行い、その後何名かの先生の説明事項が伝えられて閉会となり、それぞれのクラスは解散した。

 余談だが、やはりどこの世界のお偉いさんも話は長かったとだけ言っておく。

 1人で30分話してた……長えよ!


 そこからの流れとしてはまずクラスに戻り、自由時間という名の顔合わせだ。

 ここでクラスのみんなと仲良くなれということらしい。だが俺は元々コミュニケーションを積極的に取りたいタイプではなかったので、はっきり言って面倒だ。

 誰かから話しかけられれば普通に話すし、ちゃんと対応する。だけどわざわざ自分からごちゃごちゃ話しに行くのは好きじゃない。

 人混みが嫌いという話を前にアランたちとしたが、その延長かもしれないな。

 基本的に仲のいい人以外と関わるのが面倒臭いのだ。前世で家で1人でいる時間の方が圧倒的に長かったのも理由かもしれない。

 人から大切にされる喜びを最近知って少しずつ人と関わろうとし始めたとはいえ、まだこんな大人数といきなり仲良くなるなんていうのは正直気が重い。


 はぁ〜〜、でもやらないといけないよな。仕方ない。挨拶回り行くか。

 と思ったところで見覚えのある顔が3人ほどいるのに気づいた。あれは、確か俺らに絡んできた貴族嫡子たちだな。嘘だろ……あいつらと同じクラスとかなんの嫌がらせだよ……

 

 あいつらも俺の魔法属性のことを既に知ってるだろうからな。気にしなければいいのはもちろんの話だが、その心持ちになるにはもう少し時間がいる。

 それに相手は貴族だ。下手に相手すると権力行使に出てくるかもしれない。


 そんなことを考えているとあいつらが近づいてきた。


(いきなり会話したくない奴が来たよ……)


「これはこれは、昨日の平民殿じゃないか。この間は世話になったな」


 これは何も知らない者が字面だけ受け取ると上の身分の者が下の身分の者に対して、ある程度敬意を持った対応に見える。しかし実際はそうではないのは、俺たちにとっては考えるまでもない。


「どうも、セドリックです。まさか同じ教室になるとは。よろしくお願いしますね」

「アラン・ベルリオーズ、以後お見知り置きを」

「アニエスです。よろしくお願いします」


 俺たちが普通に挨拶したらかなりびっくりした反応を返された。また反抗的な態度をとるとか思われてたのかな?


「おっとすまない。あの時とは全く違う反応を返されたのでな、少し驚いたんだ。ようやく俺たちに敬意を払うように……」


 と、また寝ぼけたことを言い出しそうだったので、


「「「それは違う」」」


 思わず俺たちは3人同時に否定してしまった。


「なッ!? お、おい! お前たち! 俺がベアトリクス子爵家の嫡子だと知っての無礼なのか!?」


 と言われ、回答に困ってしまう。だって、


(いや、知るか。なんて言えないもんな……)


 そもそもだ。ここは権力乱用が禁止だ。既にこいつは学園規則を犯している。

 この高圧的態度も既にアウト案件なのだ。


「そう言われても、学園では権力は関係ないからな〜」


 俺がそう言うと、


「ふざけるなよ! いくらそうだとしてももう少し敬意というもんを……」


 ベアトリクス子爵家嫡男君がそこまで言ったところで、


「そもそも君のお家は子爵家。確かに財力もかなりあって発言力がかなりあるお家だけど、結局のところ中堅貴族。もちろん君のお父上方のお国への貢献などはすごいんだろうけど、他に伯爵家以上の貴族の嫡子の人とかもいるからあまりそういう態度を取らない方が身のためだよ?」


 アランが助け舟を出してくれた。そうだよこの学園にはこいつら以外にも貴族はいるし、なんならもっと位の高いお家もある。

 だから身の程を弁えないことばかりしていると、いつか必ず痛い目にあうからな。


 だけど、あんまりいじめすぎるのも良くない。こいつらと同レベルになってしまう。

 ここはさっさと場を収めよう。


「取り敢えず、学園ではそういうのは禁止なんだ。以後やめてくれよな。じゃあな」

「では失礼するよ」

「それじゃあ」


 俺たちはその場を去った。次はまともな人と会話できますように。

 そう願わずにはいられなかった……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ